保護活動マニュアル

STEP3| 保護した猫の飼育方法について

保護した乳飲み子猫の飼育の仕方(個人宅預かり)

この記事は 猫 に当てはまる内容です

保護猫の中でも乳飲み子猫を預かって飼育する場合には、授乳期にミルクを与えたり、排泄を補助したり、離乳期にふやかしたフードを与えたりといった、成猫とは違うケアが必要になります。そのため乳飲み子猫を預かるボランティアさんは通称「ミルクボランティア」と呼ばれています。

乳飲み子猫の預かりボランティアの条件

生後2〜3週間を授乳期、その後の8週齢までが離乳期と呼ばれます。この期間の間に、自分でドライフードが食べられるようになるまで育てていきます。そのため、ミルクボランティアには成猫を預かる場合とは異なる条件が求められます。条件の基本項目(一例)は以下のようなものです。

  • ◇基本的に毎日家にいて、お世話ができる

乳飲み子猫にミルクを与える回数は、生後10日後くらいまでは1日に8〜12回、それ以降の離乳までは1日4〜8回が目安。人間が乳児に与えるように、哺乳瓶で飲ませてあげなければなりません。

そのため、基本的には毎日家にいて、きめ細かくケアができること。乳飲み子猫は体調を崩すと命を落とすまでの時間が短いため、体調に変化が見られたらすぐに動物病院に連れて行けることが絶対条件といえます。

  • 同居する家族全員が保護猫の預かりに賛成している

お世話する人だけでなく、同居している家族全員が保護猫を預かることに同意する必要があります。とくに乳飲み子猫の世話は人間の乳幼児と同じように手がかかります。家に乳幼児や要介護者がいる家庭では、乳飲み子猫の世話に十分な時間が避けられないことが想定されますので、預かり環境としては好ましくありません。

  • 月齢2ヵ月までの世話ができる

乳飲み子猫が授乳期、離乳期を経て固形フードを自分で食べられるようになるのは、生後2ヵ月目くらいです。そのため、それまでお世話ができることが条件になります。

  • 乳飲み子猫のミルク代、消耗品の費用負担

乳飲み子猫にかかる子猫専用ミルク、哺乳瓶などは保護団体が貸し出すケースが多いですが、トラブルにならないためにも「預かりボランティアの条件」などに具体的な支給アイテムを記載しておきましょう。預かり期間に生じる医療費については、基本的に保護団体が負担するケースが多いですが、「提携病院のみ負担」などの条件がある場合はきちんと明記しておく必要があります。

  • 乳飲み子猫の様子を定期的に報告できる

とくに乳飲み子猫の場合は容体が急変することも多いため、預かった乳飲み子猫の様子を頻繁に報告する必要があります。そのため電話やメールなどで連絡を行えることが条件になります。

 

乳飲み子猫の預かりのために準備してもらうもの

条件をクリアしたボランティアさんには、飼育するうえで必要になるものを用意してもらいます。保護団体が何を用意して、ボランティアさんが何を用意するのかを事前に決めておきましょう。

準備物(一例)

  • ◇子猫専用ミルク
  • ◇哺乳瓶
  • ◇計量スプーン
  • ◇ベッド(四方に壁があるケース)※素材がプラスチックだと消毒もしやすく◎
  • ◇毛布やバスタオル
  • ◇湯たんぽ
  • ◇温度計
  • ◇計量器(デジタルスケール)
  • ◇離乳食後のキャットフード

 

乳飲み子猫の預かり飼育で注意すること

​​保護された乳飲み子猫の場合、「飼う」というより「管理する」という視点で世話を行う必要があります。母猫からの母体免疫が機能せず体が弱かったり、栄養状態が良くなかったりすることも多いため、体調不良の早期発見・治療・対処が重要となります。

【温度】低体温にならないよう温度管理を

低体温は乳飲み子猫が命を落とす原因になるので、電気アンカや湯たんぽを使って、保温器内の温度を25〜28度にキープします。その際、注意しなければならないのが低温やけどです。ふわふわの毛布を敷くなどして、アンカや湯たんぽに子猫の肌が直接触れないように気をつけます。

乳飲み子猫が自分で心地よい場所を選べるよう、温かい部分と涼しい部分の両方を作っておいてください。

【授乳】ミルクは人肌に温めて。摂取量の記録を忘れずに

離乳前の乳飲み子猫には、2〜3時間おきに、哺乳瓶でミルクを与えます。ミルクは人肌に温め、乳飲み子猫のお腹を下に向けた形で授乳を。もし、時間になってもよく寝ているようなら、無理に起こさないほうがよいかもしれません。目を覚ましたのを見計らって与えればOKです。

