横浜市動物愛護センターレポート
アニマル・ドネーションでは、
行政施設への取材を積極的に行っています。
行政の施設というのは、いわゆる「保健所」や「動物愛護センター」と
呼ばれている施設です。
都道府県や市町村の予算によって運営管理されています。
少し前までは、動物を引き取り処分する場であった行政の施設が、
ここ数年の間に徐々に「新しい飼い主を探す場」に変わってきました。
ペットは家族、という風潮と共に、処分することが解決策ではないと
行政全体で考えていく流れが出来てきたのでしょう。
場所や施設ごとに、ずいぶんと状況は違いますが、
大切な命を守ろうと頑張る行政も増えてきました。
アニドネスタッフが取材をしてがんばる行政の情報を随時、
公開していきたいと思います!
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「横浜市愛護センター」
取材/2012.7
横浜市神奈川区菅田町の菅田団地近く、高台の上に2011年5月に誕生しました。
グリーンのキレイな広い庭は「ふれあい広場」。収容動物のお散歩や、イベントなどで利用されます。
【施設概要】
敷地面積:10,560㎡
建物:交流棟、動物ふれあい棟、猫の家 3階建て
スタッフ数:23名(うち10名が獣医師)
ボランティア数:43名
収容数:犬70匹、猫120匹が収容可能
今回は、動物愛護センター長の泉俊明さんにお話をお聞きしました。
動物に接すると、優しいお顔がさらに柔和になる泉さん。この施設の誕生と同時にセンター長に就任されました。
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【 1 】「まずは施設の概要についてお聞かせください」
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「昨年5月に開設した当施設は、
20年前からの構想がやっと実現した施設になります。
大きな特徴は、ふたつありましてまずひとつは、
「人と動物が共に快適に暮らせる環境づくり」を推進する拠点であること、
もうひとつが、動物関係団体や市民ボランティアさんとの協働により、
『収容動物が可能な限り譲渡されることを目指す』とともに、
犬や猫とのふれあいをきっかけとした交流の場であること、です。
ですので、施設内には広い庭やセミナールームがあり、
積極的な交流が図られるようになっております。」
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【 2 】「センター長に就任された時のご感想を教えてください」
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「この施設は、今までとは明らかに違うコンセプトで作られています。
就任が決まったときは嬉しかったですよ。
あぁ、やっと解決の糸口が見つかった!と思いました。
というのも、この施設では、手を尽くしてもどうしようもない場合以外は
可能な限り譲渡していくことを決めているんです。
これまでも、生活衛生課に勤めて動物のことに従事してきましたが
どうしても解決できないことが多く、じくじたる思いをしてきました。
ですが、このセンターでは解決に向けての『夢』が拡がったんです。
まだ、オープンして1年ちょっとですが、
徐々に実績ができてきていると感じています。」
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【 3 】「可能な限り譲渡するために、どのような運営をされているのでしょうか」
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「はい、まずは譲渡を希望する方向けに、
譲渡前講習会を実施しています。
飼育に関しての基本的なマナーや法令、
動物由来感染症などを学んでいただきます。
その後、どのようなペットと暮らしたいのかをお聞きします。
運よく希望に近いペットがいればいいですが、
待っていただくことも多いです。
逆に希望をお聞きしても、その方のライフスタイルや
家族構成から他の犬種をおススメすることもあります。
そして、マッチする動物がいればお見合いをし、
家族全員の了承を得ていることを確認して誓約書をもらいます。
ですから、譲渡するまでに最低でも3回は
このセンターに足を運んでもらうことになりますね。
そこまで手間をかけるのは、当施設にいる動物たちには、
ベストマッチした飼い主さんを見つけてあげたい、
と思っているからです。
中には何度も来ることができないと、帰ってしまう方もありました(笑)。
ですが、動物を飼うことは幸せなことだけれども、いかに大変かも包み隠さすお話します。
お金だってかかります。病気にもなります。 」
取材した日に、しっぽをフリフリ出迎えてくれたワンちゃん。
譲渡がほぼ確定、ということで泉さんも嬉しそうにお話してくれました。
モフモフの子。お昼寝中、起しちゃいました。
それぞれの動物別に個別カルテを作成し、性格や身体状況などを記録しています。
ですので、譲渡希望の方へも、動物の詳しい情報が伝えられるとのことです。
一頭づつ個室が与えられます。
甲斐犬ミックスの子犬。
ぺろぺろと舌を出して歓迎してくれました。
譲渡相談室。
こちらで、どんなペットライフを送りたいかから相談ができます。
こちらは、猫のお部屋で、6部屋あります。
性格の合う子同士で同室になっています。
飼育希望者とのお見合い部屋は二重扉になっていました。
部屋の中には空気清浄機が設置してあり、衛生面の配慮もされていました。
ガーデンに設置された猫の家。
あずま屋です。
猫の習性に合った造りになっています。
交通事故だったのか、片手がないのですが、元気そのもの!
