行政施設レポート

ANIMAMALL(アニマモール)かわさき 【第1回 施設レポート】

アニマル・ドネーションでは、動物のためにがんばる行政施設への取材を行っています。

行政の施設というのは、いわゆる「保健所」や「動物愛護センター」と呼ばれている施設です。都道府県や市町村の予算によって運営管理されています。

 

近年、そんな行政施設が変容を遂げています。2019年2月に移転開設した神奈川県川崎市の行政施設である「動物愛護センター ANIMAMALL(アニマモール)かわさき」に伺ってきました。

処分する場所から譲渡する場所へ、大きく変わったANIMAMALLかわさき。日本にある施設が全てANIMAMALLかわさきのように変われば、一気に動物福祉大国になれるのでは、と期待を感じる取材となりました。(取材:2020/2)

 

今回は3回に分けてご紹介します。

 

ANIMAMALL(アニマモール)かわさき 【第2回 いのち・MIRAI教室】

ANIMAMALL(アニマモール)かわさき 【第3回 かわさき犬・猫愛護ボランティア】

 

施設概要

所在地:中原区上平間1700番地8(川崎市上下水道局が管理する上平間公舎の廃止に伴う跡地を有効活用)

アクセス: JR南武線鹿島田駅 徒歩11分・平間駅 徒歩7分

開館時間:日曜〜木曜(8:30〜17:15)

休館日 :金曜・土曜・祝日・12月29日〜1月3日

※日曜日が祝日のときは開館

 

ANIMAMALL所長の須﨑さん(取材当時)にお話を伺いました。

過去の施設から現在の施設になるまでの事情をよくご存じの所長さんです。

 

 

過去と比較して10倍以上の来訪者。開かれた施設に

−現在の ANIMAMALL かわさきに至るまでの経緯を教えてください。

 

「過去の施設は『犬抑留所』とも呼ばれていた時代もありました。増えすぎたペットを引き取り、施設のキャパシティーを超えて犬猫を保護していました。行動観察の目的もあり事務所の中にも動物たちが常にいた時期もありました。

 

 その状態を見るにみかねた市民の方から2010年に請願書が出されたのが、この施設ができるきっかけになりました。その後、外部有識者会議で『どのような施設にしたいのか』という議論がなされ骨格ができていきました。ディスカッションを繰り返し、パブリックコメントもいただき、2015年に整備基本計画ができました。

 

 それから予算取りや場所検討などに3~4年はかかり、2019年の開所を迎えました。ANIMAMALLかわさきのコンセプトは『動物を通じてだれもが集い、憩い、学べる交流施設』を掲げています。まさに今日のように子供たちの学び場として利用してもらうのはよい試みだと思っています。

 

 旧センターの来所者数は、年間2300人でした。1日平均6人。新センターになり1日平均約65人となっています。日曜は平均250人です。夏休みの小学生を対象としたサマースクールはすぐに予約でいっぱいになりました。センターがあることで『人と動物が共生する心豊かなまち』を作っていけることに喜びを感じています」

(*人数は令和元年12月末の数値)

 

施設目の前は広場。市民の方の憩いの場でもあり、保護された犬たちのお散歩にも便利

 

旧施設から移された犬の“愛ちゃん像”

 

施設玄関のモニターには飼い主募集中の子達の写真や情報が。コメントに愛が感じられました。

 

施設内はとても明るく楽し気な雰囲気

「いのち」の大切さを学べるさまざまな工夫

−センターを開設するにあたって工夫した部分や特徴を教えてください。

 

「やはり、保護された動物が暮らすということで、周辺に住んでいる方々の配慮として、特に衛生面に注意をしています。施設内の清掃は毎日行い防音・防臭に気をつけています。

 

また、センターの役割として3つを掲げています。

1、いのちを学ぶ場

小学生等を対象に施設展示やセンター機能を活用した、来所型教室を実施し、動物を飼うことの責任やいのちの大切さを学ぶための情報発信をしています。

 

2、いのちをつなぐ場

保護した動物たちが新しい家族と出会うための譲渡会の実施とともに、動物との関わり方の情報発信をしています。また、動物に関する相談・問い合わせ、保護した動物たちの健康管理、迷子動物などの保護・返還も行っています。

