保護活動マニュアル

STEP2| 保護した犬の健康チェックについて

STEP2| 保護した猫の健康チェックについて

保護犬・保護猫の主な感染症について

この記事は 犬 猫 に当てはまる内容です

犬や猫を保護したときに知っておくべき主な感染症として、パルボウイルス感染症、猫白血病ウイルス感染症、猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)があります。これらのウイルスにはワクチンがあるため、保護した犬や猫と同居する犬猫には、接種しておくことが望まれます。また保護犬・保護猫についても、医療チェックのタイミングでワクチン接種をしておきましょう。

犬と猫のパルボウイルス感染症

犬および猫のパルボウイルス感染症はパルボウイルスに感染することにより起こる病気で、死亡率が高い危険な感染症として知られています。このウイルスは、動物の口から入って腸管で増殖します。

  • ◇症状

パルボウイルスに感染した動物では、4~6日程度の潜伏期間のあとに発熱や下痢、食欲不振、白血球の減少などが現れます。保護した犬や猫が下痢をしていたら、パルボウイルス感染症の可能性を考えてください。感染した動物の糞便中には多くのウイルスが排出され、他の犬や猫へと伝播していきます。ウイルスは症状が治まったあとも、6週間ほどは糞便の中に排出されるといわれています。

  • ◇対策

パルボウイルスは生存力がきわめて強く、アルコールなど市販の消毒薬ではほとんど消毒できません。絨毯の上などに残った場合、数ヵ月間以上生存しつづけることもあります。

感染した犬や猫が使用した物と場所については、最初に糞便などの汚れをよく取り除きましょう。そのあと、0.5~1%程度の濃度になるよう調整した塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)で消毒し、最後に水洗いします。糞便がついた可能性がある物や場所を注意深く確認し、徹底的に消毒を行ってください。

保護した犬や猫がパルボウイルス感染症と診断されたり、下痢のためこの病気が疑われたりする場合は、他の犬や猫から隔離しなければなりません。またタオルなど、感染した犬猫が使用した物は、他の犬や猫と共有しないようにします。お世話をする人がウイルスを運んでしまうことがあるため、隔離場所に出入りする人はその都度、服を着替えるなどの注意が必要です。

 

猫白血病ウイルス感染症

猫白血病ウイルス感染症は、猫白血病ウイルスが原因となって起こる病気です。このウイルスは猫の唾液に含まれるため、感染した猫が他の猫を舐めたりケンカしたりして濃厚接触すると、伝播する恐れがあります。

  • ◇症状

猫白血病ウイルスに感染しても、一部の猫は体の中からウイルスを排除し、白血病にはなりません。しかし感染したあとに、無症状のまま体内にずっとウイルスを持ち続け、他の猫の感染源となる猫もいます。こうした感染のことを「持続感染」、ウイルスを持ち続ける猫を「無症状キャリア」と呼びます。このような猫は、数ヵ月~数年の潜伏期間のあと、リンパ腫や免疫抑制、貧血など白血病の症状を示し、余命が短くなる可能性があります。このため、保護した猫に症状がなくても、猫白血病ウイルスについて検査をすることが重要です。

  • ◇対策

猫白血病ウイルスの感染力はあまり強くありませんが、やはり陽性と診断された猫は他の猫から隔離し、食器などの共有を避けるべきでしょう。消毒は比較的簡単で、ふつうの洗剤や石鹸を使った洗浄、アルコールなどで十分です。

 

猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)

猫免疫不全ウイルス感染症は猫エイズとも呼ばれ、猫免疫不全ウイルスの感染によって起こります。このウイルスはケンカや交尾によって、他の猫に伝播することがあります。

  • ◇症状

猫免疫不全ウイルスも猫白血病ウイルスと同様、持続感染を起こすことが知られています。猫白血病ウイルスと異なるのは、一度感染するとウイルスが排除されず、生涯、猫の体内に残り続ける点です。また猫免疫不全ウイルス感染症のもうひとつの特徴として、感染後に症状のない状態(無症状キャリア期)が数年~10年以上も続くことが挙げられます。このため、症状が出る前に天寿をまっとうする猫もいますが、そうでない場合は、免疫異常に関連する慢性感染症(歯肉炎や口内炎)、体重減少などの「エイズ関連症候群」が現れます。

  • ◇対策

猫免疫不全ウイルス感染症についても、保護した猫が陽性の場合、あるいは、まだ検査結果が分からないうちは、他の猫からの隔離が必要です。特にオス同士が同居するとケンカにより感染が広がる可能性がありますので、注意してください。

猫免疫不全ウイルスは猫白血病ウイルスと同様、比較的消毒しやすいウイルスです。感染した猫が使った食器やタオルなどは、洗剤で洗えば消毒することができます。猫を触ったら、手指をしっかり洗ったあと、念のため消毒用アルコールをスプレーするとよいでしょう。

 

保護犬・保護猫の感染症についてのアドバイス

動物を保護した場合、感染症の可能性を考え、検査を受けたうえでワクチン接種や消毒などの対策を行ってください。

保護活動をしている方は、感染症について十分気をつけているかもしれませんが、犬や猫から人に感染する「人獣共通感染症」への注意も怠らないようにしましょう。人獣共通感染症には、狂犬病、レプトスピラ症、イヌブルセラ症、パスツレラ症などのほか、最近出てきた重症熱性⾎⼩板減少症候群(SFTS)があります。SFTSウイルスはダニから人に感染するだけでなく、犬や猫に咬まれたり接触したりすることでも人に感染し、特にお年寄りがSFTSになると重症化することがあります。

保護したばかりの動物を触るときには可能であれば手袋をして、触ったあとは必ず手を石鹸で洗うこと。咬まれて腫れたり何か症状が出たりしたときには、すぐに病院に行くことが重要です。
(日本大学 生物資源科学部 獣医学科 獣医微生物学研究室教授 遠矢幸伸さん)

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