ペット市場急成長中、韓国の動物福祉事情<海外情報レポート・韓国編①>
日本の動物福祉を考える上で、世界各国の動向や考え方を知ることは大きなヒントになると私たちは考えています。
海外のリアルな動物福祉事情をリサーチ情報と共にお伝えしているアニドネの海外情報レポート企画。
今回は日本の隣国、韓国です。
韓流ドラマ、韓流スター、韓国コスメ、料理などなど。
様々な分野で日本にブームを起こしている韓国ですが、動物たちの事情についてはあまり知られていない気がします。
2020年初め『韓国では2022年からペットの購入時に教育を受けることが義務化される』という記事を発見。
早速、事実を確認したく取材を申し込みました。
コロナが世の中を騒がせ始めた頃でしたが、取材をご快諾くださったのは、Mei D. Haさん(ペンネーム)。
韓国在住の韓国人で、大の愛猫家でいらっしゃいます。
アニドネスタッフとお仕事でご一緒したことがあり、そのご縁で記事執筆にご協力いただくことができました。
Profile
🐾 Mei D. Haさん(ペンネーム)🐾
韓国釜山生まれ、ソウル市在住 2001年に交換留学により初来日。 現在はメーカーの海外営業部署にて勤務。2019年までの約10年間、日本と韓国を行き来。 仕事で動物関連の情報を得ることになり、韓国・ 愛猫Meiちゃんの”伴侶人間”と称すほどの愛猫家。 ~message~
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韓国では「ペット」ではなく「伴侶動物」
―まず初めに、韓国でのペットの概念について教えてください。韓国ではペットのことは何と言うのでしょうか?
「韓国では、ペットという言葉は使っていません。人間と一緒に暮らしている動物に対しては、一般的に『伴侶動物』(英語ではCompanion Animal)と呼びます。
かつては、『愛玩動物』(英語でPet)という言葉を使っていましたが、2000年代に入ってから人間と共存するとの意味の『伴侶動物』という表現が適切ということから、『伴侶動物』という言葉が広く使用されるようになりました」
―韓国で飼育されているペットの頭数、ペット産業市場の規模はどれくらいですか?
「政府の公式資料によると、家庭で飼育されている犬として登録されている犬は2017年のデータで117万頭ほどです。
犬の飼育についての登録は日本同様に義務なのですが、実際に登録している犬は33.5%と推測されています。そのため実際には飼育されている犬は350万頭以上でしょうか。
猫に関しては、日本と同じく登録の義務がないのですが、韓国農林食品部によると2012年から5年間で飼育される猫の頭数は116万頭から233万頭へと、2倍以上に急増したとのデータがありました。
韓国のペット市場はまさに今が急成長中といえるようです。
ペットと暮らす人の数は1000万人を超えたと推定され、ペット産業関連市場規模も急増中です。
韓国産業研究員によると、ペット産業市場規模は2018年の時点で約2兆8,900億ウォン(約2,800憶円)。2020年には5兆8000億ウォン(約5,000億円)まで拡大されるというデータがありました」
■参考■
日本の犬の飼育頭数は約890万頭、猫の飼育頭数は約 965万頭と推定されています。
また市場規模は2017年で1兆5,422億円、2020年には1兆5,833億円と推定。
韓国の3~4倍の規模感と考えられます。
出典:一般社団法人ペットフード協会「平成30年全国犬猫実態調査」/株式会社矢野経済研究所
日本同様に存在する、生体販売の流通問題
―韓国でもペットショップで生体販売はありますか?
「日本と同様に、韓国もペットショップで生体販売をしている国です。
展示されているショーケースの様子やペットオークションなどのルートも日本とほぼ同じかと思います。
比較的に良い環境で動物を管理・繁殖させているブリーダーもいれば、いわゆる”犬工場”・”猫工場”と呼ばれる悪徳業者もいます。
ニュースやメディアでも取り上げられることもありましたが、底のない狭いケージで、一生、出産を繰り返す動物たちもいるそうです。
業者から直接消費者に販売するケースもあると思いますが、多くの動物たちは”ペットオークション”に出され、ペットショップに流れます」
―他にもペットを迎える方法はあるのでしょうか?
「韓国では、動物の購入ないし譲渡してもらうことを『分譲』と表現することが多いです。
ペットショップからの購入(分譲)のほかにも『家庭分譲』と呼ばれる販売経路があります。
『家庭分譲』は事業者登録をしていない個人が営利目的で動物を販売するルートです。
ペットショップは自治体への登録や研修が義務付けられているため、(実態は別として)最低限でも取り締まることが出来ると思いますが、この『家庭分譲』は事業者登録すらしていない個人が販売出来てしまうルートのため個人的には大変危惧しています。
違法行為であるのですが、人間に害を与えないことや、罪を証明することが難しく、事実上、ほとんど処罰されていない状況です」
『買わないで、養子縁組しよう』キャンペーン
―保護犬や保護猫など、韓国の保護動物事情を教えてください。
「数年前から動物保護団体・個人が運営するアニマル・シェルターが中心となって、SNSを中心に『#買わないで、養子縁組しよう』というキャンペンーンを継続して展開しています。
この『#買わないで、養子縁組しよう(#사지말고입양하세요)』 というキャッチフレーズは一般の人の認知もかなり進んできているように感じます。
誰がいつ始めたキャンペーンなのかは確認できませんでしたが、特定団体のキャンペーンではありません。
芸能人など社会的に影響力の大きい人たちも賛同して発信をしてくれています。
保健所や民間シェルターからペットを“養子縁組”した有名人も多くいるので、一般の人にとっても保護動物を迎えることがトレンドとなりつつあります」
―保護動物と出会える場所はどういったものがありますか?
「自治体がもつ保健所からの譲渡を受ける場合もあれば、民間のボランティア団体や個人のシェルターから迎えることになります。
欧米のように大きな施設を持っているところは少ないですが、インターネットに情報を掲載して新しい飼い主さんを探しているところが多いです」
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2部構成でお届けする、海外情報レポート・韓国編。
取材に応じてくれたHaさんに負けない大の愛猫家、アニドネリサーチャーの岡部が担当させていただきました。
今回、取材にあたり調べてみたところ、韓国は国土面積は日本の4分の1ほどしかないのですが(北海道より少し大きい程度)、人口は日本の4割にあたる5千万人にものぼります。
ペット市場の急成長、生体販売、流通の問題などの課題がある中で、世の中がだんだんと『買わないで、養子縁組をしよう』というムーブメントが起きているという状況は、日本と似ているような印象を受けました。
そんな中、韓国行政の動きは日本を一歩牽引するような動きが出ています。
次回後編では、期待が高まる、韓国行政の取り組みをお伝えします。
後編:期待高まる、韓国の動物福祉の未来<海外情報レポート・韓国編②>
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