ペット業界人インタビュー

愛犬を救いたい、その気持ちから誕生した『犬の歩数計』

 

 

ペット業界人インタビュー

愛犬を救いたい、その気持ちから誕生した『犬の歩数計』

富士通株式会社 ユビキタスサービス事業本部 コンシューマビジネス統括部

三ッ山陽子 さん

 

―まず、富士通さんが犬向けの新商品を発表した経緯を教えてください。

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「はい、最初にアイデアを出したのは2009年になります。

社内で『センサー技術を使って犬の歩数計をやってみたい』と商品の提案をさせていただいたんです。

その時の反応たるや冷やかなもので、『え!?真面目に言っているの?』というような雰囲気で(笑)。。。

ただ、当社の上層部は愛犬家が多く、ことあるごとに『犬の商品どうなった?』と聞かれることも度々で。

それならばと、商品化できるところまで研究開発をすすめてみたんです。数々の難題にぶち当たりましたが、これならイケる!と形になったのが2012年5月ごろです。

そして、2012年11月から、販売開始となりました。」

―ご自身の経験が商品に活かされているようですが、なぜ歩数計が必要だと思われたのでしょうか。

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「そうなんです。実は、最初に飼ったトイプードルのエースが、だんだんと歩かなくなってきたんです。

まだ1歳でしたから、お散歩は大好きで走りたそうにしているのに座り込んでしまう、というようなことが続いていました。

病院を数件回り判明した病名はレッグペルテス。

小型犬に多い先天的な病気でした。痛みはないのですが、ほっておくと足の関節が壊死する病気で。。。

現在は、手術し元気そのものですが、飼い主としては、もっと早く気付いてあげられたら手術を回避できたのでは、と大変後悔しました。

ものを言わぬ動物です。一緒に暮らすと決めたのなら、飼い主が何かの手段で健康を管理してあげることの大切さを痛感したんです。

犬は一生お散歩します。犬と暮らした方なら感じると思いますが、お散歩が本当に大好きです。

ただ調子が悪いと、やはり犬も動きたがりません。

その、日々のリズムを正確に把握することで、犬の歩数を数えるだけでなく健康管理のツールとして使えるのではないかと考えたんです。」

―商品の特徴を教えてください。

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「この小さい歩数計の中には、当社が携帯電話開発などで培ったセンシング技術がつまっています。

