保護活動マニュアル

STEP3| 保護した犬の飼育方法について

保護した犬の飼育の仕方(個人宅預かり)

この記事は 犬 に当てはまる内容です

保護された犬たちを自宅で預かるボランティアさんのことを、預かりボランティアと呼びます。預かりボランティアを行う際は、「5つの自由」を理解し、遵守することが求められます。シェルターではなく個人宅で預かって飼育をするメリットは、一般的な家庭犬としての暮らしを経験できることです。保護犬が新しい家族とスムーズに暮らせるため重要な役割になります。

<基礎知識>国際的な動物福祉の基本「5つの自由」

預かりボランテイアの条件

新しい家族が見つかるまでの一時的な飼育であるとはいえ、預かっている期間はボランティアさんの家が犬の住処になるので、新しい家族に求めることとほぼ同様の条件となります。犬の飼育経験者は預かり時に実体験を活かせることがありますが、先住犬がいる場合はどんな保護犬なら一緒に暮らせるかを見極める必要があります。条件の基本項目(一例)は以下のようなものです。

  • ◇ペット飼育可能な住居に住んでいる

預かりボランティアをする人の自宅環境の確認は必ず行いましょう。集合住宅の場合は、ペット飼育が可能な住宅であることが必須条件です。

  • ◇室内飼育ができる、散歩ができる

新しい家族の家で暮らすときとできるだけ近い環境で飼育することが大切です。そのため飼育は室内で行い、散歩に連れて行かれることも条件になります。

  • ◇同居する家族全員が保護犬の預かりに賛成している

お世話する人だけでなく、同居している家族全員が保護犬を預かることに同意する必要があります。乳幼児や要介護者がいる家庭は、犬の世話に十分な時間が避けられないことが想定されるため、家族構成やサポート体制の確認をしたうえで、預かりを依頼するかどうかを決定します。

なお、預かりボランティアは単身世帯でもOKとしている団体が多いようですが、団体によって方針が異なるので事前に決めておきましょう。どちらにしても仕事で早朝から深夜まで長時間不在にし、犬だけで過ごす時間が長い場合は、預かり環境としては好ましくありません(一般的なお留守番時間であれば問題ないでしょう)。

  • ◇新しい家族が見つかるまで飼育できる

預かりボランティアの期間は、短期もあれば長期もあります。基本的には、新しい家族が見つかるまで飼育できることが条件となります。

  • ◇預かり犬の食費、消耗品の費用負担

一時預かりの期間中にかかる犬の食費やトイレシートなどの消耗品を、預かりボランティアさんが負担する場合は、トラブルにならないためにも「預かりボランティアの条件」などに記載しておきましょう。預かり期間に生じる医療費については、基本的に保護団体が負担するケースが多いですが、「事前相談が必要」「提携病院のみ負担」などの条件がある場合はきちんと明記しておく必要があります。

  • ◇預かり犬の様子を定期的に報告できる

預かる期間の長さにかかわらず、定期的に預かった犬の様子を写真や動画で報告してもらいます。電話やメールなどで連絡を行えることが条件になります。

  • ◇譲渡会などのイベントに預かり犬を連れて来られる

預かり犬に譲受希望者(家族として迎えたいという希望者)が見つかった場合、団体が主催または参加する譲渡会などのイベントに預かり犬を連れて来てもらいます。

 

犬を預かるために準備してもらうもの

預かりボランティアさんには、飼育するうえで必要になるものを用意してもらいます。保護団体が何を用意して、ボランティアさんが何を用意するのかを事前に決めておきましょう。

準備物(一例)

  • ◇ケージまたはサークル(預かり犬の大きさに合うもの)
  • ◇トイレまたはトイレシート
  • ◇餌入れ、水入れ
  • ◇ドッグフード

※獣医師の判断により療法食が必要な場合、預かりが負担するのか、団体が負担するのかは事前に決めておきましょう

  • ◇首輪(またはハーネス)、リード
  • ◇犬用のシャンプー

犬の預かり飼育で注意すること

保護犬が預かりボランティアさんの家で暮らす時間は、トレーニング期間でもあります。以下のようなことに気をつけて飼育を行いましょう。

先住犬がいる場合は、お互いに慣れるための時間を

預かり宅に先住犬がいる場合は、預かり犬が不安や警戒心から攻撃的になってしまったり、ストレスから体調を崩してしまったりすることがあります。一方、先住犬のほうが同様な変化を見せることも。双方の様子を見ながら、少しずつ一緒にいる時間を増やし、慎重に見守ることが大切です。

