行政施設レポート

札幌市動物愛護管理センター (あいまる さっぽろ)見学レポート

アニマル・ドネーションでは、動物のためにがんばる行政施設への取材を行っています。
行政の施設というのは、いわゆる「保健所」や「動物愛護センター」と呼ばれている施設です。都道府県や市町村の予算によって運営管理されています。

今回は、「札幌市動物愛護管理センター(愛称:あいまる さっぽろ)を取材し、お話を伺いました。(取材:2024年1月)

 

外観は、可愛らしい楕円形。温かな印象です。お車でお越しの方は、札幌駅から約8分。公共交通機関でお越しの方は、JR八軒駅から徒歩約14分とアクセスの良い場所にあります。

↓アクセス情報の詳細はこちらより

https://www.city.sapporo.jp/inuneko/main/access.html

 

 

建物に到着すると、可愛らしい入り口がお出迎えしてくれます。予約をせずとも、ふらっと立ち寄ることが出来ます。


入り口を入ると、目の前には、猫の遊び場が!今回は、猫たちはいませんでしたが、一番多い時で3匹くらいの猫が入っていたそうです。猫たちの普段のくつろいでいる様子を見れるのは素敵ですよね。


 

階段を上がると、犬の運動スペースが姿を現します!保護されているワンちゃんたちが楽しそうに遊んでいる姿を見ることが出来ます。

 

運動スペースの左側には、太いパイプが。これはアースチューブと言って、 換気のための外気を取り入れた後、地中をくぐらせてから室内に取り込むためのパイプです。地中は外気に比べて、夏は涼しくて冬は暖かいため、夏場はクーラー代わりに、冬場は暖房代わりになります。他にも、断熱など色々な建物の工夫により、本来必要である電気の50%ほどをカットしています。

 

今回、お話を聞かせていただいた場所はこちら。センターの職員様、待望の多目的ホールです。最大100名程度の収容を想定して造られました。普段は、犬猫の飼い方セミナーや講習会を実施している場所です。

施設概要

▼札幌市動物愛護管理センター あいまる さっぽろ

所在地:〒060-0022 北海道札幌市中央区北22条西15丁目3−6

開設:令和5年11月

開館時間:8:45~17:15

休館日 :土日祝祭日

電話番号:011-736-6134

新施設オープン。温かみのある開かれた施設を目指して

札幌市動物愛護管理センター(あいまる さっぽろ)の指導係長 石橋佑規さんにお話を伺いました。

 

-新施設の設立経緯を教えていただけますか?

 

「始まりは、平成27年の市民による陳情ですね。今まで稼働していた『札幌市動物管理センター』と『札幌市動物管理センター福移支所』は、ハード面としての機能が今の時代にそぐわなくなってきていたのです。」

 

-ハード面としての機能の変化について詳しく教えてください。

 

「まずは、収容動物の健康管理や譲渡に向けた機能の強化です。10年ほど前は、福移支所で、1年に犬約700匹、猫約2500匹を収容していました。犬は、迷子犬が多かったため、一定期間収容し、元の飼い主や新しい飼い主を探していたのですが、猫の場合は残念ながらほとんどが殺処分されていました。そのため、福移支所は、設計上、猫を収容する部屋がほとんどありませんでした(図1参照)。しかし、近年は犬の収容が格段に減り、猫の収容が大半を占めるようになっていたほか、年単位の長期収容となるケースも増えました。そのため、収容動物の健康管理を考え、手術室やレントゲンを設置したほか、猫の収容スペースを充実させました。そして、センターの職員として、6 名の獣医師が勤務しています。それ以外に役職者2名が獣医師免許を持っています。

また、市民向けの教育普及機能の強化にも努めました。猫の遊び場や多目的ホールを設置することにより、市民の方々が動物を身近に感じ、動物愛護の精神を学べる場として活用いただきたいと考えています。多目的ホールにて、定期的に犬猫の飼い方セミナー等を開催出来ていることも喜ばしく思っています。」


(図1)

 

-もう一つ、こちらのセンターの特徴として、大量にまとめて動物を処分する殺処分機がないですよね?殺処分機を設置しなかった経緯などございますでしょうか。

 

「そうですね。犬に関しては、ここ8年間、殺処分を行っていないです。猫においても、ここ数年は負傷して収容されたものの、治療の見込みがなく苦痛からの解放を目的として年に数頭を安楽死とするに留まっており、たくさんの動物を一度に殺処分しなければいけない状況ではなくなったため、殺処分機を作らない判断に至りました。」

 

-新施設、とても特徴的な造りで驚きました。楕円型の外観や木材をふんだんに使用した内観など。新施設に込めた想いはありますか?