猫らしく、猫じゃらし大好き!
キャットタワーは、なんと職員さんの手作り!愛を感じます♪
猫はせまーいところが大好きですね!
「現在、犬に関しては幼齢犬の収容はほぼありません。
これは、避妊去勢がすすみ、無駄な命が生まれないように
なってきていることだと思います。
ですが、レスキューされる猫は乳飲み子が多くいます。
私共のセンターでは、可能な限り手を尽くして飼育します。
またほぼ毎日動物の好きなボランティアさん(登録制)に来ていただき、
犬や猫の飼育のサポートをしてもらっています。
それから、行政としては、避妊去勢手術の助成も行っています。
24年度は、4500頭を対象に、飼い猫は4000円、野良猫は6000円の
助成金を出しています。」
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【 4 】「他に施設の特徴があれば、教えてください」
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「この施設は、可能な限りの譲渡を行っていく目的以外に、
犬や猫とのふれあいをきっかけとした市民の自主的活動を
支援する交流の場という目的もあります。
ですから、セミナールームは無料で市民に貸し出しをしていますよ。
広いセミナールーム(最大150名まで収容可)では、
社交ダンスや映画上映会などの動物とは関係のない
目的でも無料で貸出をしています。
トリミングルーム。広くてキレイです。
こちらでプロのトリマーさんを招いてシャンプーやトリミングの仕方をレクチャーするイベントも開催予定。
子供さんたちは興味深々
かなりの大型犬もシャンプーが可能なペットバスです!
市民活動室。
動物に関する書籍などを置いています。
飼育体験実習室。
いろいろな講義に使われます。動物がすべりにくい床剤を使っています。
ロビー。
明るく解放された雰囲気を作っています。
横浜市の職員のペット自慢を集めたパネル。
職員さんの中にもたくさんの動物好きがいます。
我が子かわいやで親バカっぷり満載です!
センターから譲渡された動物の紹介です。
広い施設内はスタンプラリーなどの工夫も。
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【 5 】「今後の展望を教えてください」
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「現在は、開設から一年が過ぎましたが、
まだまだ施設の管理という業務に追われています。
ですが、日本でも珍しい動物のことを考えたこの施設を核として、
より動物に優しい横浜市になれるよう活動の幅を広げていきたいと考えています。
具体的には、動物に関する啓発セミナーは多く行っていきたいと思っています。
これまでは、しつけセミナーや老犬を飼う飼い主さん向けの
セミナーなど開催してきました。
夏休みには、子供向けに動物の飼育を体験できるセミナーも実施しました。
そういった体験をした子供が大人になったときに、
必ずや動物へ優しい精神が育つと思っています。
ですから、施設を飛び出して学校への出張セミナーも
積極的に行っているんですよ。
そういったことを積みかさね、職員が成長していくことも
とても嬉しいことですね。
少し場所は不便かもしれませんが、
動物を軸にたくさんの人が集う施設にしていくために
しばらくは忙しいと思いますが、頑張っていきたいと思っています。
当センターは、いつでも誰でも見学ができます。
是非、一度足を運んでくださると嬉しく思います。」
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アニドネ初の行政施設レポートは、いかがでしたでしょうか。
横浜市愛護センターの取材は、都内から車で向かいました。
高速の出口からはすぐで1時間弱で到着。
泉センター長さんは「場所が不便で・・・」とおっしゃっていましたが
車ならさほど気になりませんでした。
施設内は、ゴミなどひとつもなく、動物のにおい等もまったく感じず、
新しい施設とはいえ ピカピカできちんと手入れがされている印象でした。
取材当日も、階段の手すりをピカピカにみがく方がいました。
動物を見に来てくださった方にいい印象を与えるよう、
細部までしっかりお掃除してくださっている、とのことでした。
日本全国の行政施設がこのようになるのは、
まだまだずっと先のことかもしれません。
ですが「出来る限り譲渡する」や「動物に関する啓発事業に力を入れる」というような
ハード施設があるなしに関わらず可能なことは、
他の行政さんでも、いいお手本になると感じました。
今後も、アニドネでは「頑張る行政」を取材し、
サイト上にてご紹介していきたいと思います。