※両者がワクチン接種済みであることが必須条件。皮膚の痒みや下痢など、感染症の疑いがある場合は、診断結果が分かるまで隔離状態にしておくのがベターです。

散歩が苦手な犬も。徐々に散歩ができるように練習を

保護犬のなかには、これまで散歩をした経験がない犬や、外に出るのを怖がる犬もいます。また、人と一緒に歩くことを知らない犬もいます。そうした犬の場合は、散歩練習も預かりボランティアさんに期待される事柄です。

家の外が怖くて歩けない場合は、最初から散歩を無理強いせず、まずは外に慣れることから始めるとよいでしょう。

犬の状況を見ながらトイレトレーニングを

飼い主が飼育放棄した保護犬のなかには、トイレがきちんとできる犬もいれば、環境が変わったためにできなくなってしまう犬もいます。また、中型犬や大型犬のなかには、外でしか排泄しない犬も。それまでに暮らしていた環境や習慣によって、トイレの習慣はさまざまです。保護犬を預かる際には、それぞれの犬の特徴を確認し、必要であれば新しい家族とスムーズに暮らせるよう、トイレトレーニングを行います。

吠える犬は、その原因を見つけて対処を

預かった犬がずっと吠えていると、近隣の迷惑になり預かりボランティアを続けるのが困難になります。吠えるのをやめさせたいからといって、マズルや首を掴んだり、怒鳴ったり、叩いたりなどはやってはいけません。方法を間違えると犬との信頼関係が悪化してしまうこともあります。そもそも犬が吠えるのには何か理由があるはずなので、早急に吠えの原因を見つけ、それが解消されるように対処することが大切です。犬のトレーニング方法については、団体内で事前に方針を決めておくとトラブルを避けられるでしょう。

なお高齢犬に見られる認知障害による夜鳴きは、トレーニングでは改善が難しいため獣医師に相談する必要があります。

脱走にはくれぐれも要注意。必ず迷子札の着用を

犬は、雷の音や花火の音、救急車やパトカーのサイレンなど大きな音に驚いて、パニックを起こし、ドアや窓から脱走してしまうことがあります。また、来訪者があって玄関の扉を開けた瞬間に、犬が外に飛び出して行くケースも。道路に飛び出せば、交通事故に遭う危険もあります。そのため、犬を預かったらまず脱走できる経路を柵などで塞ぎ、戸締りをしっかり行う工夫が必要です。

特に元野犬の保護犬の場合は、厳重な注意が必要です。野山で暮らしていたため、外への執着も強く、ちょっとした隙間から脱走することがあります。人にも慣れていないため、逃げた場合には簡単に捕獲できません。そのため、散歩などで家の外に出るときは、首輪とハーネスなどの二重リードで対応する必要があります。

さらに、短期間の預かりであったとしても首輪に迷子札をつけておくと安心です。迷子札には、犬の名前、預かりの名前と連絡先を明記。そして万が一脱走してしまったら、すぐに所属団体、保健所、自治体などに連絡することも忘れずに。

 

保護した犬の飼育についてのアドバイス

預かりボランティアさんは、保護犬と良い関係性を築くことがもっとも重要です。保護犬は全て同じではなく犬それぞれに個性やトラウマがあるので、その犬にあった信頼関係を築き上げることが新しい家族の元へ行っても活かされます。

「可哀想だから救いたい」という気持ちだけでは結局負担でしかなくなったり、保護犬に良い環境を与えてあげたりすることができません。出来る範囲を決めてそれを守る事も、保護犬への幸せに繋がるかと思います。
(特定非営利活動法人 ファミーユ)

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保護犬の預かり飼育時に多いトラブルは「逸走」です。 散歩時には首輪とハーネスのダブルリード、住居には玄関ゲートの設置等をしていただいています。 それでも逸走は起きてしまうこともあるので、その際には迷子捜索の経験者がフォローにつき対応しています。

また譲渡報告や連絡に使っているグループメールを使って、預かりボランティアさんが相談や質問することで、経験があるボランティアさんからアドバイスをもらえるようにしています。
(ちばわん)

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