動物福祉ランキングで上位のスイス。かの地での猫の迎え方や暮らし方を現地の愛猫家さんにアニドネがインタビュー。猫という存在、そして彼らの気持ちや暮らしぶりを考えた人間側の配慮には、日本の動物福祉を考えるにあたりヒントがありました。ぜひお読みください。

Profile

宮村かおるさん&
ころんちゃん(猫)

スイス ジュネーヴ在住。1986年から海外移住してまもなく40年。3代目となる現在の愛猫『ころんちゃん』は現在7歳。新聞で「生後7カ月の子猫、差し上げます」の記事を見つけ迎えた。日本に帰国する際は、愛猫ファースト。5人の猫のお世話係さんと連携しながら『ころんちゃん』が快適に過ごせるように最大限に配慮している

スイスでは猫はどのように迎えるのでしょうか?

「日本では当たり前のようにある犬・猫を展示販売するペットショップというものは、スイスでは見かけません。ですから、血統書や猫種にこだわる方はネットでブリーダーさんを見つけ直接連絡をとり受け入れの時期や値段を交渉しますね。ただ、それは少数派で猫は基本的に保護シェルターから引き取ったり、地元新聞のアニマル欄の譲渡情報を見て個人間でやり取りをします。

猫好きクラブが複数ありネットで猫自慢・情報交換が楽しく行われています。都心の方ではほとんど野良猫は見かけませんね」

宮村さんと現在暮らす『ころんちゃん』は新聞で情報を見て写真を送ってもらい「この子だ!」と運命を感じ大雪の中5時間かけてお迎えにいったとか。

「はい、実は保護シェルターから迎えようと思ったのですが、私の仕事(観光ガイド)柄、自宅を空けることもあり、また当時住んでいたアパートはベランダがなかったんです。そうなると大変残念だったのですが、保護シェルターの譲渡条件と見合わず譲渡をしてくれませんでした。それで新聞で見つけた個人の方に連絡をして、『ころん』を迎えました。保護猫を迎えたいという私の願いはかないませんでしたが、保護シェルターの猫の環境を優先させる考え方は動物福祉が進んだ国であると感心しました。」

『ころんちゃん』。あまり人見知りをしませんが2人ほど思い切り嫌いな人がいるようで彼らが来ると豹変するそう

宮村さんにとって猫との暮らしとは?

「最高に癒される存在です。仲良く温和に彼女の人権ならぬ猫権を尊重し、猫らしく暮らして欲しいと願っています。言葉の話せない、弱い立場の彼らを守ってあげられるのは人。たとえ短い間でも幸せな時間を過ごしてもらいたいと思っています。彼らに優しくなれる事に私も幸せを感じています」

現在の『ころんちゃん』には、5人ものお世話係さんがいるそうですね。

「はい。同じアパートの隣人や近所に住むお友達などです。私は仕事柄、数日間留守にする事も多いです。また日本に一時帰国もしますが留守中はお友達がお世話をしてくれます。逆もしかりで私もお友達の猫ちゃんのお世話係になっています。猫を通じて異国でもありがたいコミュニティが作れています」

お友達の預かり猫『あんずちゃん』と仲良く遊ぶ。2匹で何か発見した様子

初代と2代目の猫ちゃんとのこともお聞かせください。

「初代はフランスの田舎町の農家で子猫がたくさん生まれ、引き取り手がないと殺処分になると聞きお迎えに行きました。1匹だけ残っていたのが『とらちゃん』です。体が弱そうで脱肛でお尻がかわいそうな状態で、、、獣医さんには長く生きられないだろうから安楽死を薦められたのですが、お尻は投薬を行い1ヶ月で完治し、5歳まで生きてくれたんです。

