医療チェックを行う動物病院を探す
保護猫の健康状態を正しく知るために、医療チェックは動物病院で獣医師によって行います。
ただし、全ての動物病院が保護されたばかりの猫の診療を行ってくれるわけではありません。保護活動の取り組みに賛同し、協力してくれる動物病院を探し、団体の提携病院(かかりつけ医)としておくと安心です。なかには、保護猫価格で診察や治療を行ってくれる動物病院もあります。
医療チェックの内容
基本的な医療項目(一例)
保護猫に対して行う医療チェックの基本項目は以下の通りです。検査の結果によっては、すぐに病気の治療を始めなければならない場合もあります。
- ◇問診、視診、聴診、触診
まず獣医師が保護したときの状況や猫の状態を聞きます。それから目・口腔内・皮膚・足など体全体の視診、触診を行い、聴診器を使って心音・呼吸音・お腹の音などを確認します。
- ◇体重測定
- ◇猫エイズ、猫白血病検査
猫を保護した場合は何も症状がなくても、必ず検査を行い、感染の有無を確認します。
猫の血液を採取し、検査キットを使って猫免疫不全ウイルスの抗体と猫白血病ウイルス抗原検査を行うことで、ウイルスに感染しているかどうかを調べます。
▶保護犬・保護猫の主な感染症についてはこちら
- ◇血液検査
病気が潜んでないか全身の健康状態を調べます。
- ◇ワクチン接種
室内飼いの猫の予防接種は3種(猫ウイルス性鼻気管炎、猫カリシウイルス感染症、猫汎白血球減少症)が基本です。
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- ◇不妊・去勢手術
不妊・去勢手術を受けていない成猫の場合、健康診断の結果に問題がなければ、予約が取れ次第、手術を行います。子猫の場合、早期の不妊手術を勧めている動物病院もあるので、獣医師に相談していつ頃行うか決めましょう。
猫の体調や月齢などにより、譲渡後に不妊・去勢手術を新しい家族にお願いする場合もあります。
- ◇マイクロチップ装着
2022年6月よりブリーダーやペットショップなどの犬猫販売業者には、マイクロチップの装着と情報登録が義務化されました。それに伴い、保護団体や一般の飼い主にも、マイクロチップの装着が努力義務となっているので、保護猫にマイクロチップが装着されているかどうかをチェックします。
未装着の場合は、団体でマイクロチップを装着するのか、新しい家族に託すのか、団体の方針を事前に決めておきましょう。
- ◇検便
便を調べることで、腸内の寄生虫の有無や消化と腸内にいる微生物の状態、腸の健康状態を確認します。
- ◇駆虫
野良猫や多頭飼育崩壊などの劣悪な環境下にいた猫は、ノミマダニ・シラミなどが体に付着している場合があります。それらを駆除する前にほかの猫と接触させると、他の猫や人間にもうつってしまうので、必ず駆虫を行います。
- ◇爪切り
保護したなかりの猫はかなり警戒心が強いので、引っ掻かれても大事に至らないように爪を切っておくことも大切です。
健康状態の評価ポイント
保護猫の健康状態を判断する際、基準とする部位とチェックポイントの一例は以下の通りです。
- ◇体格
・骨格系の異常(骨折・脱臼・先天性異常など)が見られないか
・著しく痩せ細っていないか
・起立困難や歩行困難はないか
- ◇皮膚・体毛
・皮膚炎はないか
・脱毛している箇所はないか
- ◇目
・伝染性の疾患の兆候(目やに、流涙など)はないか
・眼球の異常(白濁、混濁、先天性疾患など)はないか
- ◇耳
・外部寄生虫が疑われる著しい汚れはないか
- ◇鼻
・伝染性の疾患の兆候(鼻汁、くしゃみなど)はないか
- ◇肛門
・肛門周辺が汚れていないか(下痢、血便、脱肛など)
精神面でのケアも必要
保護猫の場合、医療チェックで問題がなかったとしても、「ご飯を食べようとしない」、「下痢や血便を起こす」などのことも。環境が変わったことがストレスとなって、体調を崩す猫も少なくありません。野良猫や多頭飼育から保護された猫は人に慣れていないことが多く、警戒心から攻撃的な行動に出る場合もあります。
また、精神的な部分以外でも、検査で見つけられなかった病気が潜んでいる可能性もあるので、変化を見逃さずよく観察することが必要です。
そうした前提を理解したうえで、保護猫を新しい家族のもとに送り出すまで、医療的なケアをきちんと行うのはもちろんのこと、精神的なケアもしっかり行うことが大切です。