広大な土地、北海道で多頭飼育崩壊のレスキューに奮闘
2024年12月に新たにアニドネ認定団体となり、北海道で保護・譲渡活動に奮闘されている「非営利ボランティア団体『犬のM基金』」さん。不幸な犬を救うため、預かりボランティアで全頭無償で犬を譲渡しています。そんな犬のM基金のスタッフ小蕎さんに、日々の活動の様子や多頭飼育崩壊現場からレスキューした際のお話を伺いました。
預かりボランティアで心熱く行動あるのみ!
犬のM基金では、シェルターを持たず、預かりボランティアという形で保護・譲渡活動を行っています。この背景には、保護依頼から決定までの精査、現地の確認、引き取り、預かりボランティア宅へと、長い道のりを経てそれぞれのボランティアが連携する信頼関係があることに尽きます。
ー働くスタッフさんについて教えてください。
「飼い主がいる現場では、時には生まれ育ちながら野犬に近い集団化で多頭飼育崩壊が起き、150頭がうごめく現場もあり、中型大型犬の一斉保護は容易に叶わない状況が待ち受けています。しかも、この状態が異様であることに無頓着な飼い主も多く、放棄確約を得るまでに果てしない時間がかかります。ようやく着手でき現場に入った時には、すでに息絶えて時間が経ち、横たわる光景は何度目にしても慣れるものではありません。空腹や縄張りで争いが起き、弱い者や子犬、容態が悪い子が犠牲になるのは、どこの現場でも共通しており、まずは、その子たちを優先に『選択』する第一陣の保護からスタート。その苦悩は、現場を見たボランティアしか知り得ません。絶対に最後の一匹まで未来へ繋げるために、『選択』するしかないのです。そして引き取り後は預かりボランティア宅へ。どんな子か容姿しかわからない中で自宅へ連れ帰り、いよいよ家庭生活がスタートします。その中には、見た瞬間から容態が深刻な子たちも多く、大きな腫瘍がいくつもぶら下がる子、眼球がむき出しになっている子、シラミだらけの子、重度の疥癬症の子、歩くことさえできない子も。そんな子たちを率先して連れ帰ってくれる預かりボランティアが、長木みどりさんです」
キャバリアンコッカ―スパニエル ビフォー
キャバリアンコッカ―スパニエル アフター
ーどのような活動をしているのでしょうか
「もともとは『ビビ』の迎え主。多頭飼育崩壊現場から保護した子で、極度のビビりで触れない噛みつくことで一年近くご縁のなかったビビを迎え、幾度となく嚙まれながらも可愛い可愛いと育て、今では甘えん坊と化し噛み犬の面影なし!ビビを通して会の活動を知るうちに、一助になりたいと預かりボランティアとして参加。すぐに治療を要する緊急性ある子を預かり、余命宣告を受けた多くの子たちを、新しい家族へと結ばれない分、家族同然の愛情を注ぎ最期の時まで寄り添ってくれています。多頭飼育崩壊現場では飼い主でも触れない犬も多く、現場ボランティアが捕獲し連れ帰るだけでも大変な暴れ噛み犬にも、分け隔てなく接する生活の中で、甘える喜びを知り、はしゃぐようになる様子には脱帽しきり。ほわんとした雰囲気の中に犬たちのために心熱く行動的な仲間の一人です。多頭飼育崩壊現場では、ボランティアたちが車で何時間もかけて通い、泥なのか排泄物なのか蓄積しているものを掘り起こし、中に紛れている割れたガラスやビニールが残らないように運ぶ。預かりに手を挙げたボランティアは顔を覚えてもらうために、お世話ボランティアは、人間を知ってもらうために、残っている子たちを保護し、幸せな巣立ちを見届けるまで続きます。犬たちが幸せに生きて欲しい気持ちで集まった犬大好き集団は、皆様の応援ご支援のもと、いつか幸せしかない犬生を最期まで全うすることが当たり前の世の中になる日まで、行動あるのみ!です!
活動熱心で行動的な預かりボランティアのみどりさん
保護犬「コロ助」の成長
2024年12月、北海道のとある地域で犬の多頭飼育崩壊現場から、2ヶ月の子犬を保護しました。
ー当時の現場はどのような状態でしたか?
