海外情報レポート

殺処分はしない。ドバイのペット事情で知る犬と宗教の深い関係<海外レポート・ドバイ編②>

desert dog run
砂漠のドッグラン”Bark Park”

 

世界一高いビルや世界唯一の7つ星ホテルがあり、

アラブの富裕層や世界のお金持ちが集まるアラブ首長国連邦(UAE)のドバイ。

さぞかし犬たちも贅沢な生活を送っているのかと思いきや意外な現状が…

 

ドバイのペット事情は、長年ドバイに住む犬を愛する日本人Madokaさんにご紹介いただいて、保護犬と共にドバイで生活するMareeさんに取材をさせていただきました。

Profile

Goblin  Mareeさん

🐾経歴🐾
17年前からドバイに在住しているニュージーランド人。アメリカ人の夫と保護犬のBelleとGoblinと生活。BelleとGoblinとの出会いはドバイの保護施設「K9 Friends」。無類の犬好きでドバイで犬たちの社会的

 

犬を飼っているのは現地の人ではなく外国人

ードバイで犬を飼っているのはどういった人たちでしょうか?

「ほとんどが仕事でドバイに住んでいる外国人、主に欧米人です。日本人は駐在期間が短い人が多いためか、犬を飼っている人はあまり周りにいません。」

 

ードバイで犬を飼う場合は、どこから手にいれる事が多いのでしょうか?

「シェルターやブリーダーから直接手に入れるケースが多いようです。ドバイにもペットショップでの生体販売もありますが、そこから買っている人は見たことがありません。それとドバイは駐在員が多いので母国から連れてくる人も多いです。」

 

ー宗教上の理由で現地の人は犬を飼わない

「ドバイはイスラム教の街です。イスラム教では犬は不浄の存在とされているため、現地の人は犬を飼うという習慣がほとんどありません。犬に慣れていないためか、外で犬を見ると怖がる人もいます。」

 

 

Belle
Belleくんのママは路上で7匹のパピー達といる所を保護される。Mareeさんは保護施設にいたBelleくんを10週齢の時に引き取ったそう

 

 

捨て犬はいるが殺処分はしない

ー捨て犬や放棄された犬は行政→保護シェルターで育てられる

ドバイにも捨てられたり育児放棄される犬はたくさんいるようです。そういった場合は、行政を通して保護シェルターに預けられます。

 

ー保護シェルターの預かり期限は飼い主が見つかるまで

行政で殺処分は行っておらず、保護シェルターでも預かりの期限はなく飼い主が見つかるまで育てているようです。Mareeさんが保護犬のGoblin君と出会ったのも、Goblin君がシェルターに入って6年後の事だったそう!

 

Goblin
Mareeさんの愛犬Goblinくんもシェルター出身

 

ドバイ最大のシェルターに政府が支援

ドバイ最大の保護シェルター『K9 Frinds』。Mareeさんの2匹の保護犬もこのK9 Friendsから引き取ったそう。

 

ー一時は存続の危機!それを救ったのはドバイ政府

K9 Friendsは1988年に外国人のボランティアによって始まった保護シェルターです。2005年と2006年に地主からの立ち退き要請が入り存続が危うくなりました。しかし2007年ドバイ政府はこの団体の社会的重要性を認め、広大な土地やエアコンの効いた室内シェルターを与えました。

 

現在では成犬125頭と仔犬30頭を預かれる施設になっています。ここで多くの犬が保護され飼い主が見つかるまで育てられています。

 

K9 friends

K9 friends
写真:K9 Friends

 

 

公園は犬NG!犬が入れる・入れない場所がはっきり分かれている

宗教上の理由から、ドバイでは犬の行動範囲が制限されています。

 

ー犬が入れない場所があると聞きましたが、実際にどこに入れないのでしょうか?

「ドバイでは犬は公園や公共の場所に入ってはいけません。私の家の近くにある公園も犬禁止です。これは犬が苦手な人に配慮した条例のようです。レストランやお店も基本的に犬NGです。」

 

ー外国人の多いエリアでは少し雰囲気が違うのでしょうか?

「Palm Jumeirah(パームジュメイラ)やJumeirah Lake Tower(ジュメイラレイクタワー)といった新しい人工島には外国人の在住者や別荘を持った人が集まっています。こういったエリアでは犬OKの公園や施設も多いです。ドッグカフェなども徐々に増えてきているみたいです。」

 

犬好きの人とそうでない人が共存できる社会に

厳しい気候や宗教上の背景があるため、ドバイは犬を飼いやすい場所ではないかもしれません。ただ、政府の協力や外国人ボランティアの支援もあり、ドバイのペット事情は年々良くなっているようです。

 

先日は、ドバイのイケメン皇太子が犬と一緒にたわむれているインスタグラム(@faz3)のストーリーが話題になりました。彼は動物好きでも有名であり、イスラム教徒でありながら分け隔てない命として犬の事も取り上げたのが感じ取れます。

 

犬が好きな人と犬が苦手な人のどちらの生活も守り、共存できる環境を整えつつあるドバイ。そうする事で制限はあるものの、結果的に犬の社会的地位を上げることにつながっていると感じました。

 

犬を守るために犬が苦手な人にも配慮する、ワンちゃん達が生きやすくするためには大切な事なのかもしれません。

 

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今回は、アニドネスタッフのMayumi Kanekoが取材しました。記者自身、2002年から3年間ドバイに在住していました。

 

今回の取材で初めてイスラム教と犬との関係を知りました。イスラム教徒が不浄な存在として豚を食べない事は有名ですが、その豚と並んで犬も不浄な存在と位置づけられているとは驚きです。

 

ただイスラム教は慈悲深い宗教です。犬が不浄の存在だとしても、実際に攻撃をしたり虐待をしたりするわけではありません。取材を受けてくれたMareeさんも犬を連れていて特に危ない目にあった事はこれまでないそうです。

 

犬を飼うことに対してただ否定や禁止をするのではなく、どういった形なら共存できるかを考えたり、政府が保護シェルターを支援したりする点で、ドバイの異文化に対する寛容さを感じました。

 

宗教の垣根を越えて、ドバイの動物福祉が今後も向上していくことを願っています。

 

 

※掲載の文章・写真はアニマル・ドネーションが許可を得て掲載しております。無断転載はお控えください。