認定団体の活動レポート

多機関連携で向き合った多頭飼育の現場と、行政の新たな支援対策

特定非営利活動法人 ねりまねこさんは、東京都練馬区を中心に地域猫活動(TNR)を推進する団体です。行政・地域住民・登録ボランティア・動物病院と連携し、飼い主のいない猫たちが共生できる環境づくりを目指しています。最近の活動状況や今後の活動について、代表の亀山さんにお話を伺いました。

追い出された猫たちの命を繋ぐ

ー最近の活動について教えてください

「飼い主様の生活困窮により、不妊去勢手術が行えず19頭の猫が多頭飼育となっていました。私たちねりまねこは、福祉・行政・警察など多機関と連携し支援と対策を続け、不妊去勢手術や保護の提案も行いましたが、飼い主様の同意が得られないまま立ち退きが決まり、猫たちは外に出され行き場を失ってしまいました。現在は、地元の方たちが探して保護してくださった猫を私たちが引き取り、必要な医療ケアを施した後、新しい迎え主さんにつなげる活動を続けています」

保護された黒猫の親子

「この多頭飼育の案件は1年前から相談を受けており、何度も支援や対策を申し出ていましたが飼い主様の同意が得られず事態は膠着していました。しかし、立ち退きによる影響で猫たちが家の外に放たれ始めたことで地域猫活動団体として介入せざるを得ない状況となり、現場対応を決断しました。急ぎ敷地内に捕獲機を仕掛けてもらいやっと捕まったのが黒猫のひなちゃんです。

ひなちゃんは昨年からずっと引き取りを申し出ていたものの承諾を得られず、保護することができていなかった子でした。そのひなちゃんに医療ケアを施している過程で発覚したのは授乳中だということでした…。

保護された黒猫のひなちゃん
1年経ち、成猫になったひなちゃん
授乳中ということが発覚したひなちゃん
母になっていたひなちゃん…

早急に子猫たちの保護を試みましたが救い出せたのは母猫そっくりの黒猫ララちゃん一頭のみでした。発見時のララは全身ノミに覆われ重度の貧血と、風邪による影響か目ヤニで目が開かず、衰弱して今にも命が尽きそうな状態でした。

保護された子猫のララちゃん
目ヤニで目も開かず、痩せ細った子猫のララちゃん

急いで動物病院に連れていき適切な処置を受け、自宅でも点眼処置や給餌をこまめに行い少しずつ回復していきました。

保護され適切な医療処置を受けたララちゃん
献身的な介護で少しずつ回復!

母猫のひなちゃんとも一緒に過ごせるようになり、今では元気いっぱいに過ごせるようになりました」

保護された黒猫の親子
お母さんのひなちゃんと一緒になれたララちゃん

 

保護された黒猫の親子
たくさんごはんを食べれるようになってよかったね!

行政の新たな支援対策と、取り組み

「このような事案で登録ボランティアがやむを得ず保護した猫たちに、温かな家庭を見つけてあげるため、私たちねりまねこ主催 練馬区保健所後援による譲渡会を開催いたします。保護された猫たちの譲渡を促進し、一頭でも多くの命を繋ぐことを目的としています」

練馬区報に掲載された譲渡会の情報
練馬区報に掲載された譲渡会の情報
譲渡会のチラシ
練馬区保健所が後援に。 次回は9月21日に開催されます!

「また、練馬区では飼い主の死亡や施設入所などで犬や猫の飼育が困難になった際に保護・譲渡へつなげるための新制度“練馬区ペット終生飼養相談・支援事業”がスタートしました。この事業はボランティア団体や獣医師会との連携によって支えられています。私たちねりまねこも地域の保護ボランティアとして協力します。まずは飼育放棄が起きないよう、適正飼養の啓発・相談活動を通じて未然の防止にも力を入れていきます」

練馬区の新たな支援事業
行政と協働で適正飼養の啓発・普及に努めます

ー今後予定されているイベントやセミナーなどはありますか?

「8月24日(日)午後2時~午後4時半まで、神奈川県川崎市で地域猫活動セミナーが開催されます。川崎市では地域猫活動を行うサポーターを支援する制度を導入しています。猫の被害に困っている方、地域の野良猫問題を解決したい方、地域猫活動に関心のある方、どなたでもご参加ください」

川崎市で開催される地域猫活動セミナー
川崎市で開催される地域猫活動セミナー

社会全体で向き合うべき課題

黒猫親子のひなちゃんとララちゃんは、7月に開催された譲渡会で「母子を離すのはかわいそうだ」と深い優しさを持つご家族とご縁があり、お迎えされたそうです!その譲渡会の後援が練馬区保健所であることや、練馬区が新たな支援事業を立ち上げるに至った背景にはこれまでのねりまねこさんの地道な働きかけと、行政との信頼関係があったから——それがカタチになったものだと強く感じました。

一方で、不適正飼養がもたらす問題の対応を保護団体やボランティアだけに任せ続ける現状には強い違和感があります。際限ない要求に団体やボランティアの方々が応え続ければいずれ限界が来ることは容易に想像できます。一方に負担を背負わせるのではなく行政・地域・市民が一体となって問題に取り組む仕組みをつくる必要があります。社会全体で解決していけるような仕組みを一緒に模索していきたいと強く思いました。

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