最新活動レポート

人と犬や猫が共生する社会を実現 「さくらの里山科」をレポート

保護犬や保護猫にご理解があり、アニマル・ドネーション認定団体のちばわんさんの譲渡会会場として
以前本ブログにもご登場いただいた「特別養護老人ホーム さくらの里山科」さん
https://www.animaldonation.org/blog/group_report/424/

 

ここは日本でも珍しい、犬や猫と共に暮らすことができる特別養護老人ホームです。

ペットを飼う人が増え、今後ペットも高齢化していく中で
さくらの里山科さんはどのような施設なのか改めてお話を伺いしました。

 

特別養護老人ホーム さくらの里山科
http://sakura2000.jp/publics/index/8/?fbclid=IwAR2ZTLPk78PuuGnR8woyXFrHr3ItF8d6Lzzdda61fTkhQLwm6JQEzDkeUH0




犬や猫と暮らせるといっても施設全体ではなく、犬のいるフロア(2階A)と猫のいるフロア(2階B)に分かれており、
犬や猫と暮らさないご入居者様ももちろんいらっしゃいます。

 

ご自身も3匹の犬と暮らす施設長の若山さんに犬や猫と暮らすことができる施設を作ったきっかけ、特徴などをお聞きしました。


―設立のきっかけを教えてください。

「まだこの施設を作る前、在宅部門のときよくお会いしていた利用者様がいました。
その方は14歳くらいのダックスフントを飼っていて、本当に家族同然として暮らしていました。
しかし、ご自宅での生活が難しくなり、ホームに入らなければならなくなりました。
私たちも協力し、その方と犬の貰い手を探しましたが、残念ながら見つからず
やむを得ず保健所に渡すことになりました。保健所に行った後、その子がどうなったかは分からないのですが、
その方はホームに入った後も、『自分の家族を自分の手で殺してしまった』とおっしゃってとても落ち込み、
約半年後に亡くなりました。この出来事を目の当たりにして、
人生最期の半年を後悔したまま過ごすことをさせてはいけないと思いました」

この出来事が若山さんが以前から考えていた、犬や猫と暮らすことができる施設に対する想いをより強いものにしたそうです。

 


猫のフロア

 

―同じ取り組みを行う他の施設がなかなか増えないのはなぜだと思いますか。

「スタッフの抵抗もあるでしょうし、大変そうに見える、というのもあると思います。
また特別養護老人ホームではまだそこまで需要がないというのも事実かと思います。
ペットを家族と感じる方はホームに入られる世代の方の中で、まだ多くはないです。

うちもはじめはスタッフの抵抗がありましたよ。
施設ができて間もなく、犬と一緒に入居された認知症の方がいました。
認知症にも色々な症状があるのですが、気性が荒くなってしまうことがある方で、
犬のお世話も自分でしたいとスタッフのお世話を許してくれませんでした。
犬の具合が悪くなり、最期の時をご入居者様のベットで一緒に過ごし、看取りました。
犬を亡くした後、その方が動揺してしまうのではないか、とスタッフもみんな心配していましたが
その後はとても穏やかに過ごされました。ご自身で看取ることができて納得されたのだと思います。
スタッフも福祉を志した者です。ご入居者様のこういった変化や表情を見て、
犬猫と一緒に過ごすことができる環境が人間の福祉に必要なものだと理解していってくれました」

 

犬猫好きなスタッフが希望されてこのフロアを担当されているものの、人と犬猫どちらのお世話もしなくてはなりませんし、
ご入居者様にペットについてご負担いただくのは実費であり、お世話代はもらっていません。
また施設の子として迎えた子はあえて病気を抱えている子も迎えており、その費用は施設の負担となります。

 



犬のフロア 共有スペースでのひととき

 

―犬猫と最期の時間を過ごすことで人にとって良いことはありますか。

「犬猫のフロアにいらっしゃる方は、犬猫との生活を希望された方です。
ですので、『まさかまた犬猫と暮らせるとは思っていなかった』とご入居された時点で喜んでくださいます。
また、末期がんで余命半年と宣告されてから2カ月ほど経った方が『犬猫と過ごして終わりたい』とご入居されました。
この方はいらしてから10カ月程穏やかにお過ごしになりました。

私たちは、決してアニマルセラピーとして犬猫を受け入れているわけではありません。
旅行が好きな方には旅行の機会を提供しますし、毎日の食事にもこだわっています。
ずっと犬猫と暮らしてきて、一緒に過ごすことが当たり前という方には、そのような環境を提供する。
それが福祉のあり方だと考えています」

 

現在は犬のフロアに10匹、猫のフロアに9匹が一緒に暮らしており、
約半数が施設の子、残りの半数がご入居者様と一緒に施設に入居した子です。
その中にはご入居者様が先に旅立たれ、その後施設の子として暮らしている子もいます。

ご入居者様には必ず終生飼育することを約束していると若山さんはおっしゃっいます。


ご入居者様の愛犬

 

―猫のゆうすけくんとご入居者様に、施設に入られた経緯を伺いました。

「ここに来てもう5年程になります。私には子供がいないので姪が良くしてくれて、この施設を見つけてきてくれました。
『この施設ならゆうすけと一緒に暮らせるよ』と言われたけれど、初めは猫と一緒に入れる施設があるなんて信じられませんでした。
この子はミルクの時から私が育てたので、別々に暮らすことは考えられませんでした。
本当に血を分けることはできないけれど…血を分けた家族のようなものです」

 



お部屋でまったりする ゆうすけくん

この施設で入居者様もゆうすけくんものびのび!暮らしています

 

さくらの里山科さんではアニドネが目指す、「人と犬や猫が共生する社会」が成り立っていました。
不思議なことに、犬同士や猫同士もケンカをせず穏やかに暮らしているそうです。

犬や猫と暮らすことが生活の一部だと思う人にとって、その生活を年齢や自分の体力を気にせずに
叶え続けることができるのはとても幸せなことだと感じました。

 

※掲載の文章・写真はアニマル・ドネーションが許可を得て掲載しております。無断転載はお控えください。