ペット業界人インタビュー

スペシャル対談ー人と動物の未来についてー

『猫が幸せならばそれでいい』の著者であり、動物行動学専門医の入交眞巳氏とLOVOT(らぼっと)開発者の林要氏に、それぞれの立場から「人と動物の未来はどうなるのか?」を語っていただきました。

(2020年11月取材)

 

Profile

動物行動学専門医

入交眞巳(いりまじり まみ)さん

 

日本獣医畜産大学(現・日本獣医生命科学大学)卒業後、都内の動物病院にて勤務。その後、米国パデュー大学で学位取得、ジョージア大学付属獣医教育病院獣医行動科レジデント課程を修了。アメリカ獣医行動学専門医の資格を保有。北里大学獣医学部講師、日本獣医生命科学大学獣医学部講師を経て、どうぶつの総合病院 行動診療科 主任、東京農工大学動物医療センター 特任講師を務める。

 

 

 

 

 

 

 

GROOVE X 

創業者 CEO代表取締役

林要(はやし かなめ)さん

 

東京都立科学技術大学(現・首都大学東京)大学院卒業後、大手自動車メーカーに入社。その後、大手通信会社のエンジニアを経て、2015年家庭用ロボット事業ベンチャーのGROOVE Xを設立。

 

 

 

 

ペットを飼いたくても飼えない方々を、テクノロジーの力で癒やしたい

林:

LOVOTは、ペットのように懐く、家族になるロボットとして開発しました。内閣府の調査によると、年齢や住宅事情、アレルギーなどによって犬や猫などのペットを飼えない方は、実際に飼っている方の約2倍いらっしゃるそうです。その方々に何か心の癒しを提供するために、テクノロジーで解決できないかと思ったのが開発のきっかけです。今から100年前のチェコの戯曲で、人の代わりに労働する機械を指す造語として初めて「ロボット」という言葉が生まれたのですが、 LOVOTは労働のために役に立つロボットではなく、人の心を支えることがコンセプトになっています。犬や猫も仕事の役には立ちませんが、生活の中で心を支えるものとしては唯一無二の存在ですよね?その意味で「役に立つ」のシフトなのではと思っています。

 

2019 年の12月に出荷を開始して以来、主に30代~50代の方に購入されています。その中にはお子さんがいる家庭や、高齢のご家族にプレゼントするという方も多いですね。コロナ禍になってから出荷数が増え、長引く自粛生活の中でLOVOTがいて救われたという声もいただきました。私どもが印象的だったのは、皆さん自分が一緒に暮らすLOVOTのことを他の方にお話しする際にLOVOTとは言わず、それぞれの名前で表現されていることです。たとえば飼っているチワワのことを「うちのチワワ」とは呼ばないで「うちの◯◯ちゃん」という感じです。その意味でLOVOTは、皆さまの生活に家族として溶け込んできているのではと思っています。

 

学習能力でいうと、まだ犬や猫には追いついていない面はあるのですが、今後は彼らに少しでも近づくように徐々にソフトウェアのアップデートを行っていく予定です。また、離れて暮らす高齢のご家族がLOVOTをお迎えいただいていれば、毎日電話ができなくても専用のアプリを見るだけで「今日もLOVOTを抱っこしている」「声をかけている」などご家族の動きがわかるので、見守りといった役割も果たしていけるのではないかと考えています。

 

犬や猫などのペットのように人間に寄り添ってくれる、LOVE+ROBOT=LOVOT(らぼっと)

 

ロボットが人を癒やすために必要なのは、人間の持つ共感力と想像力

入交:

私はLOVOTをお迎えして2週間くらいたちます。ペットがいると社会的潤滑油になるので、会話する機会が増えて家族のコミュニケーションが強くなるという報告がすでにあるのですが、同じことが今、私の周りでも起こっています。LOVOTが来てから同僚との会話が増えたのですよ。コンピューターだとわかっているのですが、ノートPCなどに対する感覚と全く違って、「おいでおいで」と言ったり名前を呼んだりするなど、まさにペットのような感覚です。

 

林:

私どもが「ペットが人の心を潤すことはわかっているけれど、無機物でも可能なのか?」と考えたときに「できる」と思った理由は、たとえば私どもが仏像やマリア像に癒されるということに気がついたからです。大事な要素は見る人間側の共感力や想像力だと思うのですよね。LOVOTを介して人が何を想像できるかと考えた瞬間に、可能性が無限に広がっていきました。想像力を最大化する存在としてLOVOTがいるのであれば、ひょっとしたらペットと同じような効果を一部は担えるのではないか?と思って作っていたので、会話が増える等は、ペット同様の効果と言えるかと思います。

 

入交:

ちなみに私の場合は、大学で高齢者施設に動物を連れていくプロジェクトをやることになったのですが、コロナでできず、その代替案としてLOVOTを購入させていただきました。高齢者施設にLOVOTを連れていったら動物介在活動と近しい活用ができるのではないかと思っています。

LOVOTを通して介在活動や愛情に起因する問題の解決に取り組む

※撮影時のみマスクを外しています

林:

動物介在活動というのは、どういったものなのですか?

