【フランス動物法セミナー開催報告】フランスの動物保護法改正と動物福祉の最前線を学ぶ
NPO法人どうぶつ弁護団、一般社団法人JELF(日本環境法律家連盟)、フランスの法律事務所 Claré Légal、及び公益社団法人アニマル・ドネーションの計4組織共催による、フランス動物法セミナーが開催されました。
ボルドー弁護士会に所属する弁護士及びフランス動物党創設者であるエレーヌ・チュイ氏に登壇いただき、フランス動物党の活動内容並びに動物保護法改正の全容及びその影響等についてお話いただきました。
◆日時:2025年6月18日 水曜日 17:00-19:00
場所:オンライン
対象者:メディア関係者、アカデミック関係者、行政職員及び議員の方々
人数:70名
テーマ:「フランスにおける最新の動物保護法改正の概要」
講師:Hélène Thouy (エレーヌ・チュイ)
セミナーフル動画はこちら: https://www.youtube.com/watch?v=fIlXQh14SY4
◆パートI:法律と動物 ~法制度の整備と現場の課題~
まず取り上げられたのは、2021年11月に改正されたフランスの動物保護法の概要です。
ペットショップにおける犬猫の販売禁止やイルカショーやポニー乗馬の禁止、ペットの購入者がペットの飼主として必要な知識と責任を十分に備えていることを確認する証明書制度の導入、犬猫のマイクロチップ義務化等についてお話されました。
また、畜産動物に関する法規制の現状や、動物に対する虐待行為が発覚した場合、どのように規制当局に通報され、調査や処罰に至るかというプロセスについても詳しく解説がありました。実際の裁判例を挙げながら、加害者に対する司法の対応、裁判官の視点についても言及され、法律を“生かす”ための課題が浮き彫りとなりました。
これらの改正は、動物を「商品」や「娯楽の道具」として扱うことを制限し、動物の福祉を優先させようとする社会の意思を明確に示しています。対照的に、日本ではペットショップでの犬猫販売が一般的に行われ、イルカショーやポニー乗馬も今なお各地で続けられています。さらに畜産動物の扱いについても、問題が依然として改善されておらず、動物虐待に対する処罰も国際的に見れば軽い水準にとどまっています。こうした点からも、日本の動物福祉政策は、規制や意識の面で大きく遅れており、今後どのように改善していくのかが問われています。
◆パートII:政治と動物 ~動物党の設立と影響力~
後半では、フランス動物党の設立経緯とその社会的意義が語られました。
フランスには、動物福祉の向上と動物の権利獲得を目指して活動する「フランス動物党」があります。実はヨーロッパ各国にはすでに10党以上の動物党が存在し、議会で一定の影響力を持つ国もあります。
一方で、日本では「動物党」という概念はあまり馴染みがなく、政治に動物福祉を直接反映させる動きはまだ限定的です。
フランス動物党は、2019年の欧州議会選挙で成果を上げ、2021年の法改正にも影響を与えました。しかし、2022年の大統領選出馬では多くの困難に直面します。政治の現場で動物の声を届けることは容易ではありません。それでも挑戦を続け、社会に変化をもたらそうとする姿勢は、参加者の大きな共感を呼び、動物福祉を政治で議論する重要性を改めて示すものでした。
◆参加者の声
「講師の説明が非常にわかりやすく、専門的な内容も理解しやすかったです」
「海外の制度を詳しく知ることができ、とても勉強になりました」
「動物福祉の分野において、日本が今後進むべき方向性を考えるきっかけになりました」
「フランス以外の国(ドイツやイギリスなど)の動物愛護法もぜひ取り上げてほしいです」
アンケートの結果、多くの参加者からセミナー内容に対する高い評価をいただきました。
また、「今後も継続して参加したい」との声も寄せられ、動物福祉に対する理解と意識の高まりが感じられました。
◆おわりに
今回のセミナーは、日本においても動物保護や動物福祉を進めるためのヒントに満ち溢れていました。法律・政治の両面から動物の権利を考えることが、より良い社会への一歩となることを実感させられる時間となりました。
今後もアニドネでは、国内外の先進的な取り組みを紹介しながら、動物と人が共に幸せに暮らせる社会づくりを目指してまいります。
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