預かりボランティアの活動規範
保護犬・保護猫の「預かりボランティア」をしてもらう人には、動物保護団体としての活動意義と役割をよく理解してもらうことが大切です。あらかじめ活動規範や規約を作っておくことで、団体とボランティアとの間のトラブルを回避することができます。
規約に入れておきたい基本項目(一例)は以下のようなものです。
- ◇保護犬・保護猫の所有権について
「預かりボランティア」のもとで生活している間も、保護動物の所有権はあくまで保護団体にあります。もし、一時預かりに際しての約束事が守られていない場合は、団体が「預かりボランティア」に対して返還請求ができることを明記しておく必要があります。
- ◇飼育環境について
預かる犬や猫の大きさ・種類・月齢に応じた飼育環境を用意すること、つねに飼育にふさわしい環境を保つ義務があることを明記しておきます。
- ◇食費・消耗品の費用負担について
団体が「預かりボランティア」に物資として提供するのか、「預かりボランティア」自身が用意するのかを事前に決めておく必要があります。
- ◇不妊・去勢手術について
不妊・去勢手術を受けていない保護犬・保護猫の場合は、健康チェックにおいて手術に不都合な疾患がなければ、不妊・去勢手術を実施します。その際の指定病院の有無、費用負担についても条件を明記しておきます。
子犬・子猫の場合は、手術の適齢期になったら行うことも含め、「預かりボランティア」には不妊・去勢手術に賛同してもらいます。
- ◇医療費について
預かり中にかかった医療費について、「預かりボランティア」の負担になるケースと、団体が負担するケースを決めておく必要があります。
- ◇ワクチン接種について
混合ワクチンの接種が必要な時期になったら、必ず接種してもらいます。その際、団体が費用を負担するのか、「預かりボランティア」が負担するのかに加え、接種を受ける指定病院の有無も明記しておきます。
- ◇予防薬について
フィラリアの予防薬(犬の場合)、ノミやマダニの予防薬の投与をしてもらいます。いずれも予防薬の費用を団体が負担するのか、「預かりボランティア」が負担するのかに加え、薬をもらう指定病院の有無も明記しておきます。
- ◇安全管理について
脱走や怪我を防止するために、名札の装着、室内飼育を徹底してもらいます。犬の場合、必要に応じて首輪とハーネスなどの二重リードで散歩してもらいます。
預かりボランティアの募集方法
団体のホームページやSNSでの募集が一般的になっています。希望者には必要事項を記入してもらい、その内容を検討したうえで、「預かりボランティア」をお願いするかどうか判断します。
申し込みにあたり記入してもらいたい主な項目(一例)は以下のようなものです。
- ◇申込者のプロフィール(名前、住所、年齢、家族構成)
- ◇ペット飼育可の住居かどうか(集合住宅の場合、規約でペット飼育可を確認)
- ◇室内飼育ができるか
- ◇自宅環境の事前確認(戸建てか集合住宅か、部屋の間取り、広さ、周辺の環境など)
- ◇家族全員が保護犬・保護猫の預かりに理解があるか
- ◇留守番時間の有無
- ◇犬・猫の飼育経験の有無
- ◇飼育中のペットの有無
- ◇新しい家族が見つかるまでお世話ができるか
- ◇預かった犬・猫の食費、消耗品費などを負担できるか
※生活に必要な物を現物支給するのか、預かりボランティア負担するのか事前に決めておく必要があります。
- ◇預かり犬・猫の日々の様子を、写真や動画とともに定期的に団体へ報告してもらえるか
- ◇団体の要請に従って、譲渡会などのイベントに預かった犬・猫を連れて来られるか
ボランティアの誓約書
記入内容に問題がなければ、誓約書を交わし(できれば対面にて)、ボランティア活動をスタートしてもらいます。
ボランティアであっても誓約書を交わしておくのは、のちのち団体との間にトラブルが起きないようにするためです。預かりが長期間にわたるケースもあり、犬や猫の所有権や育成にかかる費用について、トラブルが生じる可能性も考えられるからです。そうしたトラブルを未然に防ぐためにも、預かりボランティアと誓約書を交わしておくことが大切です。
※弁護士監修の「預かりボランティア誓約書」を以下よりダウンロードすることができます。
ボランティア保険
ボランティア保険とは、ボランティア活動中に起こった事故やアクシデントを補償する保険です。
「預かり犬を散歩させているときに、引っ張られて怪我をした」「預かり猫に引っ掻かれて傷を負った」「預かり犬を散歩中に、人の家の植木鉢を破損した」など、ボランティア活動中に起こったことが補償の対象になります。特に「預かりボランティア」を行う人には、ボランティア保険への加入を行ってもらった方が安心です。
「ボランティア保険」の一例
有限会社 東京福祉企画
預かりボランティアの勉強会
保護犬・保護猫はそれまで育ってきた環境も保護された状況も、月齢も大きさも病気の有無も、それぞれ全く異なります。預かりボランティアを経験したことのある人や、犬や猫を飼育した経験がある人でも、預かった犬や猫によっては、なかなかうまくいかないこと、大変なことも。預かりボランティアでSNSのグループを作って悩み相談をしたり、勉強会を実施して個々の経験やケーススタディを共有すれば、「預かりボランティア」としての知見が深まります。また、経験豊富な先輩ボランティアが預かりを始めたばかりのボランティアの相談役として、チーム体制で動くという手段も有効です。
数名などの少人数で保護活動をしている場合は、外部の勉強会に参加する方法もあります。
「勉強会」の一例
・子猫ミルクボランティア講習会
・犬のOKサイン、見えていますか?
・おやつを使ったコミュニケーション
(ペットのおうち)
※弁護士監修の「預かりボランティア誓約書」は、保護団体および保護活動をされている方の判断と責任において、ダウンロードし利用できます。なお、公益社団法人アニマル・ドネーションは利用について責任を負いません。