大切なのは、飲んだミルクの量をデジタルスケールで測って記録しておくこと。飲んだと思っていても、意外と飲めてないことがあるので、その後の健康管理のために飲んだ量は正確に記録しておきます。

【排泄補助】肛門まわりのケアも必要

乳飲み子猫の場合は、排泄の補助をする必要があります。おしっこやうんちが出たら、乾いたティッシュで拭いてあげますが、強くこすると皮膚炎になるので、優しくトントン叩くように。生後1週間くらいの場合は、ティッシュより柔らかなコットンのほうが安心です。

さらに、排便後に肛門の周りを拭いたあと、無添加のワセリンやオリーブオイルを塗ってあげると、炎症を防ぐのに役立つようです。

【下痢、嘔吐】軽く考えずに動物病院へ

抵抗力が弱い乳飲み子猫は、下痢や嘔吐を起こすと、あっという間に低血糖や脱水状態になり、ぐったりと動かなくなってしまいます。乳飲み子猫の下痢、嘔吐は命取りになる場合があるので、「もう少し様子を見てから」と考えず、すぐに動物病院に行きましょう。

【体重測定】毎食前&後に測って成長を確認

授乳の前後、離乳食の前後に体重を測り、順調に体重が増えているかどうかをチェック。なかなか体重が増えない、または急に体重が減ったなどの場合は、ミルクを飲んだ量や離乳食を食べた量の記録を持って、所属団体に相談のうえ獣医師の診察を受けましょう。

【先住猫がいる場合】先住猫とは離して飼育を

授乳期、離乳期の子猫は抵抗力が弱いため、ほかの猫とは部屋を分けるなど隔離して飼育します。また、先住猫にとって保護猫の存在がストレスの対象になる可能性があります。急に攻撃的になったり体調を崩したりすることも考えられるので、お互いの健康を保つためにも隔離飼育が望ましいでしょう。

【感染症対策】親が野良猫の場合は、とくに病気に注意

元野良猫から生まれた猫は、保護された時点で何らかの病気を持っていることが多いと考えられます。どんなウイルスのキャリアかわからない時点では、ほかの猫に感染させないような予防が大事です。とくに保護から2週間は先住猫とは隔離して飼育します。

保護された乳飲み子猫の場合、「昨日まで元気だったのに、今日になったらミルクを飲まなくなった」という体調の急変も少なからず起こります。そんな時、保護団体の他のメンバーと報告・連絡・相談がスムーズにできることが重要になります。また保護団体側も、体力的に負荷がかかるミルクボランティアさんを精神面でサポートするためのチーム体制作りも必要になります。

 

保護した乳飲み子猫の飼育についてのアドバイス

猫を人工哺乳で育てることは、簡単なことではありません。赤ちゃん猫は下痢をしやすく、風邪やその他の感染症などにかかってしまうことも多いものです。ただミルクをあげるだけでなく、体重がちゃんと増えているかなど健康管理にも細心の注意を払う必要があります。昨日まで健康だった赤ちゃん猫が突然、重篤な状態になる場合も。「どんなに手を尽くしても」助からない命もありますので、その辺の覚悟をもってお世話をしてください。

もし、体調が急変した場合は速やかに管理団体へ連絡して判断を仰ぐ必要があります。小さな赤ちゃん猫が立派に成長する過程は、普段の生活ではなかなか目にすることができないので、お世話する人間側も睡眠不足などで体調を崩さず、ぜひ楽しんでボランティアに参加してください。
(特定非営利活動法人 猫と人を繋ぐツキネコ北海道)
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ミルクボランティアは精神的にも肉体的にも負担がかかります。そのため1回お預けした子猫たちが2ヵ月過ぎて育ったからといって、すぐに次の猫を預けるのではなく、少なくとも2週間(できれば1ヵ月くらい)は、心身ともにゆっくりお休みしてもらうようにしています。

また、感謝の気持ちはどんなに伝えても伝えすぎ、ということはありません。こまめに子猫たちの様子をうかがい、感謝の言葉を伝えると、ミルクボランティアの方々と信頼関係が築けると思います。
(認定特定非営利活動法人もりねこ)

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