海外情報レポート

動物福祉先進国が考える「動物にとっての幸せ」とは?<海外情報レポート・ドイツ編②>


日本の動物福祉を考える上で、世界各国の動向や考え方を知ることは大きなヒントになると私たちは考えています。
海外のリアルな動物福祉事情をリサーチ情報と共にお伝えしているアニドネの海外情報レポート企画。

 

動物福祉において、世界の中で先進的な印象のあるドイツ。

今回はリアルな犬との暮らしをドイツのバイエルン州に暮らすファミリーにレポートしました。
前半に続き、今回は動物の接し方、死の捉え方についてお聞きしました。

 

前半の記事はこちら→動物と共生する国ドイツから学ぶ。ドイツの動物福祉事情<海外情報レポート・ドイツ編①>

Profile

ドッグフードのnapaniの運営を中心的に行っているウルリケさん、そしてファミリーに嫁いだ日本人であるマキさんにお話をお聞きました。
【napani(ナパーニ)】
2015年に設立。「‚natürlich fürs Tier‘」というキャッチフレーズのもと、自然で、健康な、そして環境にとって持続可能なドックフードの開発をしています。
▷過去napaniさんからはチャリティーTシャツの販売の一部をアニドネに寄付いただいております。記事はこちら
▷napaniジャパンさんの公式サイトはこちら

 

🐾ウルリケさん🐾

酪農経営の一家に生まれ、子供の頃から多くの動物に囲まれて生活。17歳でアメリカに渡り、会社員として働きMBAを取得する傍ら、2000年に仲間と共に自ら動物保護団体を設立。20年以上にわたって各450匹以上の犬や猫の保護、そして彼らの一生を共に出来る新しい家族の仲介に従事。その間に健康問題を抱える多くの犬猫の治療のため、獣医と密に仕事を行う。また2年半アフリカにて非営利団体で働き、その後動物と関わる仕事がしたいと、ドイツに帰国しnapaniを設立。

 

🐾マキさん🐾
大学留学を機にアメリカへ渡米。留学中に今のご主人と知り合い、アメリカ留学中は義理姉であるウルリケの動物保護の活動を手伝う。2013年にご主人と結婚しドイツ・バイエルン州へ。ドイツ居住歴17年。

 

 

 

 

基本的には良識にゆだねられている動物との接し方

―数値規制について日本では議論されていますが、ドイツでは市民は数値規制を意識しているのでしょうか。

 

ウルリケさん、マキさん「数値の話ではありませんが、法律の話で言えば、犬を始めとした動物の生きる権利については、法律で認定されています。

例えば、犬の飼育環境は、犬小屋と共に、太陽の光を浴びて自由に動き回ることができる時間、もしくは、それが可能なスペースを確保しなければなりません。

また、オーナーと一緒に過ごす時間を持つことも定められており、一日中犬だけを放置することは禁じられています。
外での繋ぎ飼いは犬小屋が与えられているとみなされません。

ドイツの人は、違反者をみるとすぐ通報するので、外で繋ぎ飼いするような人は滅多にいません。」

 

―散歩はどのように行われていますか。

 

ウルリケさん、マキさん「散歩ではリードをちゃんとしている、決まりを守っている人が多いです。

また、散歩の時はリードで繋いでいなければなりません。

森ではオフリーシュで散歩されている方もいますが、稀な例外を除けば、皆さん他の犬を見かけたら直ぐにリーシュに繋ぎます。

反対に、犬は飼い主に呼ばれれば確実に戻ってくるという事です。」

 

ドイツ市街地にて

 

ウルリケさんファミリー お散歩の様子

 

ー市民はどのような意識を持っているのでしょうか。

 

ウルリケさん、マキさん「基本的には良識やモラルに委ねられています。

しかし、先ほどもお伝えしたように、ドイツでは違反者はすぐに通報されてしまいます。ですから違反する人は少ないと思います。

もちろん意識の低い人もいますが概して動物のことをよく理解し、良識をもって接していると感じます。」

 

