さぬき愛護動物愛護センター「しっぽの森」
アニマル・ドネーションでは、動物のためにがんばる行政施設への取材を行っています。
行政の施設というのは、いわゆる「保健所」や「動物愛護センター」と呼ばれている施設です。都道府県や市町村の予算によって運営管理されています。
今回は、香川県にある「さぬき動物愛護センター”しっぽの森”」」にお話しを伺いました。


施設概要
▼さぬき動物愛護センター しっぽの森(愛称)
所 在 地 :〒761‐0446 香川県高松市東植田町1202‐1(香川県公渕森林公園隣接地)
開 設:平成31年3月10日
敷地面積:2,743㎡(駐車場は含まない)
業務内容:動物愛護管理に関する普及啓発
犬や猫の譲渡の推進
災害時の動物対策の推進
人と動物に共通する感染症対策の推進
▼さぬき動物愛護センター所長 有岡彰則さん。令和2年4月から当センター所長として勤務。
しっぽの森は、全国でも珍しい主に「譲渡と普及啓発」に特化した施設です。
搬入される犬や猫は、県内5か所の保健所に収容されている中で譲渡適性があると判断された動物たちです。
なぜこのような施設が必要であるのか、お伺いしました。
→「香川県は温暖な気候に加え、無責任な餌やり行為も多いことから、保健所での犬猫の収容数が多いものの、飼い主への返還や譲渡が少ないため、犬猫の殺処分数が多い状況が続いていました。こうした状況を踏まえ、人と動物との調和のとれた共生社会を実現するための拠点施設として「さぬき動物愛護センター“しっぽの森”」を香川県と高松市が共同で整備し、動物愛護管理の普及啓発や犬猫の譲渡の推進をはじめ、人と動物に共通する感染症対策や災害時の動物対策に取り組んでいます。」
保護犬猫は野犬・野良猫が圧倒的
香川県で保健所に収容される犬猫は、保健所による終生飼養(=最後まで面倒を見ること)の周知啓発の効果もあり、飼い主からの引き取りはほとんどありません。このため、所有者不明の野犬や野良猫が全体の90%を超えています。
【保護犬猫たちの保護理由の割合】
犬・・・飼い主が分からない又は飼い主のいない犬(いわゆる野犬):97%
飼い主からの引き取り:2%
負傷動物:1%
猫・・・飼い主が分からない又は飼い主のいない猫(いわゆる野良猫):83%
飼い主からの引き取り:5%
負傷動物:12%
最近の傾向では、令和2年度は令和元年度に比べて、収容数が犬で約400頭、猫で約150匹、それぞれ減少したそうです。そうした状況に加えて、新型コロナウィルス感染症対策のため、譲渡前講習・譲渡会を個別対応や人数制限をした中で実施しているにもかかわらず、譲渡数はほぼ横ばいで推移しているといいます。
しっぽの森の役割が、短い期間で大きく浸透していることがわかります。


”しっぽの森”では動物にも飼い主にも手厚い取り組み
保護期間中は、獣医師による健康管理や、ケアスタッフによる人馴れトレーニングとシャンプーなどのトリミングが行われます。また、定期的に訓練士が来て、ケアスタッフへの指導を通じて成犬に対するしつけトレーニングも行っているといいます。


今年度(令和3年度)の新しい取り組みとしては、これまでの犬のしつけ方教室や猫の飼い方教室に加えて、譲渡動物の同窓会を開催し、飼い主さん同士の交流や情報共有が活性化するようにしています。


加えて、校外学習の受入や出前教室のほか、夏休みには動物愛護親子教室の開催など、子どものころから命の大切さや思いやりの心を育む啓発活動も積極的に行っています。
その他にも、成犬や成猫のトライアルや収容動物の馴化を進めるためのボランティアサポーター制度を導入し、一層の適正譲渡を進めているとのことです。



また、香川県においては、譲渡ボランティアさんを通じての犬猫の譲渡が約8割を占めています。譲渡ボランティアさんが飼養管理中のセンターから引き出した犬猫の治療費の一部を補助したり、譲渡会の場を提供したり、譲渡ボランティアさんと協働しながら譲渡を進めているといいます。

そのほか、センター所長の有岡さんにしっぽの森について詳しくお伺いしました。
―職員様の内訳や人数を教えてください。
「現在職員は21名で、所長(事務職)・次長(獣医師)2名・獣医師4名・事務職3名と、動物の世話やしつけなどを行うケアスタッフ9名、清掃スタッフ2名ががおります。」
―保護犬猫の平均滞在期間を教えてください。
「一概には言えませんが、子犬や子猫については比較的早期に譲渡されていきますが、成犬や成猫については長期に滞在する傾向にあります。」
―新しい飼い主さんへ望むことはありますか?譲渡条件などあれば教えてください。
「新しい飼い主さんには、動物に対する正しい知識を身に付けて、愛情と責任を持って最後まで飼っていただきたいと思います。
譲渡の条件は、住居形態(集合住宅や賃貸の場合はペット可必須)、65歳以上の方には後見人同意書、家族全員の同意やぜんそく・アレルギーの人がいないか、ペットの世話に時間と手間や、餌代や病気の治療等に費用がかかることの認識、不妊去勢手術への同意など10項目余りとなっています。」
―譲渡希望者を断る場合はありますか?その理由を教えてください。
「譲渡希望者には、譲渡前講習を受けていただいた上で譲渡希望の動物とのマッチング(相性確認)を行っています。譲渡を受ける動物を家族の一員として飼養していただく意思が確認できなければ譲渡を受けることをご遠慮いただいています。」
―最後に、動物福祉に興味のある方々に向けてメッセージをお願いいたします。
「さぬき動物愛護センター“しっぽの森”は、開所して3年目を迎えました。これからも、人と動物が共に幸せに暮らせる社会を実現するため、適正譲渡を推進するとともに、イベントなどを通じて、動物の適正飼養や適切な関わり方について意識の向上を図っていきたいと思っています。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
新型コロナウィルス感染防止のため、今回は現地に訪問せず、インタビュー形式でお伺いさせていただきました。
保護犬猫たちへのきめ細やかな飼養管理と動物に対する思いが、譲渡率の向上という結果に結びついているのだと感じました。また、犬や猫を責任を持って適正に飼養するためのイベントの開催や命の大切さを学ぶ子ども向けの愛護教室にも取り組んでいることが伝わりました。
香川県の今後の保護事情に大きく期待しています。
※掲載の文章・写真はアニマル・ドネーションが許可を得て掲載しております。無断転載はお控えください。