犬猫の社会課題をどう感じている?大学生の認知・行動調査2025

保護犬や保護猫のことを、学生たちはどれくらい自分ごととして感じているのだろうか。
そんな問いを胸に、公益社団法人アニマル・ドネーションは京都女子大学での講義の機会をいただき、「日本で起きている動物(犬猫)問題」についてお話ししました。講義後にアンケートを実施し、170名の学生が、動物福祉という言葉の認知や、身近に感じている課題、これから自分にできそうだと思う行動について答えてくれました。
一頭一頭のいのちと向き合ったとき、大学生の目には何が映り、何を感じたのか。今回の記事では、その回答の一部をご紹介します。学生たちの率直な声が、あなた自身の気づきや、周りの人と対話するきっかけになれば嬉しく思います。
1. 「動物福祉」という言葉の認知度
「動物福祉」という言葉は、ニュースやSNSで目にする機会が少しずつ増えてきたものの、まだ自分ごととしてとらえている人は多くないのかもしれません。今回、京都女子大学の受講生 170 名に同じ問いを投げかけたところ、その実態がはっきりしました。
調査では、「動物福祉」という言葉を「初めて聞いた」と答えた学生が全体の 54.1%と最も多く、「聞いたことはある」が 31.2%、「知っていた」と答えた学生は 14.7%にとどまりました。数字だけを見れば、まだ十分に浸透しているとは言えない状況です。
一方で、この結果を悲観的に受け止める必要はないと感じています。多くの学生が「ここで初めて知ることができた」という事実は、この講義が、動物と共に生きる社会へとつながる入口になった、という小さくも大きな意味を持っているからです。
講義後のコメントを読むと、「知らなかった自分を責める」のではなく、「これから関わっていきたい」「もっと知りたい」という前向きな声が多く見られました。犬や猫の息遣いに寄り添いながら、「動物も人と同じように痛みや恐れを感じる存在だ」と初めて真っ正面から受け止めた学生も少なくありませんでした。
今回の結果は、これまで動物福祉に触れる機会が少なかった若い世代に対して、まずは知るきっかけを届けることがどれほど大切かを、静かに教えてくれていると言えます。ここから先の一歩をどうつくっていくかが、私たち大人の責任でもあります。
2. 3つの動物問題を身近に感じたことがあるか
アニドネが問題視をしている三つの動物問題「野犬問題」「多頭飼育崩壊」「シニア(人と動物)問題」について、学生たちに身近に感じたことがあるかを尋ねたところ、58.2%が「初めて聞いた」と答えました。続いて「聞いたことはある」が41.8%となり、多くの学生にとって、これらの問題はまだ十分に届いていないことが明らかになりました。
講義を通じて、動物も人と同じように不安や痛みを感じる存在であることを、初めて自分事として受け止めた学生も少なくありませんでした。今回の結果は、若い世代へ問題そのものを知るきっかけを届ける重要性を示すものとなりました。

3. 身近に感じた問題の種類(複数回答)
三つの動物問題のうち、どの課題を身近に感じたことがあるかを尋ねたところ、「シニア(人と動物)問題」が 34 名で最も多く、続いて「多頭飼育問題」が 31 名、「野犬問題」が 25 名となりました。
感じ方に違いが出た背景には、それぞれがこれまで触れてきた情報や経験の差があるのかもしれません。数字の大小にかかわらず、学生たちは動物の置かれている現状にそっと目を向け、自分の暮らしとのつながりを探し始めているのかもしれません。
今回の回答からは、「知ること」が学生たちにとって確かな第一歩になっていることがうかがえます。どの課題であっても、その入り口に立った瞬間のまっすぐな感性こそが、これからの社会を少しずつ変えていく力になるのだと感じました。

