動物愛護管理法改正にむけて
動物愛護管理法の進化と飼い主の意識向上の両輪で
不幸な犬や猫を減らしていきたい
1973年に誕生した動物愛護管理法。
その後、1999年、2005年の2回にわたって改正され、 現在次なる改正への準備が進められています。
ペット業界関係者だけでなく、 実は一般飼い主にもかかわるこの法律。
現状と今後の展望について、 環境省西山室長にお話を伺いました。
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Profile
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西山理行(にしやまみちゆき)さん
Michiyuki Nishiyama/1965年生まれ
環境省 自然環境局 総務課 動物愛護管理室・室長神奈川県出身。
筑波大学・生物学類〜環境科学研究科で生態学を学び、 「人間以外の生きものの役に立ちたくて」環境省へ。
2010年4月に自然環境局動物愛護管理室の室長への着任前は、 野生生物を担当されていたそうです。
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―動物管理愛護法の成り立ちと、その後について教えてください。
「動物愛護管理法は正式には『動物の愛護及び管理に関する法律』といい、動物の愛護と動物の適切な管理を目的に、1973年(昭和48年)に制定されました。
虐待を防ぐだけでなく、人間と動物が共に生きていける社会を目指し、動物の習性をよく知った上で適正に取り扱うよう定めています。
この法律には、動物取扱業者だけでなく、一般の飼い主も対象になる条文もあり、違反した場合は懲役や罰金が科せられます。
環境省のホームページで確認することができますので、ぜひ一般の飼い主の方に一度ご確認いただきたいと思います。
時代とともに、日本における動物を取り巻く環境も大きく変わり、1999年、2005年の2回にわたり改正が行われてきました。
2回目の改正から5年が経った現在、更なる改正を求める声が高まり、環境省では昨年から改正の検討を始めました」
―法改正に向けて現在はどこまで進んでいるのでしょう?
「環境省では、2010年の8月に『動物愛護管理のあり方検討小委員会』を設置しました。
現在(2010年12月)までに9回開催してきましたが、動物取扱業者、法律家、動物行動学者、行政など、様々な分野の専門家18名が参加し、熱く有意義な議論や意見が交わされました。
その中でも先行して話し合われてきたのが、特に緊急性の高い課題として声が上がっている、ペットの販売方法や環境、幼齢動物の販売等を含む「動物取扱業の適正化」に関してです。
様々な意見が出されましたので、一旦取りまとめ、今後は方向性を見出す作業へと移り、中間取りまとめとして発表する予定です。
法改正までの道のりは長いですが、ぜひ日本にとって良い方向に進むよう、環境省としても尽力していきたいと思っています」
―「動物取扱業の適正化」に関しては具体的にどのような意見が出されたのでしょうか?
「例えば、ペットショップでの深夜販売、特定の店舗を持たない移動販売、インターネットでの販売に関してですが、動物の福祉を考えると、販売形態の規制や数値による規制を検討する必要があるのでは?という声が上がっています。
このほかにも、生後間もない動物の販売に関してや繁殖に関しても、具体的な数値規制の検討を求める声が。
いずれも動物の命にかかわる問題ですので、数多く上がっている課題の中でも緊急性の高い問題として、認識をしております」
―西山さんご自身は、今回の法改正にどんな想いで臨まれているのでしょうか?
「不幸な動物を減らしたい。
それは殺処分数を減らす、ということだけでなく、生きてはいるけれど、恵まれない環境にいたり、十分な愛情を与えられていない動物たちを減らすことを含みます。
法律を帰ることで状況がよくなる部分があればもちろん変えていきたいと思いますが、飼い主の方々のモラルや知識の向上との両輪が揃わなければ、不幸な動物は減っていかないと思います。
犬猫の殺処分数はここ10年で半減しています。
しかし、犬の殺処分数は順調に減っているのに比べ、猫の殺処分数の減りは鈍い状態。これは外にいる猫が繁殖してしまう問題が大きいと思われます。
犬につきましては引き続き飼い方などの徹底を行っていき、猫については飼い主のいない猫の不妊去勢など、管理の仕方について啓発を行って行きたいと思います」
―私たちにできることはありますか?
「まずは現状を知ってほしいと思います。たとえば、殺処分される犬や猫がなぜ存在してしまっているのか、幼すぎる動物を販売すること、そして購入することの何が問題なのか。
環境省では、ホームページにて様々な情報を公開し、一般の方々の意義と知識の向上に努めています。
適切な飼い方やマナーについてから始まり、犬や猫の殺処分の現状について等の詳しいデータ、さらには、2010年の小委員会の議事録についても掲載しています。ぜひご覧になってみてください」
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http://www.env.go.jp/から「自然環境・生物多様性」の中の
「動物愛護」のページに詳しい情報が掲載されています。