お願いできるトリマーさん、トリミングサロンを探しておく
シャンプーだけであれば保護団体でも行うことができますが、毛が絡まって大きな塊になっている、毛玉がすごく多い、被毛が伸びすぎているなどの場合は、トリマーさんにお願いします。しかし、すべてのトリミングサロンが保護犬のトリミング・シャンプーを受け入れているわけではありません。
動物保護の活動に賛同し、無償または特別料金で協力をしてくれるサロンがある一方で、有償であっても保護犬のトリミングやシニア犬は受け付けていないサロンがあるかもしれません。また最近では、トリミングサロンの予約が取りにくい状況にあるので、必ずしも受けてもらえるわけでないということを頭にいれておきましょう。
いずれにしても、団体ごとに協力してもらえるトリマーさんやトリミングサロンを確保しておくと安心です。なかには、個人的にボランティアで保護犬のトリミングを行なっているトリマーさん(通常「ボラトリ」)もいるので、事前に探しておくとよいでしょう。
トリミングを行うタイミング
基本的に、カットが必要ない犬種や特に毛の絡まりなどがひどくない場合、シャンプーやカットを行う前に動物病院で医療チェックを受けます。ノミ・マダニがいる場合はその駆除を行い、ほかの犬に感染する危険のある伝染病にかかっていないかどうか、トリミングサロンに行く前に確認しておくことが大事です。その結果をサロンに伝えることで、トリマーさんも安心して保護犬を受け入れることができます。
ただし、全身の汚れや臭いがひどい場合は、保護した団体で洗ってから動物病院に連れて行くことも。また、毛が絡まり過ぎて皮膚の状態が見えないなど、医療チェックを受けるのに支障がありそうなときなどは、獣医師に診せる前にトリミングやシャンプーを行います。
【基本的なトリミング・シャンプーの流れ】
- ブラッシング(※1)
毛玉や余分な毛のカット
シャンプー(肛門絞り)
ドライヤー
カット(顔のまわりや足まわりのカット)
爪切り(※2)
耳掃除(※3)
※1 シャンプー前に丁寧にブラッシングすることで、汚れの大半は落とすことができます。ただし保護された犬の場合、被毛が伸び放題になって毛が絡まっていて、ブラッシングそのものができない場合もあります。
※2、3 トリミングサロンやトリマーさんによってこれらを行う順番は異なる場合があります。
家庭犬と保護犬のトリミングの違い
一般的に、家庭犬に比べて保護された犬は、人に慣れていないことも多く、なかなか人に心を開いてくれないケースもあります。なかには、体に触ってくる人に対して攻撃的な態度を取る犬も。
トリミングを行う際には、そうした保護犬の精神状態をよく理解したうえで、時間をかけて向き合い、信頼関係を築いていく必要があります。
- 同じ空間内にいるだけの時間をつくる。
いきなり体に触らず、まずは保護犬の様子(怯えているか、問題行動がありそうか、体調はよさそうかなど)を観察する。
↓
- ブラシでそっと体に触れてみる。
- おやつを与えてみる。
- 声をかけて褒めてあげる。
保護犬が人に興味を持ち始めたことがわかれば、ブラシなどで少しずつ体に触れてみます。おやつに興味がある場合は、おやつを与えてみます。おやつに興味がなくても、声をかけて褒めてあげることで徐々に人との距離が縮まることもあります。
↓
- ブラッシングから、カット、シャンプーへ。
トリミング台を怖がる場合は、無理に台に載せずに床の上で行います。
ブラッシング、シャンプー、カットの間もつねに声をかけて褒めることで、恐怖感を抱かせないようにします。犬の状態によっては、ブラッシングだけで終わらせ、次回のタイミングでシャンプーやカットをすることもあります。
また、一般の家庭犬は伸びた毛をカットするだけなく、見た目の格好よさを優先にしたカットを行いますが、保護犬の場合はまず清潔で健康な状態を目指し、可能であれば顔回りなどに少し毛を残して見栄えがよいようカットをします。
保護団体がトリマーさんに伝えるべきこと
保護犬のトリミングを依頼する際には、以下のようなことを伝えます。
- ・保護犬であること
- ・どんな事情で、いつ、どこで保護された犬なのか
- ・医療チェックが終わっている場合は、その結果
- ・保護団体からみた犬の現在の精神状態
団体に保護されるまで、その犬がどんな環境で育ってきたのか、またなぜ保護されたのかを知ることは、トリマーさんにとって有用な情報です。初対面の保護犬へのアプローチ方法のヒントがそこにあります。
人馴れしていない犬に対応したことのないトリマーさんや、毛の絡まりがひどい犬のカットを行ったことのないトリマーさんも少なくないので、事前にそうした犬の情報を開示したうえで、対応してもらえるかどうかを確認しましょう。
保護団体がトリミング後に聞いておくこと
トリマーさんは、シャンプーやカットの際に直接、保護犬の肌に触れ、目視しているので、何かトラブルや懸念点がなかったかどうか、トリミグ後に確認しておきます。医療チェックでは見つからなかった小さな皮膚の炎症やトラブルに気がつくことも。そうした場合は、その結果を獣医師に伝えて、治療の必要性の有無を確認しましょう。