4. これから自分にできそうだと思う行動(複数回答)
講義のあと、学生たちに「これから自分にできそうだと思う行動」を尋ねたところ、最も多かったのは周囲に話す(68名)でした。
家族や友人との会話を通して、自分自身の理解を深めつつ、身近なところから広げていきたいという前向きな気持ちがうかがえます。続いて、寄付する(43名)が多く挙がりました。保護犬や保護猫の現場を支えるために、寄付という形で行動に移したいと考える学生が一定数いることがわかります。そのほか、イベントに参加する(38名)や、SNSで発信する(18名)など、行動の取り方はさまざまです。小さな一歩であっても、自分の出来る範囲から関わりたいという意識の表れといえます。一方で、特にない(4名)や、動物とともに過ごす(3名)、動物施設に赴く(2名)といった回答もあり、どのように関わるかは学生それぞれで異なります。初めて向き合ったテーマであるからこそ、まずは自分の気持ちを整理したいと考えた学生もいたようです。
今回の結果からは、知ったことをきっかけに、できることから行動したいと考える学生が多いことが見えてきました。

5. 学生の印象的なコメント
講義後のアンケートでは、多くの学生が率直な思いを寄せてくれました。動物との距離の取り方や、自分に何ができるかを考え始めた姿がうかがえます。ここでは、そのコメントをご紹介します。
・動物保護の活動には多くの人が関わっていることを知り、自分ごととして向き合わなければいけないと感じたという声が寄せられました。
・動物は人間と同じように痛みや恐れを感じる存在であり、軽い気持ちで迎えるのではなく、命と向き合う姿勢が必要だという気づきが多く見られました。
・飼い主の責任や終生飼養の重要性を改めて感じたという学生も多く、ペットブームの裏側にある課題を深く理解したという声がありました。
・動物に関わる仕事や活動に携わってみたいという前向きな意見も寄せられました。
・アニマル・ドネーションのサイトを見て、保護犬や保護猫の存在をより身近に感じたというコメントもありました。
学生たちの言葉には、知ったことを抱えたままにせず、自分の手の届く範囲から変えていこうとする素直な気持ちがにじんでいました。そのまっすぐさが、動物たちの未来を確かに明るくしていくのだと感じます。
調査まとめ & 今後に向けて
今回の調査からは、動物たちが置かれている現状や、福祉の視点が若い世代にはまだ十分に届いていないことが見えてきました。ただ、その気づきの瞬間から、学生たちが自分のこととして考え始めていた姿が随所にありました。
一方で、講義を通じて初めて知ったことをきっかけに、動物と人が共に生きる社会について考え始めた学生が多く見られました。自分にできる行動を探そうとする姿勢も強く感じられました。
また、保護団体の取り組みや寄付によって支えられている現場を知ることで、動物の命に向き合う責任や、共に暮らす社会のあり方について前向きに考える学生も増えていました。こうした気づきは、動物福祉を将来の選択肢として意識したり、日常の行動を変える一歩につながるものです。
アニマル・ドネーションでは、これからも教育機関と連携しながら、動物たちの息遣いがひとりでも多くの若い世代に届くよう、丁寧に伝える活動を続けていきます。一人ひとりが小さな行動を積み重ねることで、動物も人も安心して暮らせる社会に近づいていけると考えています。
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調査結果をご覧になって、皆さまはどう感じられましたか?
今の感覚や意識の変化について、身近な人とぜひ共有していただけたら嬉しいです。
今回の内容は、京都女子大学で実施したセミナー後アンケートをもとに作成しています。セミナーの様子や学生の学びはこちらの記事からご覧いただけます。
フルレポートはこちら(PDF)からご覧いただけます。
調査概要
●調査の目的:犬猫保護団体が直面している課題やニーズを把握し、保護犬猫を迎えやすい社会づくりや、動物福祉向上に向けた取り組みを進めるための基礎情報を得ること。
● 調査時期: 2025年9月23日
● 調査方法: オンライン調査
● 調査元 : 公益社団法人アニマル・ドネーション
● 調査協力: 京都女子大学
● 調査回収数:170(回答者数:170)
● アンケートリサーチ:アニマル・ドネーション Hitoshi
