行政施設レポート

ANIMAMALL(アニマモール)かわさき 【第3回 かわさき犬・猫愛護ボランティア】

アニマル・ドネーションでは、動物のためにがんばる行政施設への取材を行っています。

2019年2月に新しくできた神奈川県川崎市の行政施設である「動物愛護センター ANIMAMALL(アニマモール)かわさき」。第1回のレポートでは、いかに開かれた施設であるか、その工夫をレポートしました。第2回では、小学生向けの「いのち・MIRAI教室」にアニドネスタッフも参加させていただきました。

最後となる今回は、ANIMAMALLかわさきの運営の中でも、大きな特徴のひとつでもあるボランティアさんとの協働活動についてレポートします。(取材:2020/2)

 

ANIMAMALL(アニマモール)かわさき 【第1回 施設レポート】

ANIMAMALL(アニマモール)かわさき 【第2回 いのち・MIRAI教室】

 

“人の福祉”と“動物の福祉”を共に考え問題解決をしていく

ANIMAMALLかわさきには148名の「かわさき犬・猫愛護ボランティア」がおり、普段の自発的な活動のほか、市のイベント等に協力しています。そのうち78名がセンターの業務支援ボランティアとして、7つのグループに分かれて支援活動をしています。

 

今回は、長くボランティアに携わっておられる、渡辺昭代さん(写真左)、森茂樹さん(写真右)にお話を伺いました。

 

職員さんとも常に情報共有をしながらボランティア組織を運用しているおふたり

 

―近年、動物愛護センターには高齢者が飼えなくなったペットが増えているという話をよく耳にします。

 

渡辺昭代さんにお答えいただきました。

 

「超高齢化社会といわれる現代。動物と暮らす一人暮らしの高齢者も増える中、自身の入院や不測の事態に備えてペットの処遇を事前に考える人はそれほど多くはありません。飼い主の突然の不在により飼育困難の形であったとしても、法的な影響で本人か身内の同意がない限り他人が手を出すことはできない事情もあります。

またケアマネージャーが人間の利用者を支援する上で、多くの介護職に共通して『ペットで困った経験がある』という問題が起こっています。

 

おそらく、飼い主の高齢化に伴うペットの問題は今後増加してきてしまう。何が問題なのだろうか?改善できる部分はないのだろうか?という思いから、かわさき犬・猫愛護ボランティアの有志が『かわさき高齢者とペットの問題研究会』を設立しました。

独居・高齢世帯のペット飼育に関するアドバイスや、動物福祉に基づいたペットとの暮らしの提言、地域包括センターとの連携、行政と協働した活動を主に行っています」

 

―どうやって問題解決をしていくのでしょうか?

 

森茂樹さんにお答えいただきました。

 

「動物を可愛がるだけではなく、いかに幸せに暮らせるのかを考える必要があり、2017年に犬猫に関してのリーフレット『残されるペットのためにあなたができる事』を作成し、飼い主が最後まで飼育責任を持つよう啓発を促進しています。

“人の福祉”と“動物の福祉”は別々に語られていることが多く、連携がうまく取れないという現状があります。相互が協力しあい、対処することで、問題解決の一歩になると考えています。お互いの知識を共有することで、問題点からステップアップができます。様々な経験を通して、相手の立場になって考えることが大切であると改めて確信しました。

 

分かりやすく例えてみると、捨てられる犬や猫たちを水道から流れる水とし、受け取る器を殺処分をなくす活動とした場合、流れる水を受け取る器を大きくしたとしても限りがあるだろう。まずは、水が流れないよう、蛇口を閉める。これこそが、根本的な問題の解決になるのではないでしょうか」

 

―以前からこのような行政との協働をしていたのですか?

 

かわさき犬・猫愛護ボランティアの立ち上げ当初から活動をしている森さん。

 

「今では、行政と協働しているボランティア活動ですが、川崎でも過去には行政とボランティアが対峙するという時代があったんですよ。しかし、現在のような協働が出来上がった背景には、密なコミュニケーションを図ってきたからなんです。お互いが何をしたいのか?何をできるのか?一方的な立場ではなく相手に寄り添いながら話すことで、より良い関係性を築いてきたんです」

 

 

かわさき犬・猫愛護ボランティア設置要綱

*川崎市動物の愛護及び管理に関する条例第18条に規定に基づき、かわさき犬・猫愛護ボランティアが設置されている

動物だけでなく様々な分野の方と協力して解決したい

―今後のビジョンをお聞かせください。

 

「新たに起こる問題点に、様々な面からサポートをし、引き続き様々な分野の方と協力し解決していきたいと思っています。さらに今までの事例を多くの方に伝えていける仕組みを作っていきたいと考えています。この仕組みを他エリア、日本全体で共有できれば、より高齢者とペットの問題解決になると思っています。

 

いのち・MIRAI教室で子供たちに優しく話しかける渡辺昭代さん

 

欧米では、生活の一部として動物たちと暮らしているが、日本では、まだまだペット、ふれあいという認識がある。

“動物を助ける”ということは、“人を助ける”ことにつながると考えています。

最近では子ども達に『命の教室』を通じて命の大切さを学ぶ、教育的取り組みの必要性が認識されつつあります。こういった取り組みをもっと広げていきたいですし、子ども達が他者への思いやりや自分を大切にする心を育んでいける環境を増やしていきたいと思っています」

 

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ANIMAMALL(アニマモール)かわさき の3回のレポートを読んでいただきありがとうございました。

ニュースで聞こえてくる「ペットの問題」は、動物愛護という観点から報道されることが多く「かわいそうに、ひどい飼い主!」といった受け止め方が多いように感じます。

こういった報道の背景で、様々な問題が解決を待っているのだと気づかされ、アニドネスタッフとしてとても勉強になりました。

“動物と生きるということ”は責任が伴うことです。共に生きることは、愛情と責任を持つことが大切なのだと改めて感じました。一人ひとりが今できることを、少しでも考えられたらいいのではないかと思いました。

 

ANIMAMALL(アニマモール)かわさき 【第1回 施設レポート】

ANIMAMALL(アニマモール)かわさき 【第2回 いのち・MIRAI教室】

 

 

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