最新活動レポート

【日本介助犬協会】付添犬が日本で初めて法廷に同伴!

つい先月、虐待を受けた子どもが裁判で証言する際の精神的な負担を和らげるために日本で初めて「付添犬」の法廷への同伴が許可されたことがYahoo!のトップニュースとして掲載されました。

子ども被害証言に付き添い犬同伴 虐待事件公判で異例許可

 

「付添犬」と言うキーワードがツイッターのトレンドにもなるなど大きな話題を呼びました。

 

この「付添犬」の育成に取り組んでいるのはアニドネの認定団体でもあるJAHAさんと日本介助犬協会さんの2団体です。

付添犬認証委員会で定めた基準に基づき、認証した犬のみが付添犬として活動できます。現在はこの2団体が提携しています。

 

日本介助犬協会さんは前回のアニドネブログでも紹介したJAHAさんに続き、付添犬の取り組みをスタートさせました。

 

アニドネでは、日本介助犬協会の訓練士であり今回実際に付添犬と一緒に法廷にも同伴された桑原さんにお話を伺いました。


訓練士の桑原さんと付添犬ハッシュ
今回は一部オンラインで取材を行いました


「付添犬」の育成・普及という新しいチャレンジを

―まず初めに、日本介助犬協会さんが付添犬に取り組まれた経緯について教えてください。

 

「アメリカには、コートハウスファシリティドッグという役割をする犬がいます。

虐待や性被害にあった子どもは、司法関係者の前で被害状況などを証言したり、司法面接で話をする必要があります。

被害に合った子どもが安心して話ができるよう、精神的な負担を軽減するために手助けをする犬のことです。

コートハウスファシリティドッグはその法廷に付き添うために特別な訓練を受けた犬です。

 

日本でも、2014年から児童精神科医、弁護士、獣医師、研究者の方が中心となり、アメリカのCourthouse Dogs® Foundation(コートハウス・ファシリティ・ドッグの普及啓発を行う組織)と連携し、日本の現状に合った付添犬制度の確立を目指し活動を進めてきました。

現在、神奈川県にあるNPO団体「NPO法人神奈川子ども支援センターつなっぐ」内に付添犬認証委員会が設置され、付添犬とハンドラーの認証と現場への派遣事業を行っています。

つなっぐさんは、付添犬の導入の他にもワンストップセンターとして被虐待児の多様な支援事業を行っているNPO法人です。

そのつなっぐさんから日本介助犬協会に付添犬派遣に向けた協力依頼がありました。」

 

―日本介助犬協会さんでは、すでに動物介在介入として病院へPR犬を連れて子どもたちを訪問する動物介在活動を行ったり、聖マリアンナ医科大学病院では勤務犬モリスが子どもたちへ動物介在療法を行うなど子どもたちへの支援を積極的に行っていますよね。


日本介助犬協会さんの動物介在活動



「はい。さらに今年は介助犬の早期引退犬でもあるハチが、付添犬認証委員会のメンバーの一人でもある児童精神科医の新井先生のクリニック「楓の丘こどもと女性のクリニック」でハンドラーの看護師さんとともに認定を受け、実際にクリニックで女性や子どもの心のサポートを開始しています。

虐待を受けた子どもたちがハチと触れ合うことで、すでに良い影響が得られていると新井先生よりメッセージもいただいていました。」

楓の丘こどもと女性のクリニックで活躍するハチ


「つなっぐさんが支援している被害者であるお子さんには、以前よりJAHA(公益社団法人日本動物病院協会)さんの一頭の犬が付き添いをすでに開始しており、そのお子さんが捜査機関から事情聴取を受ける場に寄り添い力になっていました。

そのお子さんが裁判に進むこととなり、より継続して安定的に犬達によるサポートが必要となったことからJAHAさんに続いて日本介助犬協会にも声がかかりました。

お子さんにすでに付き添っていたのはJAHAさんのフランちゃんというゴールデンレトリバーとそのハンドラーさんですが、そのフランちゃんから日本介助犬協会の犬であるハッシュにもバトンが引き継がれました。何回かお子さんとの面会を経て、当日の裁判にも付き添うこととなりました。」

 

「付添犬」ハッシュの活動がトップ記事に

―ハッシュが付添犬として実際の裁判に同行したことは日本で初めての事例だとネットニュースでも話題となりましたね。

ハッシュについて教えていただけますか。

 

「裁判に同行したハッシュは6歳のゴールデンレトリバーの男の子です。

ハッシュはもともと盲導犬協会さんから日本介助犬協会にやってきました。」

今回日本で初めて法廷に同伴したハッシュ


「ハッシュは介助犬を目指して訓練していましたが、少しこだわりが強い性格や家の中での排泄が難しいところがあり、キャリアチェンジをしました。

介助犬のトレーニングを積んでいたために、介助犬の啓発をするPR犬として大勢の前に出てデモンストレーションすることも出来、動物介在活動として子どもたちと触れ合うことも長年してきたので、初めての場所でも物怖じせず、子どもと触れ合うことに関してもベテランです。

