行政施設レポート

札幌市動物管理センター 福移支所 見学レポート

アニマル・ドネーションでは行政施設への取材を定期的に行っております。

行政施設とは、いわゆる「保健所」や「動物愛護センター」と呼ばれている施設のことで、都道府県や市町村の予算によって運営管理されています。

 

札幌市では動物管理センター福移支所の見学と、保健福祉局 保健所 動物管理センター 指導係長である松さんにお話を伺うことができました。(取材:2019/5)

施設概要

札幌市動物管理センター福移支所
所在地:〒002-8055 札幌市北区篠路町福移156番地
開設:昭和 48 年4月(平成 13 年 12 月改築)
敷地面積 :9,907 ㎡
所掌業務:動物の収容・管理、譲渡、処分、火葬等

 

保健福祉局 保健所 動物管理センター 指導係長 坪松さん
大学在学中から動物愛護に関わる仕事に就きたいと考えられており、平成22年~28年の6年間動物管理センターに勤務。一度区役所に異動した後、平成30年度から係長として勤務。

札幌郊外の自然に囲まれたロケーション

今回は、公共交通機関で訪問しました。

電車とバスを乗り継いで、バス停から歩いて行くと、自然に囲まれた中に動物管理センター福移支所がありました。
センターは公共交通機関のアクセスが良くないことが多いのですが、北海道の皆さんには車文化が根付いているので車での訪問が多く、アクセスの点は訪問にあまり影響がないとのことでした。

この日も土曜日ということもあり駐車場にはたくさん車が停まっていました。

動物管理センター福移支所では動物の火葬を行っており、建物の外には慰霊碑がありました。

スタッフの方やボランティアさんの温かみを実感

ドアを開けると動物管理センター福移支所から譲渡された動物の幸せな写真がたくさんあり、ボランティアさん募集のチラシなどお知らせもたくさんありました。
動物管理センター福移支所では動物愛護団体との協力だけではなく、動物愛護推進員やボランティアさんの募集も積極的に行っています。

 

まずは成猫の収容室を見学しました。
動物管理センター福移支所は19年前に建て替えられています。

収容室は掃除がしやすいステンレス製のケージになっていますが、ブランケットやマットなどが敷かれていて、猫ごとのプロフィールやチャームポイントが書かれた紙もあり、できる限りの温かみのあるケアがされているように感じました。

この日、子猫は譲渡されており、施設内にはいませんでした。
猫については特にボランティアさんの協力が大きく、収容された離乳前の子猫を保護してもらえる団体等が増えたことが処分数の減少に繋がっているとのことです。

 

次に犬舎の見学です。
奥には誘導路(※犬舎から殺処分する設備に繋がる道)がありますが、現在では犬の殺処分は行っていません。

この日は迷子犬の収容が多かったとのことで、犬舎には犬が比較的多くいる日とのことでした。

見学にいらした皆さんはお世話をされているスタッフの方に性格や特徴などを真剣に質問されていました。
合間にも犬と遊んであげるスタッフさんの表情が印象的でした。

土曜日開庁を始めてから、平日に奥さんがお目当ての犬や猫のチェックに来られて、土曜日に旦那さんを含めた家族でいらっしゃるケースが増えたそうです。

犬の殺処分0までの道のりとは

札幌市では平成26年から犬の殺処分は0頭ですが、それ以前は殺処分を行っていました。
現在は稼働していませんが、動物管理センター福移支所には殺処分を行う設備があります。

 

指導係長の坪松さんにこれまでの変遷を伺いました。

 

ー平成26年から犬の殺処分を行わなくてよくなった、一番の要因は何だと思われますか。

「最後の殺処分となった犬は持病があり、噛み癖も強い子でした。
犬の殺処分については、引き取り頭数が減少していた当時、所長を含む職員の決定により達成し、その後は、幸い問題行動のある犬が少なく、職員やボランティアの皆さんの協力により継続できています。
課題は殺処分をしないことを継続すること、攻撃性等の問題行動のある犬をどうするか、常に考えながら今もなんとかやっている状況です」

 

ー猫は平成28年から致命傷を負った猫の安楽死1頭となっています。減少した要因は何でしょうか。

「猫は犬と状況が異なり、大きな要因はボランティアさんの存在です。収容された離乳前の子猫を保護してもらえる団体が増えたことです。
また、収容される猫の数が、大幅に減少したことも要因のひとつです。
減少の理由は、エサやりする方が減ったのかもしれませんが、自然減と、愛護団体のTNR活動などがあげられると思います。

これらの背景から動物管理センターに入ってくる猫が減り、ボランティア等に保護される猫が増え、動物管理センターの収容に余裕ができ、殺処分をしなくても大丈夫になりました。

犬でゼロを達成した時から、いずれは猫もと考えておりましたので、2年はかかっていますね。

現在は、殺処分しない方針で運営しておりますが、多頭飼育などが今後も発生する恐れが高く、これらの受け入れ体制や関係団体との協力、費用等の工面が課題かと思います」

 

ー保護団体さんとの連携で意識されていることはありますか。
「なるべく良好な関係になるように意識してきました。
行政だけでは何もできませんし、目指すところは一緒なので話し合いを大切にしています。
平成31年度からは動物管理センターの方針に協力してくださる団体さんの登録制度を始めました。

行政を中心に、動物関係団体が連携できるようになることが一番の目的で、今後それぞれ団体で代替わりがあっても連携して対応できるその土台ができればと考えています」

 

ー現状課題と感じていること、今後必要と考えていることを教えてください

「建て替えなのか改築なのかはわかりませんが、動物管理センターのイメージを変えることが必要だと思っています。札幌市の動物愛護管理推進計画においても新たな位置づけが必要であることが明記されています。

また、働く人も大切だと思っています。
どうしても数年で異動してしまうので、どうモチベーションをキープするか、土台作りが必要だと感じます。
多頭飼育崩壊の問題は飼い主の心の崩壊によって起きる問題なので、動物管理センターだけではなく行政の中で福祉課などとも協働できればと思っています」

 

 

 

動物管理センター福移支所は職員の方やスタッフさんの工夫、保護団体さんや個人のボランティアさんの協力が感じられる施設でした。
保護される犬や猫は「今」生きているのに、殺処分は今すぐには解決できない課題です。
行政もボランティアもそのことがもどかしく、減らしたいと考えているところは同じという認識をもつことがそれぞれができることを話し合い、協力していくスタートラインになるのではないかと思います。

 

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