 

「今までの『冷たくて怖い』という動物管理センターへの暗いイメージを少しでも払拭できればと考えました。ネガティブな印象のままでは、動物愛護に関する啓発活動をしても説得力に欠けるからです。温かみのあるイメージに変え、我々が発信することに耳を傾けてもらえればという願いを込めました。」

 

-確かに、何度も通いたくなるようなアットホームな施設ですよね。「あいまる さっぽろ」という愛称も素敵です。どのように愛称を決めたのでしょうか?

 

「愛称につきましては、1ヶ月間公募を行い、471件の応募をいただきました。その後、本市の動物愛護管理推進協議会で議論をいただいて決定しました。『愛+アニマル』や『愛+まるっと』など、新センターが動物にとって幸せな施設になってほしいという想いが込められています。」

 

-あいまる さっぽろがオープンして話題となりましたよね。様々なメディアの取材も受けられたかと思います。やはり反響は大きかったですか?

 

「そうですね、センターを訪れてくださる方はかなり増えました。譲渡を希望される方も増えて、多い日では1日6件ほど譲渡が決まります。しかしそれと同時に、新しくセンターをオープンしたことにより、『飼っている犬猫を手放したい』という相談も増えてしまいました。そのため、センターの猫の収容数が思っていた以上に増えてしまったんですよね。手放したい人たちの理由は、飼い主さんの病気・死亡や経済的な理由、アレルギーなど様々ですね。センターの良さをアピールしたはずが、却って『ここならウチの子も大切に育ててもらえそう』とペットを手放したい方の後押しをしてしまうかたちとなってしまいました。職員としては、大変残念に感じています。恵まれない環境にいる犬猫が多いこと、様々な事情で犬猫を手放す飼い主さんが想定外に多いことに驚きました。」

 

-殺処分数の減少に向けて職員の方々の努力が感じられます。特に、Xでの「スタッフの推し猫紹介」(写真1) には感動しました!

 

「ありがとうございます(笑) しかし、SNSでの発信は、半分やむを得ない事情です。昨年の暮れに起きた多頭飼育崩壊の影響で、たくさんの猫が収容されました。

SNSは、

1.少しでも多くの人の目に留まり、猫の譲渡を進めるため

2.多頭飼育崩壊現場からレスキューされた猫たちは、見た目がとても似ている子もいるため、「スタッフの推し猫」というかたちで差別化をすることにより、引き取りを希望する方が猫を選びやすくするため

といった意図があります。」


(写真1)

 

-現在抱えている課題はありますでしょうか?

 

「大きなものとして2つあります。1つ目は、飼い主のいない猫への対応です。数自体は、減っていますが、未だに餌やりさんがいる地域があります。センターが全てを担うわけにはいきませんが、地域猫やTNRなどの活動をどのように支援していくかを考える必要があると思っています。2つ目は、多頭飼育崩壊への対応です。適正飼育や避妊去勢を推進し、なるべく芽が小さいうちに問題を探知していきたいです。もちろん全体に向けての適正飼育に関する発信も必要ですが、多頭飼育崩壊はおそらくその情報が届いていないところで起きていると考えています。そのため、社会福祉を担当している部署とも情報を密に共有し、多頭飼育崩壊を予防できる仕組みを構築する必要性があります。」

 

-あいまる さっぽろが最終的に目指す姿とはどのようなものなのでしょうか?

 

「一言で言うと、このセンターが空っぽになることです。保護された犬猫にはすぐに新しい飼い主が見つかり、何年も施設にいる犬猫はいない。そしていずれは保護されることもなく、センターは空っぽになる。つまり、動物を飼っている人も飼っていない人も動物の正しい扱い方を身につけている社会だと思います。札幌市が掲げている『人と動物が幸せに暮らせるまち・さっぽろ』の実現を目指したいです。」

 

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今回は、市民待望の施設、札幌市動物愛護管理センター(あいまる さっぽろ)を訪問させていただきました。

外観や内観、そして職員の方々の熱意が感じられ、温かみのある印象を受けました。今までの動物管理センターへのイメージである「冷たくて怖い施設」から、「温かみのあるオープンな施設」へと変わり始めています。そして、適正飼育セミナーや子ども向けの命の出張教室など、動物愛護の普及啓発に向けて先進的な活動をされています。

今後も、札幌市動物愛護管理センター (あいまる さっぽろ)の保護・譲渡活動に大きく期待しています。

 

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この度、取材に協力してくださった札幌市動物愛護管理センター(あいまる さっぽろ)の指導係長 石橋佑規さんの愛猫のむぎちゃんです。元保護猫の可愛らしい猫ちゃんです(^ ^)

改めまして、この度は貴重なお時間をいただきありがとうございました!


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