なぜかと申しますと、開発する中で大命題だったのが、大きさの異なる犬達の歩数をどうやって正確に計測するか、でした。

犬ほど種類によって大きさが異なる動物種は珍しく、チワワとグレードデンでしたら、足の長さも何倍も違っています。

当社には富士通研究所という富士通グループの研究開発の中核を担う専門部隊があります。

そこのスタッフへ犬の動きの解析を依頼し、歩き方の波形を分析しました。

また、体高が同じような犬でも、歩き方によりセンサーの反応も変わります。

例えばトイプードルのように硬く歩く犬種は計測しやすいのですが、ダックスフントのように柔らかい動きの犬種は正確に測りにくくなります。

その条件下で正確に測定する技術開発に、大変苦労をしました。

検証や解析を繰り返し行い、何度も試作品を作りました。その結果、一定の足の長さがあればどんな犬種でも歩数を測ることが可能となったんです

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また、歩数のみならず、震えや温度も測定できます。

ですから、飼い主がいないとき、ワンちゃんになにかあって体をブルっとふるわせていた、というようなことも正確に測定できます。

犬はストレスを感じたときに体をブルブルっとふるわせますよね。

たとえば留守番中にそんなことを繰り返してる、というようなことも判るんです。

そして、とにかく『軽さ』にこだわりました。犬に負担を強いてはいけないと。。

最初は携帯電話ほどの大きさになってしまったのですが、試行錯誤の結果16gまで軽量化でき、小型犬でも負担なく装着できるようになりました。

あとは、計測した記録を、インターネット上のサーバにアップロードできることが大きな特長です。

この『わんダント』におサイフケータイ機能を搭載したスマートフォンをかざすだけで、インターネット上のサーバにアップロードされます。

そのデータは飼い主専用のWEBページで見ることができます。グラフ化されるので、ひと目で行動が判りますね。

また日々の写真をアップしたり、体重変化や食事記録なども書き込めます。

そのため、かわいい我が子の健康管理ができる、ということなんです。

つまり、単なる『歩数計』ではなく、うちの子の『健康管理ツール』と思って活用してほしい、というのが開発した私の気持ちです。」

―今後の展開をお聞かせください。

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「はい、今後は獣医師さんと連携することを考えています。

さまざまなワンちゃんのデータが集まることにより、病気の傾向分析が可能になると考えています。

また『お散歩は20分位で』、とよく言われたりしますが、はたしてそれは正しいことなのでしょうか。運動量の目安等も把握できると思っています。

それから、センサーや装着ケースのデザインバリエーションも増やせたらいいな、と思っています。 正直言いまして、この商品は公私混同しています(笑)。

だからこそ、とことんこだわった商品だと言えます。

だって、困り果てた私が愛するエースのためにこの世にあったらいいもの、を作ったわけですから。

そして、実は最近もう一頭のトイプードルのココロとも暮らしはじめました。

ふと立ち寄ったペットショップで明らかにおかしな座り方をしたガリガリの子がいて・・・。

聞けば、売れ残りで生後4カ月の子でした。その日に家族にすると決め、連れ帰りました。やはり手術をすれば治る足の病気を持っていました。

私には、この2頭を守ってあげることしかできないかもしれませんが、同じような境遇の飼い主さんはたくさんいると思うのです。

私は『わんダント』が日本の飼い主さんに安心を、犬達に楽しい暮らしを届けられると信じています。

アニマル・ドネーションさんで取材していただいた当社の今林(『どうぶつ医療』の開発 インタビュー記事はこちら)とも連携し、『富士通さんのおかげで、より安心に動物と楽しく暮らせるようになったね』と言われることが私の夢です。」

三ッ山さんが開発した『わんダント』の詳細紹介

わんダント

ずっと一緒に安心して暮らしたいから『わんダント』
東日本大震災のときに、石巻動物救護センターの動物管理システムをボランティアでいち早く作り上げ、動物のレスキュー活動に貢献した富士通株式会社。
動物業界へ参入する前から、企業規模を活かしたボランティア活動に取り組んでいます。
また『わんダント』を発売後は、クラウドを利用した『どうぶつ医療』のサービス事業を2013年からスタートする予定です(『どうぶつ医療』の担当者 今林氏のインタビューと石巻での活動はこちらに詳しく紹介しています)。
ペットも家族、が当たり前の日本で、日本を代表する企業がより快適な暮らしを実現するために動き始めています。
image 歩数計には2週間分のデータが保存できます。
最初に設定するだけで、
お使いのス マートフォン(iPhoneは除く)やパソコンで使用できます。
image データはPC上でこのような表になります。
たくさんお散歩をしてあげたくなりますね。
image ほんの16gですが、小型犬が飲みこむ危険性のない大きさになっています。
商品は、ペットショップや大手量販店、またWEBショップで購入することができます。
interv_07mitsuyama_photo4.jpg 三ッ山さんの愛犬、エース君は、『わんダント』の広告に登場しています。
撮影では、とびっきりのスマイルを披露!
image 最近、エース君には弟ができました!
ココロくんは生後4カ月で、ペットショップで売れ残っていました。
足を開いて座る姿に三ッ山さんは胸騒ぎを覚え、引き取ったのだとか。。。
手術をすれば治る足の病気を持っていました。
「なんかそういう運命みたい!」と明るく笑う三ッ山さん。
熱い開発者魂と動物への愛に共感と感動を覚えたアニドネスタッフでした。