海外情報レポート

動物への心理的なアプローチを大切に!スイスの動物保護施設の現状とは

 

スイスといえば、豊かな自然に囲まれ動物福祉が進んでいる国であるイメージがあります。

今回、アニマル・ドネーション代表の西平衣里がスイスの南側、ティチーノ州にある動物保護施設の現地視察を行いました。
65年の歴史ある保護活動ではどのように活動をしているのか、動物に対してどう接しているのか、日本と何が違うのか、を探るため訪問しました。

抱いていたイメージよりもはるかに自然と動物に優しい国であることを知り得る取材となりました。(2019年8月取材)

Profile

 Besomi Emanuele


🐾経歴🐾
スイスのティチーノ州にある動物保護施設 『Sociera Protezione Animali Bellinzona 』President

1954年創立、2019年に65周年を迎えた施設、通称SPABの代表を務める。

Emanuele氏のお父様が作られた施設を継いで運営。

生まれたときからこの施設と生きてきた方で取材当時45歳。

3代目候補の息子さんと共に取材に応じる。

 

温かみのある施設は元軍事施設

スイスの南側 ルガーノ湖を挟みスイスとイタリアの国境近くにあるSociera Protezione Animali Bellinzona (通称 SPAB)は、街の中心から車で30分程度。豊かな緑に囲まれた施設はティチーノ州内に5カ所ある保護施設の中では一番大きな施設だそうです。

急な訪問にもかかわらず、代表を始めスタッフの方々がとても丁寧に対応くださいました。

あまり日本では知られていない、リアルなスイスの動物保護事情をレポートします。

 

ー施設の概要を教えてください。

「今年で創立65周年になる民間の動物保護施設です。もともとはこの場所は軍事施設で、動物用に改築し運営しています。組織として取り組んでいる業務は、保護された動物の管理、動物に対しての敬意推進、保護施設にいる動物の新たな環境探し、傷ついた動物の救急応対、施設訪問者の応対およびガイドを行っています。年間1000件の動物に関する問題に対処しています」

 

ー施設の運営はどのようにしていますか?

「代表である私も別の仕事を持っており、約30人の運営スタッフも別に仕事を持つボランティアです。ルーティンを組んで動物の保護や飼育、レスキュー活動に携わっています。施設自体の運営費は年間500万円を必要とし、それは寄付で成り立っています。私たちには1万人以上のサポートメンバーがいます。

例えば、施設を改築する際には大きな資金が必要です。1999年に動物たちのために暖房施設を導入した際には1億円以上の寄付を提供してくださったひとりの女性がいました。
日々の運営において、たくさんのボランティアさんに手伝ってもらっています。例えば、毎日犬1頭につき2時間以上行っているお散歩はボランティアさんが活躍してくれています。40年以上も野鳥の専門ボランティアをしてくれている男性もいるんですよ」

 

山に囲まれた場所に施設はありました。スタッフたちは赤い制服で誇らしげに働いていました
犬が暮らしてる場所。1頭あたりのスペースは日本国内で見たシェルターとは比較にならないくらい広いと感じました
バカンスシーズンのためか、飼い主から預かっている犬たちも多くいました。とても衛生的でした
この素敵な公園のような場所は実はお墓です。三角の造作物の中に亡くなった動物たちの名前が刻まれています。宗教色は出さないようニュートラルなデザイン。一般の飼い主さんらもいつでも訪問できるそうです

野生動物から飼育ペットまで幅広くレスキュー

ー日本の保護活動では犬や猫の保護がメインですが、どんな動物を保護しているのでしょうか?

「馬や山羊、牛などの人間に近い動物から野生動物、そして犬猫などです。野鳥の保護に関してはスイスの州の中で唯一保護が許されている施設となります。

私たちは牧場や農家で傷ついた牛や馬、鶏なども保護します。動物園からの保護もあります。野生動物は保護したあとは野生に戻します。もちろん犬や猫も保護しますよ。猫はこの場所から少し離れた別施設で、予防注射や避妊注射の後入ることのできるネコパークがあります。それは、スイスの中では、私たちのみが所有しています。本日ここにいる犬24頭のうち18頭は飼い主から、バカンスシーズンのみの一時預かりです。6頭が飼い主を募集中です」

 

ー保護する際はどういった理由があるのですか?