問題を解決する仕組みがある

―野良犬など見かけることはありますか。

 

マキさん「ドイツでは、野良犬を見かけることはまずありません。

ティアハイムに、犬を自ら持ち込むことはあっても、野山に捨てることはしません。

マイクロチップが徹底されているため、もしも犬が迷子になったとしても、すぐに見つかります。」

 

―ヨーロッパではホリデーシーズンがありますが、長い間不在にする際にペットの放棄はないのでしょうか。

 

マキさん「残念ながら、ドイツにおいても意識の低い飼い主は少なからず存在しており、ホリデーシーズンが始まる前には、無数のペットが放棄され、動物のシェルターに移送されることは事実としてあります。
施設側が、犬を養子に出す際には飼い主に注意を促し、終生愛情を注ぐよう指導しているはずですが、ホリデーシーズンが来るとこのような人達はその忠告を都合よく忘れてしまうようです。

 

動物保護施設は、常にこれらの動物を受け入れ、また可能であれば新しい飼い主を見つけることもしています。

それでも新たな家が見つからず、シェルターに残ってしまうこともあります。」

 

―コロナウイルスの影響により、ペット事情にも何か影響はありましたか。

 

マキさん「このコロナウイルスの隔離生活中に、暇つぶしでペットを飼い始めた人が多く、そのためかどうか断言は出来ませんが、高速道路のサービスエリアにペットを捨てるケースが多発し始めています。今まではそのようなケースはありませんでした。
それによってティアハイムの収容頭数が増加傾向になりつつあり、残念に感じています。」

 

命と向き合う犬との暮らし

―ドイツの動物保護の体制をどうお考えですか。

 

ウルリケさん「私が問題視するのは、ドイツの殺処分をしないという体制です。本当にそれは良いことなのか、犬達にとってどうなのか。

犬の中には、養子に出せる状態になるのが不可能な犬や、怪我などが原因で障害を負った犬、その他様々な理由で一生をティアハイムの檻の中で過ごすことになる犬がいます。
それは彼らにとって本当に幸せなのでしょうか
社会的な圧力からNo Killを始めたアメリカの多くの施設が経験しているように、『ただ増え続ける犬の数を抑えるために、ろくな家庭調査もせずに闇雲に縁組をする』現状が、いずれドイツにも来るのではないかと懸念しています。」

 

―安楽死という選択肢についてはドイツではどう考えられていますか。

 

ウルリケさん「終生飼養という意味では、ドイツでは、治る見込みが無い病気の犬に延命治療を行うなど、苦しみながら生き続けるよう強いることは、むしろ虐待とみなす考え方が徐々にですが多くなって来ています。

つまり安楽死という選択が飼い主にあるという事です。

 

人それぞれ生死感が異なるので、一律に皆がそうしているとは言えませんが、『自身の犬を亡くす悲しみ』よりも『本当にこの子はこれで幸せなのか?辛くないのか?』と自問自答し、犬の幸せの為に安楽死という選択をする飼い主が増えて来ています。
日本では、安楽死という選択は一般的では無いようで、その点は、ドイツとの違いだと感じています。」

 

穴掘りを楽しむ愛犬マイロ

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2部構成でお届けする、海外情報レポート・ドイツ編。

アニドネの廣瀬が担当させていただきました。

 

動物の権利が尊重されるドイツでも、ペットの放棄などは少なからずあるという悲しい現実があること、一方でティアハイムというセーフティネットによって命が繋がれている現状を知り、動物福祉とはどうあるべきか今一度考えさせられました。

 

命の向き合い方についても、ドイツと日本で考え方の違いがあり、人間主体で考えるのではなく、動物主体となり動物たちの幸せをどう捉えるべきか、改めて考える機会となりました。

取材にご協力いただいたウルリケさん、マキさん、本当にありがとうございました!

 

※掲載の文章・写真はアニマル・ドネーションが許可を得て掲載しております。無断転載はお控えください。