【特定非営利活動法人 猫と人を繋ぐツキネコ北海道】飼い主さんに普通の暮らしを取り戻してもらうために‥‥“チームツキネコ”奮闘レポート!
多頭飼育崩壊、野良猫、捨て猫、飼育放棄‥‥北海道内の様々な猫の問題の相談を受け、年間500頭以上の猫を保護している特定非営利法人 猫と人を繋ぐツキネコ北海道(以下、ツキネコ)。2023年4月には終生飼養施設「月虹山荘~ねこの方舟~」を本格的に始動させ、多頭飼育崩壊からきた猫の一時保護場所、譲渡が難しい猫の終生飼養場所、老猫ホームとして運営しています。
今回、小樽市福祉総合相談室(通称たるさぽ)からツキネコへ、困窮家庭への猫のフード支援と、飼い主(60代女性・息子さんと二人暮らし)が生活保護を申請したので飼育頭数の調整もしたい、という相談がありました。しかし実際に飼い主さん宅を訪れてみると、想像をはるかに超える大変な状態になっていたそうです。ツキネコの代表吉井さんにお話を伺いました。
飼い主さんに普通の暮らしを取り戻してもらいたい!“チームツキネコ”の願い
━ 実際に現場に行かれた時の状況を教えて下さい
「小樽市内にあるお宅を訪ねたところ、家の前で綺麗なお花がたくさん咲いているお庭に水を撒いているご婦人がいました。近所の方だと思って車の駐車の許可をその方に取ろうとすると、なんとその方が相談者さんだったのです。頭数が少ないのを聞いていたので、生殖制限さえしてあげれば良いのだろうくらいに考えていましたが家の中を見て驚いてしまいました。予想に反して家の中は糞尿だらけの不衛生な状態だったのです」
━なぜその様なことになってしまったのでしょうか
「飼い主さんは鬱状態が酷くなり、掃除が出来ない状況になってしまわれた様です。猫たちのトイレは見当たらず、かなりの悪臭で、家具も糞尿で使えない状況になっていました。この日は親子猫だけ連れて帰りましたが、私たちとしては、この場所をこのままにしておくことは出来ません。翌日お掃除の段取りをつけて、スタッフ、ボランティアさん総勢15名で出向きました」
━ お掃除だけでなく、不要な家具の寄付もされたとか?
「清掃終了後、糞尿にまみれた家具や布物類を使おうとしていたので、不衛生なので廃棄する様に指導しました。その際に代わりの物を用意することもお伝えしました。必要な物をお聞きしてその後、テレビ、冷蔵庫、書棚、布物等を支援。ボランティアさんの中にご主人が搬送の仕事をされていた方がいて、札幌から小樽まで運搬のボランティアをしてくださいました。偶然にもある事業者の縮小で不必要となった家具類の廃棄に困っていたのを、全て引き取りし必要な物を支援しました」
━ ただ猫が好き、という気持ちだけでは、この様なボランティアを続けていくことはとても難しいと思いますが、実際のボランティアさんのお声を聞かせて頂けますか?
「(さやかさん・30代)実家近くの野良猫を保護しようとツキネコさんにご相談したことがきっかけで、ボランティア活動について初めて知りました。知れば知るほど、過酷な状況にいる猫たちがどれだけ身近にたくさんいるかが分かり、自分の猫たちもうちに来なかったらどうなってたかと思うと、何かしたいと思うようになりました。預かりボランティアをはじめ、自分にもできることが結構あるんだなと分かり、より保護活動を深く知りたいと思い多頭飼育崩壊の現場に参加しました。野良猫の根絶は難しいですが、多頭飼育崩壊は人間の手で防げることだと思うので、今後も機会があればお手伝いしたいと思ってます」
━ 保護した猫たちはいまどうしていますか?
「保護したのは、成猫12匹 子猫8匹(着手後に出産した子猫5匹を含む)で、現在、ツキネコ北海道では成猫4匹、子猫7匹を保護しております。
成猫は避妊手術を控えている猫、出産した猫たちで猫風邪症状が出ている猫もいます」
━飼い主さんが引き続き飼育を希望された猫もいたそうですね
「高齢のメス猫で、卵巣水腫と卵巣腫瘍を抱えていました。飼い主さんのご家族もとても可愛がっていて、その日のうちにかかりつけ医で手術、飼い主さんへお戻ししましたが、前回の出張手術の後に体調が悪いとのことで診療してもらったところ、癌の再発でこのまま看取ってもらう様にお伝えしました」
『猫』のレスキューとともに『人間』のレスキューを
━ ほかに大変だったのはどんなことでしょうか?
「相談者さんとの関係性をより良くしなければ途中で案件が頓挫する場合もあるのと、行政との関わり方に神経を使いました。今後生活保護家庭になる予定なので、医療費や猫を引き取る際にかかる費用負担をどうやって捻出するかが大きな問題になります」
━ 『猫』のレスキューとともに『人間』のレスキューを大切にされているのですね
今までもたくさんの多頭飼育放棄現場を見てきて、相談者自身が発達障害やADHDの精神的な問題を抱えている方が多いです。一緒に掃除をしていても掃除の仕方がわからないと言います。社会から孤立している人たちも多く、SOSの出し方さえわからない為にこの様なことが起きてしまうのです。
たとえ、一時的に関わったとしてもその後の見守りをしなければまた同じことの繰り返しになりかねません。普通の生活を取り戻せる様にその道筋をつけたり、関係各機関に繋がるように情報を与えることが大切だと思っています。当団体としては『猫』のレスキューとともに『人間』のレスキューを大切に考えています」
━支援者さまへのメッセージをお願いします
「日頃からツキネコ北海道を応援してくださりありがとうございます。
NPO事業は寄付者(皆さま)と実行者(ツキネコ)の信頼関係が成り立たなければ成立しません。使命を明確にして皆様にわかりやすく伝え、報告を怠らないことが大切だと考えています。
北海道で活動し始めその活動は今や垣根を越えて、たくさんの仲間たちとともに猫たちとそれを取り巻く人々に向き合っています。ツキネコ北海道では『猫』だけをレスキューしても問題解決にはならないとの想いから、『人』の根底にある問題にも注視しています。
また私たちが家族同様に大切にしている【愛護動物】達が、未だに『物』としてしか認識されない現状を今後は打破していかなければなりません。その為にももっと大きな力をつけて、皆様から信頼される団体を目指して今後も真摯に活動していきたいと思っています」
ツキネコでは、今回の飼い主さんが今後もこの状態を維持していけるよう、小樽のボランティアの方に見守りサポートもお願いしているそうです。『猫』の問題=『人・社会』の問題。北海道内で同様の依頼が後を絶たない状況ですが、頑張る”チームツキネコ”さんへのご支援を、どうぞよろしくお願いいたします。
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