「牧場から保護する動物は何かしらの理由で怪我をしていたり治らない病気の場合です。その場合はこの施設において命が終わるまでお世話をします。ペットにおいては、すべての飼い主が優良な方々ではありません。犬や猫にとって良い飼い方をしない人からは保護します。ドラッグ中毒や病気の方で、健康的に飼育できないのであれば保護し、そして次の飼い主を探しますがそれはそんなに苦労はしません。健康であれば100%次の飼い主は見つかります。中には犬猫自体がひどい病気であったり、強制の困難な攻撃性があったらやむなく殺処分することもあります」

 

前の飼い主さんがあまりよくない飼育状態だったため、警察に連絡が入り、SPABが保護した犬たち
このハスキーは、狭い場所で飼育されてるところを近所の方の連絡から保護した犬。飼い主を募集中
人が飼育してしまった子ギツネ。可愛らしく人間に近づいて目を見てきます。しかし、将来的には野生に戻すので、あまり良いことではない、とおっしゃってました
牧場から保護した牛。そしてアルパカは、動物園から保護した、とのことで終生この施設で過ごすようです

 

「動物のメンタルに配慮する国である」の言葉に自信

逆にエマニュエルさんから日本の現状に関して質問をもらいました。殺処分は未だあること、動物福祉に関する認知が低いこと、などを正直に伝えると、さすがスイスだと思えるお話をしてくださいました。

 

ー動物に対して、人間はどう向き合っているのですか?

「スイスでは、動物のメンタルを何より重視します。動物の身体の安全や健康だけを配慮するのではなく、サイコロジカル(心理的)なアプローチをなにより大事にしています。本来集団で生きる動物であれば、その環境を整える。暑さ寒さをどう感じるのか動物の気持ちになって考える。高いところが苦手な動物であれば飼育環境に配慮し整える。スイスは世界一自然と動物に優しい国だと言えるでしょう。それは法律にも反映されています」

 

 

右のローラ(7歳)は目を悪くして保護されました。スイスでは集団で生きる動物は1頭で飼育してはいけない法律があるため、すぐに左のルフス(10歳)と共に暮らすことになりました
鳥の保護も多数。巣から落ちた野鳥をケアし自然に返すそうです
国と国が隣接するヨーロッパならではの悩み。外国からきた3匹の犬はスイスにはないウィルスを持っていて100日の隔離が必要

 

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今回の取材を終え、感じたことを素直に書くと、

スイスの中でも小さなティチーノ州。人口は38万人(ちなみに東京は1380万人)、スイスの中で唯一アルプス以南に位置する温暖で小さな州です。SPABの施設自体は元々軍事施設ですので動物のために作られたわけではありません。かつ古い建物ですから、色々と工夫をしながら使っている印象です。むしろ日本の動物愛護センターの方が立派だと思いました。

 

しかしながら、動物福祉、という点では日本では考えもおよばない配慮を感じました。その動物が本来の性質でストレスなく暮らせるようにしています。例えば、うさぎたち。もともと土を掘る性質があります。だから自由に土を掘って楽しんでいました。集団生活をする動物は1頭飼育をしてはいけない、という法律があることも驚きでした。2017年までは犬を飼育する際に4時間の理論、4時間の実技講座を受けなければならなかった国です(現在は義務ではありません)。まずは人間側が動物のことを理解する姿勢があり、そしてメンタルに何より配慮する、という姿勢は強く印象に残りました。

 

そして、動物好きな方は万国共通で優しい。全身タトゥーのカップルは、お散歩ボランティアにきてました。スタッフの方々は何十年もボランティアを楽しそうにしていて生活の一部になっているように感じました。犬猫以外でも動物への愛は同じく、動物も自然も守りたい、そしてその思いが法律や行動で示せている国であることに皆が誇りを感じていることが羨ましかったです。

 

いつか私も「日本は少し前は動物にひどいことをしていたけれど、すごく日本は良くなった」と子供に伝えることを目標にアニマル・ドネーションを運営していきます。

 

 

次回は、SPABがどうやって子供達に動物の大切さを伝える工夫をしているか、を紹介します。

 

※掲載の文章・写真はアニマル・ドネーションが許可を得て掲載しております。無断転載はお控えください。