寄付したお金の使い途レポート

寄付がつなぐ保護猫達の命 多頭飼育崩壊現場から全49頭をレスキュー

アニマル・ドネーションではみなさまからお預かりした緊急支援基金を、10頭以上の多頭飼育崩壊レスキューに入り5頭以上引き取られた団体様へお届けしています。

今回は保護団体の『特定非営利活動法人 猫と人を繋ぐツキネコ北海道』さんへ20235月に280,000円、8月に90,000円をお届けしました。

レスキューの詳細と基金の使い途について、代表の吉井さんにお話をうかがいました。

必死に生き延びた49頭の猫達

猫の多頭飼育崩壊現場
レスキューの現場写真

ー 今回のレスキューについて経緯を教えてください

「帯広市の個人ボランティアグループからのご相談でした。飼い主の女性が勤務中に倒れ、救急搬送されましたが意識が戻らず、そのまま入院となってしまったのですが、家には猫達が10匹くらい取り残されているとのこと。

飼い主の弟さんと従兄弟の方が行ってみると、部屋の中は糞尿にまみれ劣悪な状況の上に、猫がざっと数えて30匹!ガリガリで餌も何もなく5日間は放置されていたようです。最終的には49頭の猫を保護しました。

行政を含め、受け入れてくれる団体がなかなか見つからない中、個人のボランティアグループで受け入れられる頭数ではなかったため、ツキネコに相談の依頼が入りました」

ー 現場の状況はいかがでしたか

「相談の依頼を受けて、すぐにLINEグループトークを作り行政との連携を目指し、スピード感を持って動き出しました。とりあえず死骸はないと思っていましたが、その後段ボールの中も含め4体の死骸が見つかりました。

最初はたらい回しでしたが、行政も理解を示してくださり、振興局・保健所や市役所の環境課と連携してレスキューする事になり、ツキネコのメンバー、相談者さん、個人ボランティアグループの皆さんと共に掃除とケアに入りました」

 

猫の多頭飼育崩壊現場
こたつの中に身を寄せる猫たち

ー 保護した猫達はどのような様子でしたでしょうか

「『可愛い猫達で良かった、、、』
相談があった帯広の個人ボランティアグループから送られてきた画像を見た時の印象です。それが後に大変なことになって行くとは思いもよりませんでした。猫達の様子から譲渡できそうな印象を受けていましたが、思ってもいない事態、、、それはカリシウイルスの発症でした。

 

動物は感染症に弱いことは私たち人間も恐ろしいほど身に染みた、新型コロナウイルスの蔓延があります。たくさんの多頭飼育案件を経験してきましたが、まさか自宅内の多頭飼育崩壊の猫達からカリシウイルスを発症することは予想することができませんでした。帯広から札幌へ猫達を移動してシェルターで面倒を見始めましたが、どうも様子がおかしくなってきました。猫風邪とはまた違う何かが猫達全頭に現れ始めどんどんと体調が崩れ始め、必死のケアの甲斐もなく1匹、また1匹とその命の灯火は消えていくのでした。

 

通院、点滴、注射、点眼点鼻、強制給餌必死のケアを続けその後どうにか持ち直した猫達でしたが、今度は口内に問題が起きてきました。カリシウイルスのせいなのか、若い猫達を含めほぼ全頭が抜歯や口内治療を余儀なくされその医療費は莫大な金額となっていきました。

全頭49頭中
成猫11匹 子猫8匹が虹の橋へ
譲渡16匹 トライアル1匹 (11月10日現在)
この案件は今まで受けてきた多頭飼育崩壊案件の中でもとても厳しい案件と言えるでしょう」

保護猫のレスキュー時の様子
結膜炎になっている子
保護猫のレスキュー時の様子
脚に怪我をしている子

ー アニマル・ドネーションからの寄付は何に使われましたか?

