行政施設レポート

新潟県動物愛護センター 見学レポート

アニマル・ドネーションでは、
行政施設への取材を積極的に行っています。
行政の施設というのは、いわゆる「保健所」や「動物愛護センター」と
呼ばれている施設です。

 

都道府県や市町村の予算によって運営管理されています。
少し前までは、動物を引き取り処分する場であった行政の施設が、
ここ数年の間に徐々に「新しい飼い主を探す場」に変わってきました。

 

ペットは家族、という風潮と共に、処分することが解決策ではないと
行政全体で考えていく流れが出来てきたのでしょう。

場所や施設ごとに、ずいぶんと状況は違いますが、
大切な命を守ろうと頑張る行政も増えてきました。

 

今回は、新潟県動物愛護センターを取材してきました。(取材:2019/5)

施設概要

新潟県動物愛護センター

所在地:新潟県長岡市関原町1丁目2663-6

 

新潟県動物愛護センター センター長 白井和也さんにお話を伺いました。

 

人と動物のふれあい拠点になるような、県民参加型のセンター

ー新潟県ではどのような活動を行っているか教えてください。

 

「日本海に沿って縦に広がる新潟県は大きく4つに分かれていて、上越・中越・下越さらに佐渡があります。新潟県動物愛護センターを中心に、下越・上越・佐渡に動物達の保護・譲渡・返還ができる保護管理センターを設け、県民のみなさんに動物愛護や適正飼育の啓発に取り組んでいます。

新潟県動物愛護センターは、県央・中越・魚沼の3つの動物保護管理センターを統合して開所しました。

 

いつでも譲渡の犬猫を見学してもらえるよう、休館日以外は毎日見学や譲渡が可能です。また、1頭ごとにニックネームをつけて募集をしているので、里親希望の方は名前で問い合わせをしてきてくれます。親しみのもてるHPにするよう心がけ、県庁HPでのアクセスランキングではいつも上位です」

 

 

 

ー新しい施設のようですが、いつオープンされたのですか?

 

「この施設は平成244月にオープンしました。PFI法に基づいた整備を行い、人と動物のふれあい拠点施設になるように県民参加型の施設として整備しました。

譲渡対象の犬や猫の見学が自由にでき、動物たちにストレスのかからない保護施設としての衛生管理や過ごし方も工夫しています。館内に愛犬と一緒に入館できるのも、当センターの特徴だと思います。先住犬とのマッチングは家族として迎える時の重要なポイントになるからです。芝生広場で愛犬と一緒に遊ぶ方もいます。

 

気になる犬猫がいた時、実際にマッチング体験ができる『ふれあい体験室』や、雪の多い冬場でもしつけ方教室が実施できる広い体験室も設けています。新潟はとにかく雪が多い地域なので、悪天候でも犬達が散歩できるよう屋根の張り出しを設けた『ふれあいデッキ』も雪国ならではの特徴です。

犬や猫の飼育室とは別に、ウサギやモルモットの小動物の飼育室もあります。ふれあい動物で活躍する小動物達の出会いの場所となります」

 

個室から自由に外に出られるようになっています


 

猫たちの個室も十分な広さがあり、ジャンプもできる。外を眺めながらストレスを軽減する工夫がされています

モルモットやウサギたちは温度管理された飼育室にいます


 

リードを付けて遊べる、芝生広場


現状の課題と今後の取り組みについて

ー新潟県での動物たちの現状を教えてください。

 

「昭和の時代では、野犬や放浪犬を捕獲して減らし、県民に対しても放し飼い飼育の改善や適正飼育の啓発を行ってきました。犬についてはしつけ教室や飼い方教室への参加者も増え、係留意識やしつけに対する意識の向上と不妊去勢手術の普及を伝え続けたことで、致死処分数は1桁となりました。その理由も高齢で重篤な病気があるなど、今後の譲渡が困難といった犬だけです。

 

ただ、猫についてはまだまだ課題が多く、致死処分数も減少傾向ではあるものの、これからもボランティアや保護団体、各団体の力を借りながら啓発活動や保護飼育と譲渡を進めなくてはならないのが現状です。

問題になっているのは、個人の多頭飼育や猫を屋外に出すことによる迷子や不要な繁殖です。30年度では迷子として収容された猫が飼い主の元へと戻った返還率はわずか1.1%でした。迷子札をつけるとか、外に出さないといった適正飼育の啓発を、啓発団体や愛護団体、ボランティアさんの協力を得ながら進めていきたいと思います。

 

現在、25名のミルクボランティアさんの協力を得て、子猫は体重が800gになったらセンターに戻して譲渡へと進めています。ボランティアさんのご協力で、家庭の中で人との生活に慣らした猫達を譲渡する活動も行っています。佐渡でも佐渡保健所と連携しながら、島内の方が保護活動をおこなっています」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー今後の展望を教えてください。

 

「飼い始めたペットに責任をもって飼育することは、当然のことですが飼い主の意識次第で無理なくできることです。飼い始める前に終生飼育ができるか、よく考えるきっかけになるためにも動物ふれあい教室を行って命の大切さを伝えていきます。

また、昔ながらの飼育方法からよりよい飼育方法を理解して頂くためにも『今どきの犬の飼い方、猫の飼い方』を伝え、しつけ教室や適正飼育の啓発活動を行ってまいります。

各団体やボランティアの協力を頂きながら、ペットの相談にも対応し、収容数を減らす取り組みを進めていこうと思います」

 

 

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