Muttville 建物 Muttville facade.

サンフランシスコのミッション地区。犬の壁画が描かれたポップな建物が目に入ります。

ドアを開けると、そこにはカラフルな内装と家具が置かれた広いスペースが広がっていました。

チワワ、テリア、パグミックス、柴犬‥、小さめのミックス犬達が楽しそうに歩き回っています。

Emi&Kenny 2026
アニマル・ドネーション ボランティア
菊池恵美 きくちえみ
大学時の交換留学、大学院留学を経て現地(シリコンバレー)で就職し、米国永住権を取得。AOL、Yahoo、スタートアップでプロマネとして働いた後、引退。現在は、北カリフォルニアで漫画(原作者)の修行をしながら、動物愛護施設をサポート中。家族は、夫と雄のワンコ(チワワ・テリアミックスの元保護犬、10歳)。趣味は、バレエ、旅行、映画とコミック。
Muttville 室内
Muttville 一般室(©Droid Gallucci)

ケージフリーのパイオニア

ここは、全米で初めて「ケージフリー(檻に入れない)」を採用したシニア犬保護施設のMuttville(マットヴィルの訳は「雑種犬村」)。2007年に一人の女性がシニア犬二匹を引き取ったところから始まりました。*1

現在は、スタッフ38名(正社員+パートタイム)、ボランティア500人を抱える全米有数の保護施設になっています。これまでに保護した犬の総計は14,500頭(2026年9月末実績)。

2025年には1,383頭を受け入れ、そのうち917頭が終の住処を見つけ、439頭がフォスター家庭で過ごしています。

筆者がMuttvilleを知ったきっかけは、たまたま(添付画像のような)寄付のお願いのレターが届いたことでした。

そこには、「病気と老齢で『引き取り手のないシニア犬』が、Muttvilleで治療とリハビリを受けて無事に終の住処に引き取られた」という話が書かれていました。

その他、「老人ホーム訪問」や「青少年への出張教育」という心温まる話題も含まれていました。

Muttville News letter
Muttville の寄付依頼レター

その明るくポジティブな文面に心惹かれるものがあり、「(少し)寄付してみようかな」という気になりました。

しかし用心深い筆者は、まず複数の第三者機関による「NPOレビューサイト」でその評価を調べてみたのです。 結果、Muttvilleの評価は上々でした。*2

気分が上がる場所

また、オフィスも訪ねてみました。そこは広々とした敷地に犬舎、オフィス、

医療棟と分かれており、中庭はドッグランになっています。

キッチン 支援者担当ディレクターのリンゼイさん
新しく入ってきた犬
専任グルーマー
中庭にある壁画
中庭
中庭で遊ぶ犬達

際立つ特徴

さて、Muttvilleは現在、全米でも有数のシニア犬専門保護施設ですが、その大きな特徴は次の通りです。:

  • ケージフリー(犬達のQOLを重視)
  • フォスタープログラムに注力
  • 獣医棟併設
  • ホスピスプログラム(譲渡料は無料。緩和ケア費用もサポート)
  • アウトリーチ(出張支援・PR)イベント多数(2025年には77回実施)
  • Cuddle Club (地域の老人ホームへの犬を連れての定期訪問)
  • Humane Education(子供達を対象に保護活動についてセミナー)
  • ボランティア(現在約500人)をフル活用
  • 62歳以上の人は譲渡料が無料(通常は250ドル<約37,500円>)*引き取り者の半数は62歳以上のシニア
ケージフリーの一般室(ボランティアと見学者、犬が見える)
獣医棟(手術室)
Muttville Cuddle Club
カドルクラブ(老人ホームにて)
humane education人道的教育(小学校訪問)
人道的教育(小学校訪問)

地の利を生かした資金力とIT利用

全米には、他州にも「シニア動物専門」の保護施設がありますが、Muttvilleの特色は、上記のような「(人も犬も)心地良い施設」という点だけではありません。

真に特筆に値するのは、「(SFベイエリアという)地の利を生かした圧倒的な資金力とリソースの活用」です。

例えば、Muttvilleの収入源の一つが「Sprit-interest Agreement Assets」です。
これは、米国の「計画寄付(Planned Giving)」の一種で、「寄付された資産(信託など)から生まれる利益をドナー(寄付者)側と慈善団体側で『分割(Split)』して受け取る契約」のことです。
この額は個人からの寄付収入の約18倍(2025年)*3 となっています。

同様の仕組みを資金繰りに利用しているのは、全米でも一握りの保護施設です。
なぜなら、それには多額の資金とリソースが必要だからです。

その点、Muttvilleには税制やファイナンスを熟知したスタッフがおり、IT専門家がCRM(顧客管理運営)システムを駆使して、後援者や寄付者を管理しています。
他の団体からも「ロールモデル」として羨望の眼差しを受けているのも、さもありなんです。

一流企業のような運営

豊富な資金を元に、自前の土地を得て、QOLの高い施設をデザインし、医療施設を運営しながら、年に約千四百頭のシニア犬譲渡を遂行しているMuttvilleを見ていると、極めて合理的で「一流企業のようだ」という人もいます。

米国の保護団体はすべからくそういう傾向があると思いますが、「まずは先立つものを確保して、サステナブルな仕組みを作り、運営していく」という合理性があります。

「寄付とボランティアとスタッフの熱意だけでは持続しにくい」という、ある種の諦念とドライな計算は、アメリカならではのものかもしれません。

エモさ溢れる環境とドライなリソース管理を行うMuttville。
ここは予約なしでいつでも立ち寄れるので、サンフランシスコにお越しの際は、ぜひ足を運んでみてほしいところです。きっと元気なシニア犬が迎えてくれることでしょう。

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*1 — Muttvilleの歩み:

2007: 動物愛護活動家のシェリー・フランクリンが、高齢犬の殺処分に心を痛めて、SFの自宅でシニア犬専門保護施設を始める。初年度に27頭をレスキュー。

2016: シェリー・フランクリンの功績をCNNが認め、CNNヒーロー賞が送られる。

2021: 九千頭目のシニア犬保護・譲渡を達成。

2024: より広い、カスタムデザインの新施設をSFのミッション地区にオープン。

*2 — Muttville 2025年度収支報告書:https://muttville-craft-media.sfo2.digitaloceanspaces.com/dev/About-Us/pdfs/Financial-Statements/Muttville-Final-Report-07.27.26.pdf

*3 — 非営利団体に対する評価サイト:

①Charity Navigator:https://www.charitynavigator.org/

(Muttvilleの評価:https://www.charitynavigator.org/ein/260416747)

②CharityWatch :https://app.candid.org/

(Muttvilleの評価:https://app.candid.org/profile/8590985/muttville-26-0416747?pkId=b0c39007-c48c-4f11-aec6-cbb35a0d5116&isActive=true)