2026年の動物愛護管理室の取り組みを取材。動物福祉をさらに推進するためにできることは?
2026年、環境省では動物愛護に関してどんな取り組みを推進していくのでしょうか。2025年に室長として着任された石川氏に、現状と今後の方向性についてお話を伺いました。
インタビュー:2026年1月
PROFILE

石川 拓哉(いしかわ たくや)
環境省 自然環境局 総務課 動物愛護管理室・室長
2004年、環境省入省 レンジャーとして国立公園や世界自然遺産地域などの現場で保護管理業務に従事、本省では生物多様性保全や海域の保全、地域資源を活用した地域づくりなどの業務に従事。2025年7月から現職
虐待動物の緊急一時保護制度の導入、対象動物の拡大を実現したい
―動物の愛護及び管理に関する法律(以下、動物愛護管理法)の改正に関して現状を教えください。
「動物愛護管理法は、1973年に議員立法で制定された法律で、その後、約7年ごとに法改正が行われてきました。
前回の改正は2019年でしたので、次の改正に向けて超党派の議員連盟で議論が進んでいるところです。
昨年6月の段階では、臨時国会期間中に改正できればということだったのですが、
いろいろと詰めなければいけない課題が多く、改正にまで至る状況にはなりませんでした。
昨年末の段階では、今年6月末頃までの通常国会期間中の改正を目指して議員連盟で作業を進めていくとの話でしたが、
年明けに衆議院解散があり、その動向は不透明ともと聞いています。
動物愛護管理法は、さまざまな立場の方が関わる法律です。
環境省としては、動物取扱業から自治体や保護団体、一般の消費者に至るまで、
みなさんが法律を遵守し、動物を適切に取り扱うことをつねに認識しながら事業や活動、
消費行動をしていただけるよう、様々な方々の声を聴きながら
環境省令での運用ルールの具体化などに取り組んでいきたいと考えています」

―今回の改正に関して大きなトピックスといえる点を教えていただけますか。
「まずは、ペットの緊急一時保護が挙げられます。
虐待等でペットの命に危険が及んでいるような場合には、
一時的に保護することができる制度を動物愛護管理法に盛り込むことが検討されています。
また、前回の改正では犬・猫は生後56日より前に販売してはいけないという
8週齢規制が定められましたが、その実効性が担保されていないのではないかという指摘が多く、
その規制をきちんと守っていただくためのさらなる措置などが検討されています」
―犬・猫以外の動物に関する数値規制なども盛り込まれるのでしょうか?
「数値基準などの具体的な内容については、法律ではなく環境省令で定めることとなります。
前回の法改正では、犬・猫に関することをしっかりやりましょうということで、
環境省令でケージのサイズや飼育環境、飼育人員数、販売の時間などに数値基準を設けました。
次の段階として、犬・猫以外の哺乳類について数年前から検討を続けてきました。
ただ、犬・猫以外の哺乳類にはいろいろな種類があるので、
それぞれに細かい数値基準をつくるのは現実的ではありません。
そこで、比較的、飼育されている方が多いうさぎ、ハムスター、モルモットという3種については、
ケージサイズなど数値基準を設けることを考えています。
また、アニマルカフェのエキゾチックアニマルに関しては、
人獣共通感染症や動物福祉の観点から、接触方法の留意点として、
消毒のことや動物を適切に扱うことに関する基準の追加を考えています。
さらに、動物の福祉に加え、自治体の方々が現場で指導監督がしやすくなるという点も重要と考えています」
現場での実効性を高める方策を模索、消費者への啓蒙活動にも力を注ぎたい
―ブリーダーやペットショップにおける仔犬販売の取り締まりの実情について教えていただけますか。
「環境省では2023年11月にブリーダーの動物愛護管理法の遵守状況に関する一斉調査を行いました。
その結果、全国のブリーダー約1400事業所の約5割に当たる665事業所で法令違反を確認しました。
内容としては、帳簿の不備、帝王切開に伴う出生証明書の不備、繁殖台帳の不備、8週齢規制違反です。
その結果を踏まえ、2024年9月に環境省から関係業界に対して、
違法状態の是正と法令遵守に関する要請文を発出しました。
2025年8月に是正状況を確認するためのフォローアップ調査を行ったところ、
8週齢規制違反に関しては改善がみられていました。
ただ、この調査結果には現れていないような部分も含めて、
8週齢規制についてどのように実効性を高めていくかが重要と考えています。
次の法改正に向けて議論されていますので、環境省としては自治体の現場の方々と
情報交換・連携しながら、何ができるかを検討していきたいと考えています。
また、犬猫の生年月日の改ざんなど、違法な幼齢の犬猫販売が行われる背景には、
一般の消費者の中に小さい個体を求めるニーズがあるという指摘もあり、
消費者の方々に向けた情報発信はとても重要と考えています。
環境省では初めての取り組みとして、2025年1月から一般の方向けのWebサイトの展開、
検索エンジンやSNSへの動画広告の掲載など1にも力を入れています」