「現場は風も強く、陽も当たらず寒さが厳しい場所でした。お母さん犬と離れた子犬は、帰りの車内、クレートでとても静かでした。預かり宅に到着し、まずはシャンプーをして汚れを落としました。ポヨポヨのお腹で、コロコロ可愛い風貌から『コロ助』と名前をつけました」
多頭飼育崩壊現場でのコロ助
ーその後の預かり宅での様子を教えてください。
「1番目の預かり宅で、すくすくと成長し犬社会を学んだ後、2番目の預かり宅では、散歩の練習や北海道犬らしい気質を指導され、譲渡に向けて社会化訓練を頑張っていました。そんなコロ助でしたが、どうやら排泄がうまくいかない。まだ子犬とはいえ、これはおかしい。病院で検査したところ、尾骨が『Z』の形に曲がっており、しっぽも折れている。そのせいで排泄機能に関係する神経の麻痺がある。との診断でした。『排泄したい』という感覚はありますが、『排泄し終わった』という感覚が分からず、排泄後も歩き続けてしまうのです。この状態は、成長過程で改善する可能性も、悪化する可能性もあるとのことでした。過酷な状況から生きて幸せを掴むために当会へやってきたコロ助ですが、障がいがある事が判明したのです。
そんな、状況をものともせず天真爛漫に成長しているコロ助は、愛情を注いでくれるボランティアさんのもと、楽しく生活しています。この障がいを理解し、コロ助の全てを受け入れてくださる迎え主が必ず来ると信じています」
譲渡会やお店でのコロ助の様子
牛舎での多頭飼育現場
北海道の酪農家敷地で一頭の野犬が捕獲され、その犬が殺処分されるのはかわいそうと引き取ったことが今回の多頭飼育崩壊の始まりでした。
ー当時の詳しい状況をお聞かせください。
「北海道酪農地帯は放し飼いが多く、不妊手術をするという意識がまだ定着されていないこともあり、放し飼いされている犬達と野犬が交配を続け増えた結果、2023年2月『200頭を超える犬達のフードが買えない飼育困難になっている』と相談が入りました。現地へ赴いた私たちの目に飛び込んできたのは、屋外飼育されている約50頭はいるかと思われる中型犬雑種の犬達。残りの犬達はと探した結果、牛舎に100頭以上いるであろう犬達が飼育されているのを発見して、驚きを隠せませんでした。
薄暗い牛舎に入ると、糞尿だらけの床と牛たちの合間を自由に動きまわって部外者に吠えてくるたくさんの犬達と対面、衝撃的な光景に声も出ない状況でした。犬達は、部外者に吠える、怯えて身を隠す、背中を見せると噛みついてこようとする人慣れしていない犬達を観察、簡単に捕獲できる犬達ではないことは一目瞭然。うす暗い牛舎に目が慣れてきた頃、冷たいコンクリートの上に寄り添う子犬たち、低体温でぐったりとしている子犬などを発見。この過酷な環境の中生きていてくれた子犬たちの生命力の強さに驚きと感謝しながら、まず弱っている子犬達を確保し、命の危険に巻き込まれる可能性ある小さな子からレスキューを開始。同年6月までに成犬、子犬あわせて54頭引き取らせていただきました(引き取り後、妊婦犬が出産した子犬6頭も含む)。同時に、地元の行政へ避妊去勢手術をすることへの協力の提案をさせていただきました」
牛舎に放し飼いされている犬たち
ーレスキュー後、その場所はどうなったのでしょうか。
「複数の犬達が古い壊れかけた犬舎を自由に出入りしているのを見て、放し飼いの犬達が増えないようにと現地から約280km離れた札幌から犬舎の補強、修繕など私たちができることとして活動しました。行政からの依頼で他団体様に不妊手術をしていただいた後は、牛舎での犬の飼育は、動物愛護管理法や飼育衛生管理基準に違反することもあり、牛舎から犬達を出す必要がありました。出すにしても、当然100頭近くの犬たちを飼育する場所はありません。飼い主さんにもその費用の捻出は難しい。そこで、企業様から資材のご提供いただきながら、男性ボランティア中心に雪が降る前の完成を目指し、D型ハウスに新たに犬舎を作ること決め、その作業を行政職員、圏外からのボランティア有志の皆様のご協力を得て、掃除、ゴミ捨て、地ならしから始めました。同年12月17日に新たな犬舎が完成後、佐呂間町役場様、地元ボランティア様より、この後は地元でとのお申し出にお任せして当会の役目を終えました。2023年6月までに引き取ってきた犬達は、家庭犬になるためにボランテイアさん宅でそれぞれ社会化をすすめてもらいながら53頭まで新しい家族のもとへ譲渡することができています」
犬舎の補強中の様子
ー最後に多頭飼育崩壊について伺いました。
「多頭飼育崩壊が起こらないようにするには、狂犬病予防法に基づく行政の管理、近隣の方の目で、自分たちの地域で起こっている多頭飼育現場を自分たちの町の問題として認識いただき、官民の垣根を超えて連携し行動することが一番の解決方法になることを伝え続け、これからも取り組んでいきたいと考えています」
広大で酪農が多い北海道では、このような多頭飼育崩壊が絶えないのが現状です。この現状を少しずつでも変えようと、行政や地域の方々と連携しながらレスキューや日々の活動を、ボランティアという無償の形で続けておられます。そんな「非営利ボランティア団体『犬のM基金』」さんに今後もご支援をお願いいたします!
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