認定団体の活動レポート

【日本動物福祉協会(JAWS)】基礎から学べる!「動物福祉市民講座」を初開催

 

アニドネ認定団体の公益社団法人 日本動物福祉協会さん。

1956年の設立当初より、命にやさしい社会を目指して、日本の動物福祉向上のために啓発活動を行われています。

今回、初の試みとして『動物福祉市民講座』の第1回・2回が開催されました。

動物福祉について正しい知識を身に付けてほしい

 

ーーー「動物福祉市民講座」の目的を教えてください。

 

情報過多な現状において、事実を正しく理解して、情報に振り回されないために、動物の福祉について正しい知識を身につけていただきたいという想いから開催を決めました。

 

民意の力は時に法律より力を持つことがあります。法律と社会の溝を埋めるためには、私達市民の意識や知識の向上が必要不可欠です。そして、動物福祉の知識を身につけた人々が増えていくことによって、日本の動物福祉も向上していくことを期待しています。

講座受講のスタンプカード。全9回受講すると修了証とオリジナルグッズがプレゼント

 

 

中学生以上であれば誰でも受講可能な動物福祉市民講座。

全9回となっており、国内外の専門家による講義を年間通して受講することができます(各回、要申込み)。

講師の豪華な顔ぶれも日本動物福祉協会さんならでは

ーーー第1回、2回の「動物福祉市民講座」のカリキュラムとは?

 

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●〇第1回〇●

  • 動物福祉について      公益社団法人日本動物福祉協会 獣医師/町屋奈先生
  • 日本の現状と課題について  公益社団法人日本動物福祉協会 獣医師/町屋奈先生
  • 動物虐待/法獣医学     日本獣医生命科学大学     助教授/田中亜紀先生

 

●〇第2回〇●

  • 動物行動学         アメリカ獣医行動学専門医   獣医師・博士/入交眞巳先生
  • シェルターメディスン    日本獣医生命科学大学     助教授/田中亜紀先生

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会場は水道橋駅からほど近い貸会議室。平日の昼間の時間の開催であったにもかかわらず両回とも満員御礼でした!

 

講師は各専門分野の第一線でご活躍されている有名な先生。

日本動物福祉協会さんだから出来る贅沢な顔ぶれです。

 

タイトルを見ただけでは、少し難しいかなと思う方も多いかもしれません。しかし講義の2時間はあっという間に感じるほど充実したものでした。簡単ではありますが内容をご紹介していきます。

 

2日間のテキスト

世界的な動物福祉の基本「5つの自由」

ーーー第1回 1. 動物福祉とは

 

一般には「動物福祉」という言葉はまだ聞きなれない方も多いかもしれません。

私たち、アニドネのミッションにも『日本の動物福祉を世界トップレベルに』を掲げています。

 

「動物愛護」は人間の感情が主体となっている考え方で、そこには動物を思いやる心に重点が置かれています。人それぞれの感情は異なるため系統化しにくいものです。「愛護」は日本特有の表現で諸外国にはありません。

 

一方「動物福祉」は動物が主体となる考え方です。動物の健康状態や苦痛を科学的に測定し、科学的根拠に基づいて判断されます。「動物福祉」は英語で「Animal Welfare」。アニドネとしても団体の認定基準のひとつとして動物福祉への配慮を重視しています。

 

事務局長の宇野さんから最初のご挨拶

 

世界的な動物福祉の指標として使われるのが「5つの自由」です。

 

  • 1. 飢えと渇きからの自由
  • 2. 不快からの自由
  • 3. 痛み・傷害・病気からの自由
  • 4. 恐怖や抑圧からの自由
  • 5. 正常な行動を表現する自由

 

現在の日本の動物愛護法には4番の「恐怖や抑圧からの自由」という、動物の精神面を守るための基準が未だありません。

 

日本動物福祉協会のHPで国際的な動物福祉の基本(5つの自由)の解説が掲載されています。

動物福祉について/日本動物福祉協会

 

殺処分ゼロによって、動物福祉もゼロに?!

