緊急支援金で継続!多頭飼育崩壊からのレスキュー
アニマル・ドネーションでは、皆様からお預かりした緊急支援基金を、10頭以上の多頭飼育崩壊レスキューに入り、5頭以上引き取られた団体様へお届けしています。
今回は、2024年6月から2025年4月にかけて、小樽および根室管内の二ヶ所の多頭飼育崩壊現場から合計50頭(小樽17頭/根室管内33頭)の猫をレスキューした『特定非営利活動法人猫と人を繋ぐツキネコ北海道』さんへ、6月30日に500,000円をお届けしました。 レスキューの詳細と基金の使い途について、代表の吉井さんにお話をうかがいました。
札幌から約430km・車で約10時間…根室管内での過酷なレスキュー
ーレスキューの依頼はどこからありましたか
「レスキューの依頼は、根室振興局・町役場の職員の方からありました。
北海道の東端、根室管内にて、飼い主の方が経済的困窮に陥り、最寄りの町役場に相談を持ちかけたことで猫の多頭飼育崩壊の事態が明らかになりました。
当初、現場確認を行った根室振興局から北海道本庁に相談をしましたが、対応は難しいとの判断で、民間団体へ相談するしかなくツキネコ北海道へ連絡があったのです」
ーレスキューの経緯を教えてください
「2024年6月26日に根室振興局の職員の方と、町役場の担当者も立ち会い、視察と今後の打ち合わせをしました。飼い主は長年にわたり、猫たちの世話を自力で続けてきましたが、住居はすでに猫たちに侵食されており、建物の天井は朽ち、猫たちは屋根裏に自由に出入りする状態でした。
それでも、飼い主は懸命に働きながら猫たちの面倒を見ており、愛情を感じる一方、年齢的にも体力的にもこれ以上の飼育継続は非常に困難であると判断せざるを得ませんでした。人馴れしている猫が多く、保護後のケアや譲渡活動を進めやすいことが幸いでした。町役場の職員の方が今後しっかり見守ってくださるとのことで、猫達の生殖制限と保護に向けて準備していくことになりました。
9月3日・4日ツキネコを臨時休業にして、大型レンタカーを借りてスタッフ6名で現地に向かいました。現地のボランティアさん達も駆けつけてくださり朽ち果てていたお部屋のお掃除を行い、改めて飼い主の方と根室振興局・町役場の職員の方と今後の打ち合わせを行いました。子猫14匹と母猫1匹を連れて9月4日に札幌へ。
その後、クリニックの先生が現地にて不妊去勢の手術やワクチン接種・健康診断を行ってくださり、9月17日に成猫17匹がツキネコに保護されました」
「健康診断・ワクチン・便検査・耳垢検査・軟便の子が数匹いたので通院し、整腸剤の処方を受けました。また、風邪治療の通院費に使わせていただきました」
ー現在の猫たちの様子はいかがでしょうか
「今回レスキューされた33匹のうち、残念ながら4匹は虹の橋に旅立ってしまいましたが、1匹は預かりボランティアさんのお宅で、残る28匹はそれぞれに新たな生活をスタートさせ、里親さんの元で元気に暮らしております。 とりわけ印象深いのが『いのしかちょう』です。保護当初から状態が非常に悪く、眼球の摘出手術を受けることになった他、口内環境の悪化も深刻で食事をとるのもやっとという状況でした。そのため、しばらくの間は代表がつきっきりでケアを続けてきました。
体調は徐々に回復し、落ち着いて過ごせるようになりましたが、正直なところ、この子の体の状態や年齢を考えると、譲渡は難しいかもしれない…と感じていたのも事実です。
ところが、ツキネコのSNSで紹介された『いのしかちょう』を見た方が一目惚れをしてくださり、『永年預かり』というかたちで家族に迎えてくださいました。今では『とにかく可愛くて仕方がないんです』と嬉しいご報告をいただいており、穏やかで幸せな日々を過ごしています。
また、現地から引き出せていない猫に関しては行政側との連動がなかなか取れず止まっている状況ですが、飼い主さんの生活状況も厳しく、フードの支援を定期的に行いながら残った猫達のレスキューを継続していきます」

ー支援者様へのメッセージをお願いいたします
「根室管内は札幌から距離・交通事情ともに非常にアクセスが困難な場所であり(約430キロ 車で約10時間)活動には多大な移動時間・人員・資金が必要となります。一度に大量の猫を引き出すことは当団体のキャパシティを超えるため、現地や近隣のボランティア、行政の皆様と協力体制を取りながら、猫たちを少しずつ保護したいと考えております。現在も、現地で暮らす猫たちのために、猫用フードなどの物資を定期的に支援しております。引き続き、あたたかいご支援とご協力のほどよろしくお願いいたします」
今なお現場に残る30頭の猫…支援と引き出しを継続中 小樽レスキュー案件
ーレスキューの経緯を教えてください
「小樽市保健所および後志総合振興局の管轄より、地元のボランティアを通じて寄せられた多頭飼育崩壊案件です。2023年より地域ボランティアが生殖制限(不妊・去勢手術)のサポートを行っていたケースで、外猫への給餌も並行して行われていたことから、近隣住民からの苦情も発生していました。