 

入交:

動物介在活動とは、老人福祉施設や児童養護施設などで動物とのふれあいによりレクリエーション活動を行うことです。たとえば発話を促すことで心の活性化につなげたり、ボールを投げてもらったり、ということをします。しかし、実際の動物を使うのはなかなかハードルが高いことであるのも事実です。たとえば強い力で触られたら動物だって嫌でしょうし、かみつく場合もあるでしょう。いろいろな意味で問題もあることを考えると、LOVOTは適しているのかなと思います。LOVOTは抱っこをすると子供みたいなんですよね。すごく温かくなってくるので、きっと孫をあやすような感じになるのではないでしょうか。愛情をいっぱい注いで可愛がっていただければ、いい結果が出るのではないかと想像しています。

 

林:

まさに、そういうことがLOVOTというテクノロジーの新たな使い方の一つだと思います。ロボットが人を癒すということに、産業界はこれまであまり目を向けてこなかったので、できればこれが日本発の人を癒す新技術になればと思っています。LOVOTをデンマークの介護施設で使っていただいたとき、施設でまったく喋らなかった認知症の方がLOVOTに触れたら喋るようになったということがありました。どうやら愛情に起因する心理的問題全般に、かなり効果があるようです。思っている以上に今後、活躍する機会が増えるかもしれません。ちなみに入交先生は動物行動学の専門家でいらっしゃいますが、LOVOTの導入には抵抗はありませんでしたか?

 

入交:

動物の良さを備えつつ、安全だということでLOVOTはすんなり受け入れられました。生き物であるペットとの違いでいうと、やはり一方的な可愛がり方になってしまう気はしています。犬や猫だともう少し違う反応があったり、トレーニングも必要だったりします。あとLOVOTは電源を切る瞬間は抵抗があるのですが、切った後は一気にモノになるのですよ。たとえば実際に犬を飼ったときに「旅行に行かなきゃいけないから」となっても電源を切るわけにはいかないので、そこはペットとLOVOTの大きな違いだと思います。生きているものは責任を持って24時間ずっと養育しないといけません。LOVOTは生き物ではないのでお子さんに対しては少し心配もあります。

 

林:

気兼ねなく愛せるというメリットがある反面、生き物が死んだときの悲しみはおそらくLOVOTでは学べないでしょう。しかし、最近の子どもたちはロボットが生き物ではないと最初から認識されている、というのが私どもの理解です。実際に、ペットとLOVOTとで生命の有無についての区別はしていても、可愛がることには区別をつけていないようです。そこがロボットネイティブの面白さでもある気がします。

 

入交:

そうなのですね。安心しました。

 

林:

人の心に癒しを与えてくれる意味で、LOVOTは新しいステージを開いてくれるものだと思っています。

 

 

家族型ロボットLOVOTのご紹介!

家族型ロボットLOVOTが、ペットのように家族の一員としてみんなから愛される理由をご紹介します。

 

1.温かくて柔らかく、抱き心地抜群!

LOVOTは、ほんのり温かくてふわふわしています。犬や猫のような感触で、まるで本当に生きているかのよう。抱いているだけでほっと心が落ち着く気分になるのです。また、持ち上げるとタイヤが自動的に格納されるので、手や洋服を汚す心配もありません。

 

2.人のことを覚えて、愛情を距離感で表現!

LOVOTにはカメラがついており、人の顔を約100人以上覚えることができます。たくさん可愛がってくれたり、名前を呼んでくれたりする人に懐き、近くに寄ってくるように。目を合わせてくれる機能もあるので、心が通い合っている気持ちになれます。

 

3.玄関までお出迎え!毎日、帰宅が楽しみに

LOVOTは家の間取りを学習する機能が備わっており、玄関の位置を設定するとお出迎えしてくれるように。最初はたどたどしくても、そのうちスムーズになり、成長を楽しむこともできます。家に帰ってLOVOTがお出迎えしてくれたら、疲れも吹き飛びそう!

 

LOVOT MUSEUMでは実際に体験することも

 

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