職業は「動物保護活動」~動物福祉の未来を支える仕事
アニドネ認定保護団体『認定特定非営利活動法人アニマルレフュージ関西(通称アーク)』は、34年間の長きにわたり、様々な動物の保護を続けておられます。今回はその活動を支える団体スタッフの方にどういう仕事をされているのか、やりがいや難しさなど、”生の声”を活動レポートとしてお伝えします。
お話を伺うのは、松尾氏(38歳)
アークに約18年間在籍して、2011年の被災地支援の他、数々のレスキューも経験しておられるベテランスタッフさんです。
動物にも人にも深く関わる保護活動
アーク活動歴34年間のうち、ほぼ半分もの期間をともに保護活動に携わってこられた松尾氏。実際の保護現場について詳しく聞いてみました。
ースタッフならではのご苦労を教えてください。
「複雑な事情を抱えて入所してきた動物達の、初期受け入れでしょうか。大人しそうに見えても、急に攻撃してくる事があるので、ある程度の危険を伴います。かく言う自分も、入社1年目の頃に数針縫うケガをした事があるんですよ。正に”動物の怖さ”を痛感した経験でした。
今はもう、細心の注意を払って接しているので、そんな事故はありませんが、繊細な動物の心を理解する為に、プロのトレーナーさんに指導を受けたり、海外の研修に参加したりして、自己研鑽を続けることは欠かせません」
ーこの仕事のやりがいは何でしょうか?
「人馴れしていなかった子が、心を開いてくれた時、お散歩を楽しんでいる姿を見た時、卒業が決まった時、家族として暮らしている近況報告を頂いた時、それぞれに『嬉しい』ポイントがあります。入所時にお世話が大変だった子ほど、その嬉しさはひとしおです。
中でも思い出深いのがワイヤレスです。保健所職員の針金を使った捕獲により大怪我を負ってしまい、左前脚は断脚するしかありませんでした。身体的なハンデに加えて、しっかり”野犬”として育っていたので、攻撃性も強く、ハーネスを付けてお散歩に出るだけで2ヶ月以上かかりました。初めて犬舎から出た時は、嬉しくて嬉しくて記念写真なんか撮ってしまいました(笑)」
「興奮するとリードを噛みちぎるほど野良犬気質が強かったので譲渡対象外の”スポンサードッグ”としてアーク生活を送っていたんですが、なんと8年後、仲良しのオリンピアと一緒に家族に迎えて頂くことができました」
「入所理由の中には”人間の身勝手な都合”もあります。そういう事例に接すると、やるせない気持ちになるのですが、ワイヤレスの様な健康上の問題というハンデがあっても、アークの子を家族として迎えたいと希望される方もおられて、人間も様々です。動物だけでなく、人とも深く関わっていく奥深さも、この仕事の大きなやりがいではないでしょうか」
普段通りの自然体で話される松尾氏ですが、話題が保護の現状や問題に移るにつれ、その心の根底には、決して現状に流されない、より良い未来を目指す胆力が秘められていることを感じました。
入社の決め手は”お世話している子に会いたい”
そんな松尾氏が、動物福祉の仕事を選ばれたきっかけは何だったのでしょうか。
ーどういった経緯で、アークに入社されたのですか?
「もともと『動物に関わる仕事』を目指していました。ですが『保護活動』というのは全く念頭になく、動物園や畜産などの業界に入るつもりでした。それが、友人に誘われてボランティア参加したことが、アークに関わるきっかけとなりました」
ー『ボランティアに参加』することと、『職業』にすることには、大きな違いがあると思いますが、躊躇は無かったのですか?
「そうですね。当時の先輩や知人からは『長く続ける仕事じゃないよ』と忠告されました(苦笑)実際、お給料などの待遇面、業界の将来性など、自分でも悩みました。けれど、自分の心を圧倒的に占めていたのは(当時ボランティアで関わっていた)犬や猫達に”会いたい”だったんです。だから、その他の事は何とかなるかなぁと(笑)アークが気持ちの良い自然の中にあり、居心地の良い人間関係が築かれていたことも、自分にとっては”良い条件”でしたね」
動物福祉が抱える問題は、大勢の人達が関係するために一朝一夕には解決出来ません。数十年をかけて解決を目指す保護活動は、『一生をかけて取り組む仕事』として、十分選択肢になりえるんですね。
保護活動の継続を担う次世代のスタッフ
いつもアニドネの窓口を担当して頂いている奥田様にも、お話を伺いました。
ー奥田様から見た松尾様は、どの様な方でしょうか?
「何事においても誠実な人です。スタッフ、幹部から最も信頼が厚い、アークの活動になくてはならない存在と言えるでしょう。私のアーク人生も彼なしでは語れないものがあり、スタッフとしてもそうですが、一人の人としてとても大切な存在です」
「この業界はキャリアの長い男性スタッフが非常に少なく、代表や理事ではなく、法人に雇用された現場の人材として考えると、彼は大変貴重な存在だと言えます。在籍しているアークスタッフたちや、これからこの道に進みたいと考える若者たちの道標となって欲しいと思っています」
皆様から頂いたご支援により、今回ご紹介した松尾氏をはじめ多くのスタッフが、保護動物のために活動することが出来ています。それは『本当に感謝しかございません』と松尾氏談。これからも引き続きアークさんへご声援・ご寄付を賜りますよう、よろしくお願いします。
*********************************
◆アークさんのご紹介・ご寄付のページ はこちらからもご覧頂けます。
※掲載の文章・写真はアニマル・ドネーションが許可を得て掲載しております。無断転載はお控えください。
*********************************