お友達から『とらちゃん』に似た子が生まれたと連絡があり3か月待ってうちに来たのが、2代目の『とらやん』でした。とても恥ずかしがり屋で幻の猫と言われるほど我が家で彼女の姿を見た人はあまりいませんでした。腎不全で18歳のとき旅立ちました。その際は獣医さんと話をし、『とらやん』の状態を最優先に考え安楽死を選択しました」

安楽死を選択された時の心境を教えてください

「『とらやん』は、具合が悪くなって病気の進行がとても早く2か月で歩けなくなり、それからは体を起こす事も出来なくなってしまいました。

日中はお友達も代わる代わる様子を見に来てくれていました。

私が帰宅すると何とか大好きなちゅーるを少しだけ食べてくれましたが、その頑張る姿を見るのは本当に辛かったです。

頻繁に往診に来てくれたピントー先生は 

『もうこの子は猫としての楽しみや喜びを感じられなくなってしまった。

彼女の為に出来ることを決めてあげる時が来たと思うよ』と彼女を見ながら言いました。

安楽死に関しては日本とスイスでは、捉え方に大きな違いがあると思います。動物の尊厳を考え安楽死を選ぶのか、命の燈が尽きるまで見守るべきなのか、どちらも正しいんだと思います。

私は生きてさえいてくれれば良いと思う分 この子が苦しい思いをする時間が長くなる…

ずいぶん悩みずいぶん泣きました。

数日後、お友達も立ち会ってくれ、いつも日向ぼっこをしていた窓の傍で彼女を見送りました。

ピントー先生は『気が済むまで抱っこしてていいよ』と、とても優しく配慮してくれました。」

スイスでは社会性のある動物は複数飼育が義務

個性的な猫たちと暮らしてきた宮村さん、スイスならではの動物全般との向き合い方をお聞きしました。

「そうですね。動物の感情に配慮する姿勢がある国だと感じます。例えば、施行された2008年に、非常に話題になったので動物を飼育している多くの方が理解している法律があります。モルモットや鳥などの社会性のある動物を飼育する場合、単独飼育が禁止されているのです。それは彼らの特性に配慮した法律なんですよね。元々自然や動物にやさしい国だと自負しているスイスですが、この法律が決まった時には『そこまでしなくても!?』という意見もあり賛否両論ありました。

 

 また、2018年にはロブスターなど甲殻類を生きたまま茹でると法律違反になりました。彼らに痛点があることが科学的エビデンスで証明され、電気ショック等で気絶させてから調理をしなければならなくなりました。これも大変話題になり、その当時レストランでロブスターやカニを食べる際にサービスの人に冗談交じりにどのように処理されたのか聞く人も多かったです。

実際にはスイスには海が無いのでこれらは輸入でそのほとんどが冷凍で入ってきますから該当するものが少ないですね。」

画像のモルモットの他に、小型ネズミ、スナネズミ、大型ネズミ、デグー、チンチラ、鳥類のウズラ、コンゴウインコ、オウム、インコ、カナリア、金魚などの単独飼育は禁止されているスイス

動物の感情や元々持っている特性に配慮した法律があることは、とてもスイスらしいと感じますね。身近な猫ちゃんたちにもやさしい配慮が見られるのだとか?

「はい、猫階段ですね。高いところを上り下りするのが好きな猫ちゃんのためお家の外に猫階段をつける家があるんです。都心では猫は外に出さないのでほぼ見かけませんが、それでも中庭がある所では猫ちゃん達も自由にお散歩しているようです。」

2階と3階にまたがり共同階段が設置されているスイス郊外の家
 
おそらく住猫だと思われる美人猫さん。宮村さんが写真を撮っていると優雅に猫階段を上り下りしてくれたとか

法律面の整備もしかり、人々の意識も高いと感じた宮村さんのインタビュー。

動物に対する人間側の姿勢は、その国の文化や宗教、歴史的背景や国の豊さによって大きく変わります。ですから、国による評価は簡単にはできませんが、スイスの動物への向き合い方は日本ももっと取り入れてもいいのでは、と感じたインタビューでした。

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