当初、飼い主は猫を手放すことに強い抵抗を示していましたが、家族の反対や生活環境の悪化もあり、最終的には“少しずつ頭数を減らす”という方針で合意が取れました。住環境は猫の数に対して手狭で、猫による占有も大きく、衛生面・生活面ともに厳しい状況にありましたが、なんとか生活は維持されていました」
「2024年6月には、当団体が現地を訪問し、初回のレスキューおよび住居の清掃活動を実施。真夏の蒸し暑い日で、室内にはエアコンがなく、網戸も設置されていなかったため、窓を開けての換気もままならない状況でした。特に飼い主本人の部屋には、猫の排泄物やゴミが大量に溜まっており、衛生状態は深刻でした。スタッフで手分けして清掃・消毒を行い、猫トイレの配置改善も行いました。また、換気と脱走防止のため、居間の窓には当団体のボランティアさんがDIYで網戸を設置しました。
その後、人馴れしていて譲渡に向いている猫を優先し、数頭ずつ保護。ツキネコ北海道のシェルターで譲渡活動を進め、譲渡が決まったタイミングで次の猫を引き出す形をとっています。2025年5月現在、まだ30頭以上の猫が現場に残っており、完全な解決には継続的な支援と時間が必要です。現地に残る猫たちのために、定期的にキャットフードやペットシーツなどの猫の飼養に必要な物資を届ける支援活動も並行して行っており、今後も少しずつ猫を引き出していく計画です」
「保護した猫たちの ワクチン接種、ウイルス検査、便検査、耳垢検査、不妊去勢手術、そして治療を含むケア費用 に大切に使わせていただきました」
ー現在の猫たちの様子はいかがでしょうか
「レスキューされた17匹の猫たちのうち、残念ながら2匹は猫風邪の悪化により、虹の橋へと旅立ってしまいました。
残る15匹のうち13匹は、新しい里親さんのもとで幸せな家猫生活をスタートさせ、1匹はツキネコカフェで里親さんとの出会いを心待ちにしており、もう1匹は預かりボランティアさんのお宅で過ごしています。
ツキネコカフェで出会いを待っているのは「だんか」ちゃん。ちょっぴり年上、おっとり優しい女の子です。普段は静かにマイペースに過ごしていて、ほかの猫とはあまり一緒にいません。もしかするとちょっと猫が苦手なのかもしれません。
でも、人にはとっても甘えん坊で、気がつくと足元にスリスリ。『なでて~』と見つめてきたり、ご飯の時間には誰よりも早く一番前でスタンバイしています。 小柄で、抱っこもOK!なでなでも大好きです。
現在、ご自宅にはまだ約35匹の猫達が残されています。家族の中でも猫の引き取りに反対する方もいて、解決まではもう少し時間がかかりそうです。支援として猫トイレの寄付、猫餌の定期的な寄付や、清掃後の部屋の様子を見て腐食していた家具などがあった為使用していない家具などを提供しました」

ー支援者様へのメッセージをお願いいたします
「北海道は広大な地域であり、その各地には地道に保護活動を続けている多くのボランティアの方々が存在しています。彼らの多くは資金的な余裕もなく、文字通り“手弁当”で自腹を切って、身を削るようにして不幸な命を減らす活動を日々続けています。
ツキネコ北海道は、そうした地域で活動するボランティアの皆さんと連携しながら、現場の実情に即した支援とネットワークづくりを進めてまいりました。単独では解決できない課題も、協力体制を築くことで乗り越えられるようになり、北海道全体で命をつなぐセーフティネットが徐々に広がりつつあります。
しかし、現場で必要とされる支援は多岐にわたり、保護猫の一時預かりや移送にかかる交通費、必要な医療処置、日々の食事・トイレ管理に必要な物資の確保、保護活動を支えるスタッフの人件費・移動費など、活動を継続していくには安定的な支援体制が必要不可欠です。とりわけ、近年深刻化している多頭飼育崩壊のケースでは、緊急対応と並行して、猫たち一頭一頭に適切な医療ケアと居場所を提供し、譲渡につなげていくための継続的な支援が必要になります。一時的な支援だけでなく、長期的な視野での介入が求められます。
また、今後こうした事態を未然に防ぐためにも、私たちは行政との連携の強化が不可欠であると考えています。現場の声を行政へと届け、制度的支援につなげていくことで、持続可能な保護体制を北海道に根づかせることが目標です。
ツキネコ北海道は、こうした北海道全域の課題に向き合い、連携・支援の中核を担う存在として今後も活動を続けていきます。そのためにも、皆様からの温かいご支援と応援が、何よりの支えとなります。どうか私たちの活動に力を貸していただき、一頭でも多くの猫たちが幸せに暮らせる未来をともに目指していただけますと幸いです。今後とも変わらぬご理解とご協力をどうぞよろしくお願い申し上げます」
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