【特定非営利活動法人アニマルレフュージ関西】多頭飼育崩壊による基金の使い途について
アニマル・ドネーションでは、皆様からお預かりした緊急支援基金を10頭以上の多頭飼育崩壊レスキューに入り5頭以上引き取られた団体様へお届けしています。
2022年4~7月に、多頭飼育崩壊レスキューを行なった保護団体『特定非営利活動法人アニマルレフュージ関西(通称アーク)』さんに 緊急支援基金として300,000円をお届けしました。
今回は、レスキューの詳細と基金の使い途について、担当の奥田さんにお話をうかがいました。
安易な繁殖がもたらす多頭飼育崩壊
ー多頭飼育崩壊のレスキュー依頼はどこからありましたか?
「飼い主本人から電話相談を受けました。
きっかけは、高齢の飼い主が『野生動物除けに』とペットショップで雌の柴犬を飼い始めたことです。翌年に同じペットショップで柴の雄犬を購入して以降、繁殖が始まりましたが、最初のうちは知り合いに譲ったりされていたようです。最近では手元に残る頭数が増えると同時に繁殖も進み、お世話が立ち行かなくなっている状況でした。加えて飼い主の自宅は山間部に位置し、冬期の大雪でライフラインが寸断されたことなどから、独居で現在の生活を維持するのは困難と判断され、転居のために、犬達を放棄するに至りました」
ー現場の状況を教えてください。
「大半の犬に疥癬(かいせん)を疑う皮膚症状やフィラリア陽性が確認されました。適切な医療、例えばノミ・ダニやフィラリアの予防などがされていなかった様です。便にも寄生虫がいたため、駆虫薬の投与も必要になりました。中には貧血が進んでおり、すぐに不妊去勢手術が難しい個体もいました。さらに力が弱い個体はご飯も満足に食べることができなかったのか、栄養状態も悪く、かなり痩せている状態でした」
ー現場にいた頭数などを教えてください。
「アークがレスキューに入る前に、保護団体らしき人物が飼い主の元へ訪れ、仔犬だけを連れて行ってしまったようで、私達が現場に訪れた時には、成犬約25頭ほどが確認されました。もともと飼育されていたとおっしゃる数十匹の猫も、確認できませんでした。
きちんとお世話をするためにも一挙に引き出しはせず、栄養状態が悪い子、皮膚の状態が悪い子から順にレスキューを行い、合計5回のレスキューで全30頭の成犬を引き出しました」
長期にわたる医療ケアを支える緊急支援基金
ー今回の寄付を何にお使いになりましたか。
「保護した犬たちの医療費全般に利用させていただきました。基本的なノミ・ダニの駆虫と不妊手術はもちろんの事、疥癬(かいせん)と思われる皮膚症状を患う個体には、薬用シャンプーで定期的にケアを行っています。またフィラリアに陽性反応がでた個体には、その症状に応じたケアを継続しています」
ーご寄付くださる方へメッセージをお願い致します。
「いつもアークの活動にご理解とご協力を賜りまして誠にありがとうございます。今回のレスキューでは3カ月で計30頭の犬たちを無事引き出すことができました。不衛生な環境で何年も耐えてきた彼らが、これから健やかで愛される犬生を送ってもらえるようにケアを行ってまいります。幸いにも、現在すでに約半数の犬たちを譲渡することができておりますが、残る保護犬たちにも明るい未来が待っていると信じています。引き続きアークの活動を応援していただきますよう、お願い申し上げます」
レスキュー後のケアは「ゆっくり・のんびり・丁寧に」
比較的大きなシェルターを備えているアークさんですが、受け入れは「きちんとお世話ができる頭数」を厳守して、5回に分けて行われました。不妊手術をしていないことを考慮して、最初はメスを9頭。その後は状態が悪いと思われる個体から順に7頭、7頭、5頭、2頭の合計30頭を引き出し、全頭を引き出せたのは最初のレスキュー日から約3ヶ月が経過していました。保護された犬は、健康状態も様々ですが、性格も多様です。1頭1頭に最適なケアを行う為には必要な期間でした。
例えば、最初にレスキューされたウィステリア。皮膚状態が悪いうえに貧血が特に酷く避妊手術すら出来ない状態でした。けれど散歩も上手なフレンドリーガールは、週1回の薬用シャンプーを頑張ってくれ、8月には少しフワフワしたウィスちゃんに大変身して無事リホームすることができました。
同じ現場からレスキューした犬でも、環境変化に弱かったり、人間を怖がったりする子もいます。その場合は、必要最低限の医療ケアの後は『ゆっくり・のんびり・丁寧に』お世話していきます。あくまで『犬のペース』で信頼関係を築いていくことが、アークさんの”動物保護”です。
レスキューに入るたびに『この地獄から1日も早く救ってあげたい』と焦る気持ちを抱えながら、順次レスキューに取り組んでいくことは大変だったと思います。しかし、この丁寧さこそがアークさんの『QOLの高い保護』を支えているのでしょう。
今回の相談者は、決して愛情なく飼養していた訳ではないようです。しかし、完全にサイズアウトしている首輪のつけっぱなしや、酷い皮膚状態で放置されている状態は『虐待』と言わざるを得ません。動物を家族に迎えるならば『適切な予防接種・不妊手術が不可欠』です。正しい飼養知識が広く認知されるように、アニドネも情報発信を続けていきます。
30頭それぞれに、アークさんの丁寧なお世話とストーリーがあります。その詳細は、 インスタグラム や ブログ で確認する事が出来ます。是非一度ご覧ください。
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