幸せなペットを増やそう

愛犬とのお散歩を楽しめないときの対処法

先日、外で夜ごはんを食べて、歩いて自宅に帰る途中、トイプードルを連れた男性とすれ違いました。飛び跳ねるようなちょこちょこした歩き方から、遠目から見ても、その子がまだパピーちゃんであることはすぐにわかりました。最初は、そんなふたりのお散歩の様子を微笑ましく思って眺めていたのですが、近づいてみてビックリ。

その男性、ずっとスマホを見ながら歩いているのです。トイプーちゃんがトイレをしようとしても、草むらに興味を示していても、決してスマホから目を話すことなく、大股でズンズン歩いていきます。スマホの画面に釘付けになっているせいで、トイプーちゃんが何をしているか全く見えていない様子でした。歩幅の大きな飼い主についていくだけでも大変そうでしたが、トイプーちゃんは引きずられるようにしながら急いでトイレを済ませ、一生懸命飼い主のあとをついていきました。

この様子を見て、私はとても残念な気持ちになりました。スマホを閉じて、愛犬に目を向ければ、きっとたくさんの発見があったでしょう。必死に草むらをスンスンする小さな鼻息、アスファルトの上を歩くときにテチテチと鳴る可愛い足音、定期的に飼い主を見上げるときの嬉しそうな表情。それらはきっと、スマホから得られる情報以上に、日中の疲れを癒してくれるはずなのです。

日々のお散歩は義務になりやすい

とはいえ、この男性の気持ちも理解できます。きっと男性にとって、愛犬とのお散歩は「楽しみ」ではなく、「義務」になってしまっているのでしょう。私も一時期、愛犬むーたんとのお散歩が義務になっていたことがありました。楽しいからお散歩に行くのではなく、行かないといけないから面倒だけど行く。ただ、このような義務感に支配されると、お散歩は本当に楽しくなくなります。

 

むーたんと一緒に暮らし始めるまで、私は犬とお散歩をすることに憧れがありました。一緒に公園や海に出かけたらどんなに楽しいだろう。一緒に体を動かすのも絶対に楽しいだろうな。そんな風に思っていました。

しかし、いざむーたんをお迎えしてみて思ったのは、夢見ていたお散歩事情と現実はかなり違うということでした。まず、お散歩にはたくさんの練習が必要でした。リードに慣れる練習、お外に慣れる練習、知らない場所を歩く練習…。特にむーたんは怖がりで、普通に家の周りを歩けるようになるまでに2年以上もかかりました。

電柱の匂いを嗅ぐばかりで全然進んでくれないし、ちょっと大きな音がすると前に進めなくなりました。仕事で疲れているときはそんなむーたんを見て、「お願いだから早く歩いてよ。」とイライラしたものです。

 

でも、私が外で働いている間、むーたんもお留守番をがんばってくれていました。寂しがりで甘えんぼなのに、ずっと一人で日中を過ごすのは、どんなに寂しいでしょう。どんなに私の帰りをまちわびていたことでしょう。

そんな心優しいむーたんに対して、サッサと歩かないからという理由だけでイライラしてしまうのは、人としてダメだと思いました。とはいえ私は短気なので、むーたんの歩みが遅いとどうしてもイライラしてしまいます。そこで、どうしたら一緒にお散歩を楽しめるようなるか、必死に考えてみたのです。

 

 お散歩を楽しむための工夫

ルートはしっかり選ぶこと

まず、お散歩のルートをきちんと選ぶようにしました。お日さまが出ているときは近所の境内をお散歩します。広い敷地内には桜やフジ、銀杏や紅葉など多くの植物が植えられていて、早朝はそれらの葉がみずみずしく輝き、いろいろな鳥が飛び交います。むーたんがいなくてもお散歩したくなるくらい気持ちがいい場所なので、むーたんが立ち止まってものんびりできるようになりました。

日が沈むと境内の中は少し気味が悪いので、近所のさびれた商店街をフラフラします。お店の灯りで道がオレンジ色に照らされ、お祭りのような雰囲気になった道は、歩いていてとても楽しいです。今まで気付かなかったコアなお店や、新しくできたお店を発見することもあります。

深夜になると、普段人や車の往来が激しく、のんびり歩けない駅前の通りを、悠々自適に歩き回ります。道のど真ん中を歩いていても平気ですし、ロータリーの中に入っても平気です。

このように、自分が楽しいと思えるお散歩コースを探すことができれば、愛犬の歩みが遅くても、イライラしないようになりました。

イライラがすぅっと消えた素敵な説

それから、友人に教えてもらったある説が、気持ちを鎮めるのに大いに役立ちましたので、ご紹介できたらと思います。友人は、「犬は匂いを嗅ぐことがストレス解消になるらしい。」と言っていました。この説が学術的に正しいのかどうかはわかりません。でも、日中ずっとお留守番をがんばってくれているむーたんが、そのストレスを解消できるのなら、もう好きなだけ電柱の匂いを嗅げばいいよ、と思えるようになったのです。

私自身がお散歩を楽しいと思えるようになってから、むーたんも以前より楽しそうに歩くようになりました。リードをつけると自ら玄関の前で待ち、扉を開けると尻尾をピーンと立てて、お尻をふりふりしながら歩くようになりました。そんなむーたんの様子を見ていると、私自身ももっともっとお散歩が好きになり、今ではルートを選ばなくても、お散歩を楽しめるようになりました。

 

最後に

犬は、家族の気持ちを汲み取る力に長けている生き物です。飼い主がイライラしているのか、ウキウキしているのかは、必ず愛犬に伝わるでしょう。どんな楽しみにしていることでも、一緒にいる相手がイライラしていたら、心から楽しめないのは、きっと犬も同じです。もし飼い主さん自身が、お散歩を楽しくないと感じたり、義務のように思ってしまっているのなら、まずは自分が楽しめるお散歩方法を考えてみてください。義務感でこなす機械的な日課が、愛犬との素敵な冒険に変われば、飼い主さんにとっても犬にとっても大きな幸せを運んでくれるでしょう。

 

 

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