ーーー第1回 2. 日本の現状と課題とは

 

講座では動物福祉についての正しい捉え方を学んだあと、今の日本の「殺処分ゼロ運動」についての問題提起がされました。

 

『殺処分ゼロによって、動物福祉もゼロ』になる恐れがあるということです。

 

殺処分ゼロというと聞こえがいいですが、そうした過度なプレッシャーにより行政が闇雲に動物の引取り拒否をしたり、過剰収容をせざるを得ない状況に立たされています。

 

殺処分ゼロが達成されたとしてもそれは行政施設での数字の話。引き取り拒否された動物はいわゆる引き取り屋という悪徳業者に流れ、劣悪な環境で過ごすことを余儀なくされる恐れがあります。

 

“殺処分ゼロ”はスローガンであって数値目標であってはいけない。

 

表面上の『殺処分ゼロ』に捉われないように私たちは気を付けなければならないと再認識させられました。

動物虐待調査の最後の砦となる「法獣医学」

ーーー第1回 3. 動物虐待/法獣医学とは

 

法獣医学という言葉を初めて聞く方がほとんどではないでしょうか。
法獣医学とは、人間の法医学の手法を動物に応用した学問です。

欧米を中心に、動物に関する訴訟の増加および法整備のために、ここ20年ほどで必要性が認識された非常に新しい学問です。

 

動物虐待を科学的に解明することで、裁判での根拠とすることができます。これまで立証することが難しかった動物虐待調査の最後の砦です。

 

講師は、日本獣医生命科学大学助教授の田中亜紀先生

 

日本動物福祉協会では獣医師を対象とした法獣医学セミナーも開催しており、力を入れていることのひとつです。

☞ 法獣医学研修セミナー/日本動物福祉協会主催

物言えぬ動物の気持ちは、“行動”から読み解くことが出来る

ーーー第2回 1. 動物行動学とは

 

人間の言葉を話すことが出来ない動物の福祉を守るためには、その動物について正しく理解することが基本となります。

 

ー「犬のしつけには上下関係を作らなくてはならない」というのは誤解ー

犬の祖先は確かにオオカミではありますが家畜化された犬はオオカミとは全くと言っていいほど別の動物。犬は他のどの動物よりも人とのコミュニケーション能力に優れています。
犬は人の視線を読むことが出来る“唯一の”動物。そのため人と犬の関係は親子のような関係を築くことの出来る動物です。上下関係や服従を意識したしつけは動物福祉に反する行為になります。

 

 

ー野良猫は、「ただっ広い青空の下でおトイレをするのがお好き」ー

市販されている猫のトイレは猫にとって狭すぎたり屋根付きで開放感のないものもあります。
猫にとって居心地のいいかトイレかどうかは、猫がどれくらいそのトイレに長居しているかで確認することができます。(人間が気持ちのいい綺麗なトイレだと、ゆっくり長居したいのと同じ心理ですね)

ありのままの動物が好む生活を提供することが動物のQOLを向上させる方法です。

 

講師は、アメリカ獣医行動学専門医の入交眞巳先生

一般家庭と保護施設での管理方法は全く別物?!

ーーー第2回 2.シェルターメディスンとは

 

シェルターとは動物保護施設のことです。保健所や動物愛護センター、動物を多頭で保護している施設全般を言います。

 

一般の家庭とシェルターとでは、病気になるリスクも違えば、脅威となる感染症も異なります。一般家庭では個体管理が必要になりますが、シェルターで必要なのは群管理。これらを同一視すると感染症蔓延のリスクが高まります。

 

シェルターメディスンについては詳しい内容が2 年間で4 回に渡り講義が設けられています。シェルターを運営している方、ボランティアとして働いている方が知らなくてはならない知識が満載です。

 

シェルターメディスンセミナー「よりよい譲渡に向けて」/日本動物福祉協会主催

 

情報の鵜呑みは危険!正しい知識を得ることが、動物福祉向上に

日本の動物福祉を向上させていくためには、私たち一般の人、一人ひとりが正しい知識を身に付けて、時に声を上げていくことが不可欠です。

 

法の整備においても世論の後押しがなければ進まず、最終的には、飼い主や動物に関わる人々が、動物のことを正しく理解しなくては動物福祉は成立しないでしょう。まずは自分の大切なペットのQOLを上げることが、動物福祉を守ることに繋がります。

 

テレビやインターネットでは様々は情報が溢れていますが、そういった情報を鵜呑みにすることはとても危険です。「動物福祉市民講座」は一般の方が専門家から正しい知識を得ることの出来る貴重な機会であると感じました。

 

良い意味で期待を裏切り、『受講してよかった!』と思える講座でした。

もっともっと多くの方に受講していただきたいです。

 

次回の動物福祉市民講座は『展示動物福祉セミナー』
講師は動物学者で英国のWild Welfareプロジェクト責任者のGeorgina Allen氏。世界的な動物福祉の最新知識を取得できる貴重な機会です!是非ご参加ください。

 

☞ 展示動物福祉セミナー(第三回動物福祉市民講座)/日本動物福祉協会主催

 

 


日本動物福祉協会さんへの寄付金はこうした動物福祉向上のための研修会やセミナー開催費用に使用されます。

日本動物福祉協会への寄付はこちらから。

 

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