 

3、いのちを守る場

動物由来の感染症の情報発信や検査などの実施、災害時には必要な物品などの備蓄について情報発信しています。川崎市獣医師会と連携し、災害時には動物救援本部が設置されます」

 

とても開放的な施設。内部の作りにも様々な工夫がなされていますね。

 

「施設見学の際、『動物たち』にストレスがかからないよう、導線の工夫をしています。保護される動物にとって、常に人の目にさらされることはストレスになります。ですので、動物にとって落ち着ける場所を作ってあげ、動物たちへ配慮をした場所に見学窓を付けるなどの工夫をしています。

 

建物全体としては、自然光がたっぷり入り込むようにし、壁の色や展示物のすべてが開放的に感じられるようにしています。また、展示を通して、学びがある施設にしたいと考えて運営しています」

 

施設内の展示。ほんわかした雰囲気のイラストで嬉しい、悲しいなど、犬猫の様々な感情を学ぶことができます。

 

犬舎の廊下の様子。反対側に窓が設置してあり、外側から中の様子を確認できます。

 

猫の行動を観察したり、実際の家庭での暮らしをイメージしながら、新しい飼い主候補さんと対面したりするための部屋

 

ペピイにゃんmeetsルーム。猫の行動を観察し、それぞれの個性を知ることで、猫と新しい飼い主さんが出会う部屋です。

猫の習性に合わせた高低差のあるタワーを、猫たちが楽しそうに上り下りをしていました。

 

「ここにいることが動物たちの幸せではない」

説明を聞いて、とても印象的な言葉ありました。

 

「犬や猫たちが、ここにいることが幸せではないんです。ここに来る動物たちが減るように、お世話の仕方などを伝え、保護された犬猫たちが新しい家族と暮らすことが一番の幸せなんです。」と。

 

すばらしい施設で職員さんにお世話をしてもらえてきれいな場所で安心、と感じてしまうのですが、犬や猫にとっては知らない場所でしかありません。いくら職員の方に優しくされても、いつも大好きな飼い主さんとは一緒ではないのです。

 

もし、この記事を読んだ方が近い将来に犬や猫ちゃんとの暮らしをしたくなった時、保護動物たちの存在を思い出して欲しいと思います。近くの愛護センターや動物保護センターを探し、足を運んでみてください。

 

昨年のANIMAMALLかわさきの犬の収容数は73匹(うち12匹は飼い主からの引き取り)、そのうち37匹は飼い主に返還、33匹は譲渡されました。処分数はゼロです。猫は588匹(うち32匹は飼い主からの引き取り)を保護していて、残念ながら147匹は死亡してしまい、13匹は処分となりました。保護された猫のほとんどが生まれたばかりの猫たちです」

 

12人の獣医師さんをはじめ、4名の動物看護師、ほかにも多くの職員やボランティアの方達が、動物のお世話をしています。新しい飼い主になった方には、譲渡から1ヵ月後に自宅訪問などを行っているそう。

新しい家族と暮らすことになった動物たちの表情が明るくなる様子を見ると、本当に嬉しいとANIMAMALLかわさきの職員さんたちは言います。大切にお世話をしているからこそ、新しい家族にふさわしいかどうか判断されるかもしれないですね。

 

==================

 

ペットショップに行く前に、動物愛護センターへ、これが当たり前の世の中に…。

ANIMAMALLかわさきが目指す『人と動物が共生する心豊かなまち』、になることをアニドネスタッフも強く願っています。

長時間にわたる取材にお付き合いくださり、心より感謝をしています。

 

次回は、ANIMAMALLかわさきが行っている小学生向けの課外授業 【第2回 いのち・MIRAI教室】についてレポートします。

 

ANIMAMALL(アニマモール)かわさき 【第2回 いのち・MIRAI教室】

ANIMAMALL(アニマモール)かわさき 【第3回 かわさき犬・猫愛護ボランティア】

 

 

※掲載の文章・写真は、アニマル・ドネーションが許可を得て掲載しています。無断転載はお控えください。