保護活動マニュアル

STEP2| 保護した犬の健康チェックについて

保護犬の医療チェックについて

この記事は 犬 に当てはまる内容です

犬を保護したら、まず最初に行うのが医療チェックです。長毛の犬の場合、保護時の状態によっては、健康診断より先にトリミング・シャンプーが必要な場合もあります。

保護犬のトリミング・シャンプーについて

医療チェックを行う動物病院を探す

保護犬の健康状態を正しく知るために、医療チェックは動物病院で獣医師によって行います。

ただし、全ての動物病院が保護されたばかりの犬の診療を行ってくれるわけではありません。保護活動の取り組みに賛同し、協力してくれる動物病院を探し、団体の提携病院(かかりつけ医)としておくと安心です。なかには、保護犬価格で診察や治療を行ってくれる動物病院もあります。

医療チェックの内容(一例)

保護犬に対して行う医療チェックの基本項目は以下の通りです。検査の結果によっては、すぐに病気の治療を始めなければならない場合もあります。

  • ◇問診、視診、聴診、触診

まず獣医師が保護したときの状況や犬の状態を聞きます。それから目・口腔内・皮膚・足など体全体の視診、触診を行い、聴診器を使って心音・呼吸音・お腹の音などを確認します。

  • ◇体重測定
  • ◇血液検査

病気が潜んでないか全身の健康状態を調べます。

  • ◇フィラリア検査

フィラリアは、蚊が媒介して犬の心臓や肺動脈に寄生し、死につながる深刻な症状を引き起こす恐ろしい虫です。血液検査または抗原検査によって、フィラリアの寄生の有無を調べます。フィラリアの成虫および子虫(ミクロフィラリア)が検出された場合は、すぐに治療が始められます。

  • ◇狂犬病ワクチン接種

日本では「狂犬病予防法」によって、ワクチン接種が義務付けられています。そのため保護団体においても、病気や体調不良などで獣医師の判断により免除された場合を除き、接種を受けさせる必要があります。

  • ◇ワクチン接種

ジステンパーや犬伝染性肝炎、犬パルボウイルス感染症など、保護した犬同士で感染する伝染病を予防するため、5種または6種(地域によっては8種)の混合ワクチン接種を行います。行政によっては、ワクチン接種を行ってから保護団体に犬を引き渡す場合もあります。

▶保護犬・保護猫の主な感染症についてはこちら

  • ◇不妊・去勢手術

不妊・去勢手術を受けていない犬の場合は、健康診断の結果に問題がなければ、後日、不妊・去勢手術を行います。子犬の場合は、個体差はあるものの生後半年ぐらいで行います。
犬の体調や月齢などにより、譲渡後に新しい家族に不妊・去勢手術をお願いする場合もあります。

  • ◇マイクロチップ装着

2022年6月よりブリーダーやペットショップなどの犬猫販売業者には、マイクロチップの装着と情報登録が義務化されました。それに伴い、保護団体や一般の飼い主にも、マイクロチップの装着が努力義務となっているので、保護犬にマイクロチップが装着されているかどうかをチェックします。
未装着の場合は、団体でマイクロチップを装着するのか、新しい家族に託すのか、団体の方針を事前に決めておきましょう。

犬の状態に応じて行う項目(一例)

基本的な医療チェックに加え、犬の状態に応じて以下の検査や治療が行われます。

  • ◇ノミ、マダニ駆除

多頭飼育崩壊などの劣悪な環境にいた犬や野山で生活していた野犬などは、ノミ・マダニなどが体に付着している場合があります。それらが見つかった場合は、すぐに駆除を行います。

  • ◇尿検査、便検査

便を調べることで、腸内の寄生虫の有無や消化と腸内にいる微生物の状態、腸の健康状態を確認します。また、尿検査では尿路感染症の有無や腎属病などの兆候もチェックします。

  • ◇皮膚の検査、感染症の検査

被毛が抜け落ちているところがないか、湿疹やかぶれなど皮膚のトラブルはないか、ほかの犬に感染する可能性のある皮膚病がないかを確認します。

  • ◇パルボ検査

下痢などの症状がひどく、検便で寄生虫などの異常が見つからない場合は血液検査を行います。白血球の減少などが認められる場合は、パルボウイルスに感染している可能性も考え、抗原検査キットまたは糞便のPCR検査を行います。

  • ◇レントゲン検査

胸部、腹部の臓器の異常、骨や関節の異常などを調べます。

  • ◇超音波検査

肝臓や腎臓、膀胱、消化管などの臓器の形の異常や、腫瘍・結石・炎症などを確認します。

 

健康状態の評価ポイント

保護犬の健康状態を判断する際、基準とする部位とチェックポイントの一例は以下の通りです。

  • ◇体格

・骨格系の異常(骨折・脱臼・先天性異常など)が見られないか
・著しく痩せ細っていないか
・起立困難や歩行困難はないか

  • ◇皮膚・体毛

・皮膚炎はないか
・脱毛している箇所はないか

  • ◇目

・伝染性の疾患の兆候(目やに、流涙など)はないか
・眼球の異常(白濁、混濁、先天性疾患など)はないか

  • ◇耳

・外部寄生虫が疑われる著しい汚れはないか

  • ◇鼻

・伝染性の疾患の兆候(鼻汁、くしゃみなど)はないか

  • ◇肛門

・肛門周辺が汚れていないか(下痢、血便、脱肛など)

出典:環境省 譲渡支援のガイドライン

 

精神面でのケアも必要

保護犬の場合、医療チェックで問題がなかったとしても、「ご飯を食べようとしない」、「下痢や血便を起こす」などのこともあります。環境が変わったことがストレスとなって、体調を崩す犬も少なくありません。また、過去の経験から人間不信に陥り、噛んだり吠えたりといった攻撃的な態度を示すこともあります。

そうした前提を理解したうえで、保護犬を新しい家族のもとに送り出すまで、医療的なケアをきちんと行うのはもちろんのこと、精神的なケアもしっかり行うことが大切です。

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