日本と大きく異なるスイス動物事情。犬との豊かな日常<海外情報レポート・スイス編③>
アニドネ代表 西平衣里がレポートしている スイスの動物福祉事情。
最後となる3回目は、現地の方が愛犬とどのような日常を過ごしているか、をレポートします。自然や動物をとても大切にしている国、スイス。ほんの「小さな」ところに「大きな」違いがありました。(2019年8月取材)
動物への心理的なアプローチを大切に!スイスの動物保護施設の現状とは<海外情報レポート・スイス編①>
子供に動物の大切さを伝える保護施設の工夫<海外情報レポート・スイス編②>
愛犬たち 早朝のカフェにもホテルにも
私が行ったのは、スイスのイタリア寄りの街、ルガーノです。ルガーノ湖という美しい湖畔にある小さな街は、おとぎ話に舞い込んだかのごとく美しい街でした。時差のため、朝早く街を散歩したのですが、カフェ文化のあるヨーロッパらしく早朝からカフェでモーニングを食べる家族が多くいます。その家族と共にカフェでのひとときを楽しむ愛犬たちがいました。
抱っこされることもなく「ここがボクの定番だよ」とばかりに、椅子のうしろやテーブルの下にゆったりと構える犬たち。飼い主がオーダーでいなくなっても慌てるわけでもなく、どこか堂々としている風貌。周りの人々も犬が常にいるのが当たり前だからか、特にかまう風でもなく。
泊まったホテルにも素敵な紳士と犬が入ってきました。ロビーを闊歩するジャックラッセル。「ワタシもホテルゲストよ♪」とばかりにかわいいお尻を振って歩いていました。ちなみに以前スイス在住の方にアニドネは取材をさせていただいたことがあります。
そのときにスイスは『ペット可ホテル』というカテゴリーはなく、四つ星や五つ星のホテルでもいくらかのプラス料金を支払えば犬連れで宿泊ができるそうです(*アニドネの海外情報レポート:スイス社会犬との付き合い方)。
なぜ白鳥に餌をあげてはいけないのか
湖畔の街なので、湖と共に人々も生きています。湖には美しい水鳥たちがいました。優雅に泳ぐ白鳥たち。公園だったので、多くの若者や子供たちもいましたが、誰一人白鳥に餌をあげている人がいません。日本だったら、一袋100円、とかで茶色い袋などに入った餌が売っているのに、と思っていたら素敵な看板を発見しました。
要約すると以下のようなことが書いてあります。「白鳥は水生の草を食べる動物であり人間の食べるパンを与えると腸に支障をきたし身体によくない。彼らは野生動物であり、自分自身で食べるものは見つけられる」
ここまでちゃんと説明されたら、カバンにはいっていたクッキーやパンなどをあげる気持ちは失せ、餌をあげたがる子供にもしっかりと説明できますよね。日本では公園などに「エサやり禁止!」と手書きの看板などがありますが、このようなアプローチのほうが理解度はずいぶんと高いと感じました。
そして、湖の水が驚くほど透明感があり美しいことにとても驚きました。現地在住の方に聞くと、木材を使った浄化システムだそうで、まさにスイスらしいやり方で感心しました。こんなふうに税金が使われるなら納得感が高いと感じますよね。
こんなところにも!?「ウンチポスト」
動物アンテナを立ててなかったら、私も気づかなかったかもしれません。街にあるこれらのものたち。今回、観光地のみでなく現地の方の居住エリアにも伺ったのですが、素敵な建物が並ぶ街中にもよく見かけた「ウンチポスト」。場所によってデザインはいろいろとあるようで同じものは二つと見ませんでした。こちらは犬税で賄われているようです。そして、袋を見るとウンチが燃やされエネルギーになるとのこと。なんとエコなシステム。
今回、私が滞在した場所では、おしっこのマーキングのあとは少し見ましたが(日本よりは少ないと感じました)放置ウンチは見なかった気がします。現地の方に聞くと、放置ウンチはたまにありますけどね、と苦笑いはされてました。
そして税を使っての行政の取り組みでさすがだな、と思ったのが、ごみ回収車と公園剪定隊。動物に優しいということは、動物が暮らす自然に優しくして動物が暮らす環境を守らねばならない、ということだと思います。野鳥がちゃんと暮らせるよう湖を美しく保ったり、公園の木や草花を美しく保ち街をきれいにする。そしてそれに従事する方が誇りや自信をもって働ける、というのが素敵だなと思いました。
家族の一員から社会の一員になっている犬たち
私が取材した動物保護施設の方の言葉で一番印象的だったのが「スイスは動物のメンタルを一番に考える」というフレーズ。サイコロジカルに動物に接するために人間側が動物をちゃんと理解せねばならない、と強くおっしゃっていました。まさにその考えが、一般の方にも街にも反映されている国でした。
なんといっても、集団で生きる動物(鳥や馬、ウサギなど)は2頭以上で飼育せねばならないという優しさの塊のような法律のある国です。動物のキモチを考えて人間側が配慮するのが、当たり前になっていると感じました。
大げさでなく、本当にいたるところに犬がいました。公共の交通機関(電車やバス、飛行機)にも犬がいます。ちょうどバカンスの時期、ミラノのマルペンサ空港のバカンス前の華やぐ雰囲気の中、犬がうれしそうに歩いていました。公園だって、犬が入ってはいけない芝生はないですし、湖で飼主と一緒に楽しそうに泳いでいました。
私が見聞きしたのはスイスのほんの一部です。もちろんスイスでも、バカンス前に捨て犬が増えるそうだし、隣国から売買目的で入ってくる犬猫など、問題もあると保護施設の方は言っていました。
しかし、私が肌で感じた犬との日常は、日本(私は東京なのでなおさらかもしれませんが)より、豊かな時間が流れていると感じました。世界は広し、いろいろな国がどう動物に接しているかを感じると日本のヒントになると思います。
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アニドネ代表 西平衣里が3部構成でお届けしたスイス事情。よければ①②もお読みいただけると嬉しく思います。
動物への心理的なアプローチを大切に!スイスの動物保護施設の現状とは<海外情報レポート・スイス編①>
子供に動物の大切さを伝える保護施設の工夫<海外情報レポート・スイス編②>
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