「ワクチン、ウイルス検査、便検査、駆虫薬、耳垢検査 猫風邪の治療など、全て医療費に使わせていただきました」

保護猫への医療ケア
医療ケアを受ける猫
保護猫への医療ケア
ほぼ全頭に抜歯や口内治療を行った

保護した猫たちに充分な幸せを

ー レスキューから半年経過しましたが、その後の猫達の様子を教えてください

「1匹の子は保護当初人に甘える事を知らず、噛みついてくる子でした。ある日突然、脚を骨折したのですが、末期の腎不全があったため手術ができない状態で長い間ギブス生活。回復傾向にあった中突然の痙攣、、、原因はわからないままその日から毎日の点滴、そして腎不全からの貧血もあり週一回の貧血の注射のケア。口内環境は保護された時から悪く、よだれも垂れっぱなしで口からの投薬は痛がるので無理でした。人のそばで寝るようになり初めて猫おもちゃに反応して感動したのも束の間、、、その後二週間で亡くなりました。

 

その他の子たちも成長不良(栄養障害)や口腔内環境の激悪。よだれや出血は当たり前で、痛がりながらなんとか摂取していましたがもちろん皆ガリガリでした。現場では出産後出血が止まらず瀕死の状態の子もいて緊急手術をし子宮全摘をした子も。肛門から出血している子は子宮蓄膿症で緊急オペもしました。

 

現場から最後に引き出した猫達は特に人を恐れ触らせない子達ばかり。無事に去勢、全臼歯抜歯を終え安堵も束の間、その2日後に原因不明の体調不良に次々に陥ってしまいました。抜歯をしても口内炎はひどく、一日置きのステロイドの注射を今後もしていかなくてはいけない子も。人馴れ皆無の猫達への投薬、給餌が本当に辛かったです。

 

獣医師から『もうしてあげられることは何もない』と言われた猫は後遺症の咳が残るものの、現在はお世話する人に甘えることを覚え遊びが大好きな子になりました。共に闘った戦友のような存在です。生きて欲しい。アパートの台所の裏や押入れの中で必死に生き延びた49匹の猫達。やっとレスキューされたこの子達に充分な幸せをまだ与えてあげられていない!絶対に死なせない!その一心でケアをしてきました。現在、体調的に譲渡が難しい子もおりますが、ツキネコ北海道の終生飼養施設『月虹山荘』で穏やかに過ごしております」

保護された猫の健康状態
一番状態の悪そうだった《E作》
保護された猫のその後の様子
メンバーさんの自宅で手厚い保護を受けた、現在の《E作》がこちら

新しい家族を待つ片目の猫《マイナーリーグ》

ー 生死の境を彷徨っていたシャム猫《マイナーリーグ》の大変身

「病に倒れた飼い主さんは奇跡的に回復された様ですが、会うこともままならず支払い能力も皆無ということで、猫達の全責任は私達の肩に重くのしかかってくることになりました。それでも回復した猫達に新しい家族が決まれば、苦労も多かっただけに喜びもひとしおです。そんな中で生死の境を彷徨っていた《マイナーリーグ》とても臆病でケアすることがままならず、顔を見ればシャーシャーと後退りしていた子でした。投薬や点眼が難しく片目はすでに壊死していて、ご飯が食べれなくなり身体はガリガリでもう死を待つばかりでした。

 

『どうしてもこの猫を助けなければ!』
代表の吉井自ら、自宅に連れ帰り集中ケアした《マイナーリーグ》は、長い引きこもり生活を経てシャム猫特有の超激甘にゃんこに変身。諦めかけていた譲渡も夢ではなくなりました」

保護猫のレスキュー時の健康状態
カリシウイルス発症当時の《マイナーリーグ》
保護された猫のその後の様子
今では超激甘にゃんこに大変身!

ー 最後に寄付支援者へのメッセージをお願いします

「いつもツキネコ北海道の活動に多大なるご理解とご協力を賜りまして誠にありがとうございます。

今回、飼い主の方とはちゃんとお話しをしていないのでなぜこのようなことになってしまったか背景は不明ですが、仕事を2つ掛け持ちして猫たちとの生活を維持していたと聞きました。きっと退院しても前の様には暮らせないと判断して、猫達の幸せのために放棄を決断してくださったと思います。

 

年齢にかかわらず生きていれば誰にでも思いのよらない病気や怪我などのアクシデントがあります。改めてペットの飼い主は自分に何かあった時に備えることが大切だと思いました。飼い主さんを責めるだけでは解決しないこと、そして決して他人事ではないことを皆様にご理解頂けたら幸いです。いつもお願いばかりで恐縮ですが、皆様からのご支援、よろしくお願い申し上げます」

 

これからもアニマル・ドネーションは、確かな寄付をお届けしてまいります。ツキネコ北海道さんへの温かいご支援をどうぞよろしくお願いします。

 

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