最新活動レポート

【どうぶつ愛護フェスティバル】未来を考える!“動物愛護講演会”参加レポート

毎年9月20日から26日までは動物愛護週間です。
各地で様々なイベントが催されている中、動物愛護週間中央行事実行委員会による動物愛護講演会が台東区生涯学習センターで開催されました。

 

動物愛護フェスティバルのホームページはこちら

 

2019年のテーマは「共に生きる〜シニアペットとシルバー世代〜」

本講演会では「共に生きる〜シニアペットとシルバー世代〜」をテーマに、現代人とペットの共生における実情と課題、その備えについて有識者のお二人からお話がありました。ここではその内容を紹介をさせていただきます。

 


◯講演内容

  • 講演①「人もペットも目指すは健康寿命の延伸!!」  講師:小林 元郎 氏(成城こばやし動物病院 院長)
  • 講演②「特別養護老人ホームの入居者とペットの共生」 講師:若山 三千彦 氏(特別養護老人ホーム「さくらの里 山科」理事長)

 

※ご存知の方も多いかと思いますが、若山 三千彦さんは「看取り犬 文福の奇跡」の著者でもあります!

講演①「人もペットも目指すは健康寿命の延伸!!」

ー 人もペットも寿命が伸びている!

現在日本に住む100歳以上の高齢者の人数がどのくらいかご存知でしょうか?厚生労働省のまとめによると、その数なんと【7万1274人】(2019年9月15日時点)。1998年は1万人程度でしたので、20年で7倍になっています。

 

同時にペットについても獣医療やフード品質の向上により、寿命が延びています。一般社団法人ペットフード協会の調査によると、2018年の平均寿命は「犬:14.20歳」「猫:15.32歳」で、2010年の平均寿命が「犬:13.9歳」「猫:14.4歳」と人間に比べるとなだらではあるものの、ペットの平均寿命も延びている状況です。

 

一般社団法人ペットフード協会の調査資料はこちら。

 

寿命が延びる中、課題となるのが「健康寿命」です。健康寿命とは、日常的・継続的な医療・介護に依存しないで、自分の心身で生命維持し、自立した生活ができる生存期間のこと。現在の日本において「健康でない期間」は「男性:9年間」「女性:13年間」と、亡くなる前の約10年は何かしらの病気にかかったり、介護が必要な状態になる可能性が高いことがわかっています。

 

小林先生はこの「健康寿命の延伸」を目指すことが重要だとし「自身のペットが最期まで自立し、尊厳を保つ生活を維持することは、飼い主が健康であることが大前提である」と説きます。

 

 

ー 老化に気づくポイントとは?

また老化は、あるタイミングから突然訪れるものではなく、日々の積み重ねであり、早い段階で準備をしておくことが大事です。例えば、老化による変化は「体重の減少(摂取量、消化機能の低下)」「筋肉量の減少(基礎代謝の低下)」「感覚機能の低下(味覚、臭覚)」「消化吸収機能(特にタンパク質と脂質)、免疫機能、基礎代謝の低下」といったものが挙げられます。ただ、老化に隠れて病気を患っている場合もあるため、よく観察をして見極める必要あります。

 

  • 例1)よくモノにぶつかるようになった、何もないところで転ぶ、散歩に行きたがらない
    → 老化による運動感覚機能の低下、筋肉の減少 が疑われる

 

  • 例2)食事が遅い、口臭がある、トイレが間に合わない
    → 病気の疑いがある(例:顎、歯、内蔵、泌尿器)

 

小林先生のお話で印象深かったのが「ペットは老化に対して危機感や恐怖感がない」ということ。ペットは老化を意識することがないため、飼い主が日々観察して、サポートをしてあげる必要があります。「老化したから仕方がない」でも、「老化が悪い」でもない。老化を理解し、起こった問題・課題に対して原因を見極めて、明確な対策をとることが重要です。

 

 

ー 日々、留意点したほうが良いことは?

老化の兆候がみられたら、ぜひ下記の点を留意しておきましょう。

 

  • 1. 食べ物:「エネルギー(摂取量)」「タンパク質(制限はNG)」「水分(腎臓機能低下から脱水症状に注意)」のチェック
  • 2. 健康寿命の延伸:老化と病気の見極める、日常の栄養・運動の見直し、検診の重要性を認識
  • 3. 有事の備え:ペット保険の加入検討、信託制度の活用(自分(飼い主)が死んだ後の手続き)、日常で相談できる環境づくり
  • (譲渡先や相談できる獣医師など、関係性の構築)、ペットが健康な状態で次の飼い主にいける準備

 

 

講演②「特別養護老人ホームの入居者とペットの共生」

ー 「さくらの里山科」とは?

「さくらの里山科」は横須賀市にある特別養護老人ホームで、「日本で唯一ペットと一緒に暮らせる老人ホーム」として、TVやインターネット等のメディアに取り上げられている老人ホームです。

 

さくらの里 グループ ホームページはこちら

 

利用料に「ペット費用」が含まれており、入居者と職員で協力してペットのお世話をしています。2階は犬と猫の2エリアに区分けされており、エリア内で人と犬・猫が集団生活しています。基本理念は「諦めない福祉」で、「高齢者が普通の生活を楽しむことを諦めない」ことを目指しており、「高齢者話にとってペットがかかせないなら、対応する。その結果として、動物愛護活動をしている」と若山さんは説明します。

 

 

ー 設立きっかけの悲しい出来事

とはいえ、「さくらの里山科」さんも最初からペットと暮らせる施設ではありませんでした。ペットと暮らせるようになったのはある悲しい出来事が大きく影響しています。

 

それは、ダックスフンドと暮らす80代男性(独居、身寄りなし)が体調悪化のため老人ホームに入居した際に、愛犬を預ける先がなく保健所に託すしかなかったという出来事がありました。ダックスフンドが無事他の飼い主に譲渡されたかは不明ですが、御本人は「自分の家族を自分で殺した」と後悔と絶望を抱きながら、入居から半年後にご逝去されたということです。

 

若山さんはこの出来事に対して「高齢福祉として問題である」とし、この後ペットと暮らせる老人ホーム実現に向けて大きく動くこととなります。

 

 

ー ペットと共生することで人が救われる?

ペットと暮らせる老人ホームになってからは、良い事例がいくつも起きているといいます。

 

  • 事例1)自分の死後、ペットのことが心配で精神疾患を患う入居者
  • → ペットと入居することで心配が解消され、症状が改善

 

  • 事例2)末期がんで余命6ヶ月の申告を受ける高齢者
  • → 手術・入院を断り老人ホームへペットと入居
  •   余命を4ヶ月超過した10ヶ月間をペットと暮らし、ペットが見守る中でご逝去

 

  • 事例3)認知症で無表情、家族も忘れてしまった入居者
  • → 犬との交流の結果、家族がわかるようになる

 

このように、ペットとの共生から得られる効果として「認知症の改善」「リハビリ効果」「健康の促進」「交流の促進」があり、特に「笑顔が増えた」ということを強調されていました。ペットの存在は人間にとってかけがえ無く、とてつもない影響力があることがわかります。

 

 

 

 

本講演会のテーマは「シニアペットとシルバー世代」でしたが、内容は高齢者だけに当てはまるものではありません。人もペットも必ず年を取る生き物で、若い方も他人事ではなく、いつ病気になるか、いつ入院するか、などは誰にもわからないことです。

 

そのため、いつ何が起きても良いように、ペットのことをどうするのか、事前の準備をしておくことはとても大事です。これは全ての飼い主さんが考えておくべき内容で、とても学びの深い講演会となりました。

 

 

 

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