Vol.3 白金高輪動物病院 中央アニマルクリニック総院長 佐藤貴紀さん

獣医として、愛犬家として 出来ることをカタチにしています」
さまざまな分野の第一線で活躍する方へ
ペットとのスペシャルな関係をインタビューさせていただく
連載企画『しっぽの家族と暮らすワケ』。
今回は、テレビやラジオにも番組を持つ、人気獣医師である佐藤貴紀先生です。
華やかな印象をお持ちの方も多いと思いますが、
獣医としても、そして動物福祉向上のためにも、
高い志を持つ骨太なドクターでした。
(2014年6月取材)
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―猫に関する本を出版された理由をお教えください。

「実は、病院に来てみると重病になっているケースは、猫の方が多いんです。猫は、犬のように飼い主に痛みを訴えるような行為はあまりしないですし、実際痛みにも強いです。犬と比べると圧倒的に情報量は少ないのが現状かと思います。
ですので、熱っぽいとか、トイレによく行く、歯から血が出ている、などの代表的な46症状に対しての、主な病気と原因とさらに応急処置の方法をまとめました。
僕は以前から、予防医療の大切さを訴えています。早い段階で検査や治療を進めれば、治る病気ってとても多いんですね。
動物の場合、症状が出た時にはすごく悪化していることが多いので、やはり早期発見・早期治療を大事にすべきだと推奨してきました。
そのためにも、こういった症状はどういった病気の可能性があるのか、を飼い主さんが知識を持つことで、病気をいち早く見つけられれば、と本にまとめました。
僕の信頼する専門医やトレーニングのプロ達と作り上げた本です。
一家に一冊、この本を置いていただき、幸せに暮らす猫達と飼い主さんたちが増えれば、大変嬉しいと思っています。」
―なぜ、本の売上の一部に寄付を付けられたのでしょうか?
「日々、医療に携わる中で、日本の動物たちを取り巻く現状は変えていきたいと感じています。獣医として、何が出来るのだろう、と常に考えています。
実は、僕の病院には、ほぼ毎日といっていいほど保護活動に関わっている方がレスキューをした動物を連れて来院されます。
保護団体に所属している方だったり、個人で地域猫問題に取り組んでいる方だったり、みなさん本当に熱心に活動をされています。
自分の生活のことより、猫ちゃんのことを優先しているような方もいるくらいです。
保護活動の大変さはよく判りますので、レスキュー動物の場合は正規の医療費はいただかない努力をしているんですね。
これは、どこの動物病院でもできるわけではないでしょう。
当院は、ある程度スタッフの人数がおりますので、受け入れることが可能です。
病院のスタッフも、同じ気持ちで動物達を救うために前向きに取り組んでもらっていて、とても感謝しています。
このように、なにか自分の仕事を通じて貢献をさせていただければという気持ちから、今回の著書にも寄付を付けさせていただくことになりました。
いち愛犬家としても役に立てることが、大変嬉しく思っています。」
―日本の動物福祉に関しては、どのようにお考えですか?

「そうですね、大変大きなテーマですね。僕は、日本は社会的に動物が認められていない国だと考えています。
犬猫が生活しにくい国であると、、、。
例えば、日本はペットを公共の場には連れて行けないことが多いですよね。
先進国では、交通機関やレストランなど、当たり前のようにペットが一緒にいます。
逆の見方をすれば、公共の場に連れて行っても迷惑にならない、しっかりとした躾もされている、ということなんですね。
動物に対して先進国になるためには、環境に対する意識を高めることも欠かせませんし、動物への教育も大変重要だと考えています。
愛犬家のみならず動物を飼っていない方の力も借りて、変えていければと思っています。
獣医師は、動物に接する仕事の中で、唯一国家資格を持っている職種です。動物がいなければ、私たちの仕事は成り立ちません。
動物に感謝しながら、人も動物もよりよく生きていける社会を獣医師達が中心となって作っていけたら、と強く思っています。
アニマル・ドネーションさんに対しては、動物福祉の基盤になってほしいですね。
動物のためにがんばっている方々は多くいますので、横のつながりを作ってもらえるといいのでは、と思います。動物は話せません。その動物を飼うと決めたのは人間です。
なんとか恩返しができる社会を作っていきましょう。」
取材後記

「獣医になられたきっかけは?」に対する質問の答えがとても印象的でした。
「子供の頃、飼っていた犬が難病になり、それを治したくて、中学のころ獣医になると決心しました。」と。
突然、なんの前触れもなく下半身不随になったというシェットランドシープドッグの愛犬は、佐藤先生が大学生になり、大学病院の診断で椎間板ヘルニアだとやっと判った、とか。
「家族が帰ってきた姿を見て喜んでいた犬が、突然動けなくなりました。中学生でしたが、なんとか治してあげてくて、マッサージをしたり、動物病院に連れていっては犬を励ましていました。
おぼつかない足取りでしたが、お散歩に行けるくらいまでは回復し17歳まで生きてくれました。
愛犬との闘病経験がなければ、獣医にはなっていなかったでしょうね。」
また、先生の専門である循環器の心臓病に関してのお話も印象に残りました。
プロフェッショナルとしてのスイッチが入ったのか熱く語っておられ「現在は薬による治療がメインですが、ここ10年で治療のスタンダードは外科的なものになっていくかもしれない」と。
循環器の専門になった理由は「直接命に関わるもの」だからだそうです。
それを専門にすれば、救える命がたくさんある。勤務医の経験から、そのように考えるようになったと語ってくださいました。
佐藤獣医師は、マスコミで取り上げられることも多い人気のある先生ですから華やかなイメージを持ってインタビューに臨みましたが、いい意味で裏切られました(笑)。
とてもまっすぐな姿勢と強い意志で、チャレンジをされている方だと感じました。
骨太な精神と行動力で日本の動物たちを幸せにしてくれることでしょう。
アニドネスタッフとして頼もしい先生と出逢えた、とても嬉しいインタビューでした。

佐藤先生の愛犬「まりもちゃん」。心臓に疾患がありもう飼えない、と飼い主さんがペットショップに持ち込んだ保護犬だとか。「心臓の専門医である」佐藤先生がいつも側にいるという幸せワンちゃん!

白金高輪動物病院。専門外来が充実しています。先生の専門の循環器科のほか、眼科・整形外科・脳神経科・皮膚科・腫瘍科・自然療法科・臨床病理科・鍼灸治療・しつけなど、それぞれ専門の獣医師が診療と担当

全国の小学校の図書館に置かれることが決まった今回の著書。たくさんの子供たちが動物を守る大切さを学ぶきっかけになるといいですね!