―日本のアニマルウェルフェア(動物福祉)向上のための問題点と解決策に関して、お考えをお聞かせいただけますか。
「いま、ペットも含めて動物福祉に関して、国民みなさんの関心が高まっていると感じています。
だからこそかもしれませんが、課題も山積しています。
そのひとつとして、ブリーダーやペットショップなど動物取扱業による不適正な飼養が挙げられます。
もちろん動物取扱業だけではなく、我々行政も関係団体も飼い主も、
動物に関わるすべての人々が、きちんと「動物は命あるもの」ということを認識し、
動物を尊重して取り扱うことが基本です。
なかでも動物取扱業のみなさんは業として現場で動物を取り扱っていますので、
広く一般の飼い主のみなさんの模範となっていただきたいと考えています。
業界としての自主的な取り組みにも期待しており、
そのような取り組みには環境省も協力・連携したいと思っています」
災害が起こった時にもペットを守れるか、命への責任をしっかり意識していただきたい
―一般の飼い主さんや飼い主候補の方が動物のためにできることはなんでしょうか。一般の方向けにメッセージをお願いします。
「今はペットといっても犬や猫だけでなく多種多様です。
動物によって習性も違えば、適正な飼育環境も異なります。
たとえば、その動物の寿命はどれぐらいなのか、
習性はどういうものなのかなど、きちんと動物のことを知っていただきたいです。
同時に、自分が飼い主としてその「ペットを最後まで面倒をみられるのか」2どうかについても
考えていただきたいですね。
自分の年齢や健康という観点からだけでなく、災害があったときに
どこまで自分がペットに責任を持てるかを考えておくことが大切です。
環境省では、2024年に発生した能登半島地震での避難所における実情などを検証し、
今後の災害に備えるために、2018年に策定した「人とペットの災害対策ガイドライン」3の
改定に向けて検討を進めています。
これからペットを迎える方には、ご自宅の立地やご自身の状況を踏まえて、
本当にそのペットを迎えて大丈夫かというところは十分に意識していただきたいです。
また、ペットをペットショップなどから購入するときは、
その動物の性格や疾病などの状況もきちんとチェックしていただきたいですね。
迎えた後に病気があった、などの問題が生じるケースも多いと聞いています。
新しく犬や猫を迎え入れる場合の選択肢のひとつとして、
お近くの動物愛護センターを訪問いただくのもよいのではないかなと思います。
環境省では毎年、9月の動物愛護週間にあわせて、動物の愛護や適正な飼養に関する
理解を深めていただくためのイベントを開催しています。
また、自治体や保護団体では定期的に譲渡会や各種イベントなどが行われていて、
動物とアクアスする機会はいろいろあります。
ぜひそういう場に足を運んでいただいて、最近の知見や動物愛護、
動物福祉の現状を知っていただくのもよいと思います」

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参照資料:
1.STOP!生後56日までの犬猫販売!https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/stp56/
2.環境省 飼い主の方やこれからペットを飼う方へhttps://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/pickup/owner.html
3.人とペットの災害対策ガイドラインhttps://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h3002/0-full.pdf