とにかく人に撫でられることが大好きなんです。

 

『付添犬』は言葉の通りお子さんにただ『付き添う』ことをします。

ただ付き添うだけというと簡単に聞こえますが、裁判所というのは本来は犬は入らないような場所ですが、特殊な場所や環境であってもハンドラーの指示に従い、いつもと変わらず普段通り過ごせる犬である必要があります。

どんな場所でも緊張することなく、マイペースなハッシュの明るい性格はまさに付添犬に必要な特性を備えていると感じました。」

 

―実際に司法の場で子どもに犬が付き添うことで得られるメリットはたくさんありそうですね

 

これは弁護士さんから聞いた話ですが、被害に合った子どもはただでさえ大きなショックを受けています。そんな中さらに司法の場という特殊な場所で自身の辛い体験について詳しく話さないといけないことは、精神的にも大きなストレスがかかります。また自分の証言により裁判の結果が変わるかも知れないというプレッシャーや、伝えたい言葉をきちんと話せるのかという緊張感でいっぱいになります。そんな時にふと足元を見た時に、犬が寝そべっている。それは子どもにとって非常に大きな力になるとおっしゃっていました。

 

実際の裁判当日の様子を差し支えない程度に教えていただけますか?

 

「当日はハッシュの他にもう一頭控え室に付き添い犬を待機させていました。

動物なので体調のことなど当日は何があるかわからず万全の体制でサポートに入るためです。

ハッシュには2本のリードをつなぎ、一本はハンドラーの私が持ち、もう一本はお子さんに持ってもらいました。

ハッシュはただお子さんの足元によりそっていました。どこでも普段通りリラックスしてくれるのが特技ですが、当日もお子さんの足元でぐっすり寝はじめて。時々手足をバタバタさせたり寝言を言ったんです。

裁判は大人でも緊張してしまうような緊迫した空気が流れていましたが、そんな特殊な雰囲気の中でもいつも通りリラックスして行動するハッシュがいるだけで張り詰めている空気がふっと柔らかくなっていくのが分かりました。」

 

ー犬が持つ力は本当にすごいですが、犬の持つ力の中でも付添犬の活動に特に合っていると思うところはどんなところですか?

 

被害者の方を前にしてもなんの先入観を持たず、気を使ったり特別な対応をしないところです。いつも通り尻尾を振って友好的に振る舞い、寄り添うというのはそれは人間には出来ないことだと思います。

 

虐待や性被害を受けた子どもたちに付添犬の力で安心を

桑原さんご自身は今回、付添犬の活動を実際行ってどう感じましたか?

 

「子どもの虐待や性被害について今まで実際に身近に関わったことはありませんでした。

しかし、日本では今回のように裁判に進むようなケース自体が非常に少なく、ほとんどは明るみに出てこないことを知りました。そして裁判に進むことが出来たとしても想像を絶するような負担が子どもたちにかかるのだと思いました。

コートハウスファシリティドッグが活躍しているアメリカでは裁判所も子どものためにキャラクターの絵が飾ってあったりと子どもが少しでも安心して証言ができるような配慮がされていますが、日本ではまだそのような取り組みからは程遠いと感じました。

そんな中で犬が子どもに寄り添い精神的な負担を減らすことができるのは非常に大きな意味があると思いました。」



今後の「付添犬」の活動についてどのような目標がございますか

 

「今後はつなっぐさんより付添犬の依頼があった時にいつでも対応できるよう安定的に活動を継続できる体制を整えたいと考えています。現在すでに現場で活躍したハッシュ以外に、付添犬としての可能性を評価し育成している犬が3頭います。キース、フランク、ナビという名前の犬で、これから様々な経験を積ませながら適性を見ていく予定です。」

キース


フランク
ナビ

アニドネでは、日本介助犬協会さんの付添犬の活動を今後とも支援していけたらと考えています。

 

「ありがとうございます。付添犬を育成するには一頭につき150万円〜250万円程度かかります。継続的に活動を行うためにはさらにそこから医療費や活動費なども必要となります。

新型コロナウイルスによる影響でイベントや講演会はほぼ無くなり大幅な収入減となる中、主たる事業である介助犬育成とは異なるこの活動に挑戦するためには、現状の寄付収入で賄うことは困難な状況です。付添犬という新しいチャレンジを実現するためにも、ぜひ応援をよろしくお願いいたします。」

 

今回のインタビューには、なんと付添犬ハッシュくんも同席してくれました。

キラキラした表情で、寄り添ってくれるハッシュくんに同席したスタッフも、オンラインでインタビューに参加したスタッフも皆一瞬で心を奪われました。


インタビュー中、アニドネスタッフに優しく寄り添ってくれたハッシュくん


 

*********************************

◆「日本介助犬協会」さんのご紹介・ご寄付のページはこちらからご覧いただけます。

※掲載の文章・写真はアニマル・ドネーションが許可を得て掲載しております。無断転載はお控えください。

*********************************