2024年12月に新たにアニドネ認定団体となり、北海道で保護・譲渡活動に奮闘されている「非営利ボランティア団体『犬のM基金』」さん。預かりボランティアで全頭無償で犬を譲渡しています。今回は、そんな犬のM基金のスタッフ小蕎さんに、里親さまや保護犬のお話を伺いました。

保護犬いさな 数々の競技会で優秀な成績を収める

犬のM基金では、シェルターを持たず、預かりボランティアという形で保護・譲渡活動を行っています。今回は、2022年8月に北海道道東で捕獲された野犬9頭のうちの1頭「いさな」についてご紹介します。

ー譲渡された「いさな」についてエピソードをお聞かせください。

「里親様のご家庭には、嘱託警察犬の先住犬ゴールデンレトリーバーの『珊瑚』がいます。元野犬の『いさな』を迎え、珊瑚がいさなの不安を取り除いてくれたおかげで心を開いてくれました。1歳を迎えるころ、珊瑚のトレーニング道具に興味を持ったので、ゲーム感覚で教えるために先ずは基本的な服従を教えようと軽くトレーニングを始めました。しかし、いくらパピー期に保護されたとはいえ野犬のDNAなのか、その数か月の環境なのか…一筋縄ではいきません。のんびり構えてトレーニング…今でも継続中です。服従もまだまだですが、人の歩いた跡を追う『足跡追及』を教えてみると驚く程に上手でびっくりしました。今まで頭を悩ませていた野犬DNAはココで開花。五感の鋭さで身を守ったり獲物を捕らえたりするポテンシャルは『匂いを追う!』を本能でやってるように思います。以来、服従と追及の練習を続け、もっと能力を活かしてあげたいと思うようになり競技会を視野に…」

いさな保護当時

ー競技会に出られたのですね!どんな様子だったのでしょうか。

「純血種の中に元野犬を出すのは変な目で見られるのではないかと不安もありましたが、意を決して出陳しました。蓋を開けると誰1人変な目で見ることはなく、むしろ応援してくれる人たちに囲まれました。先生(警察犬訓練士)や訓練仲間、競技会で出会った先輩・仲間・友人からのアドバイスのおかげで良い作業を行えるようになり、それが結果に繋がりました。里親さまは、『私たち家族にいさなを託してくださったM基金、そして私たち家族を取り巻く環境の全てがいさなを育ててくれています。心から感謝しています』とおっしゃっています」

2025年9月6日 札幌方面嘱託警察犬指導手等連合会 足跡追及二部 3席

2025年9月28日 日本警察犬協会北海道支部 2部足跡追及 犬種外 1席

2025年10月5日 全道嘱託警察犬等訓練競技大会 非嘱託警察犬追及の部 1席

2025年10月26日 日本シェパード犬登録協会 北海道支部 アマ追及 3席

札幌方面嘱託警察犬指導手等連合会 3席
日本警察犬協会北海道支部 1席
全道嘱託警察犬等訓練競技大会優勝
日本シェパード犬登録協会 3席

北海道では、雑種(血統書のない犬)は警察犬の試験を受けることができないというのは残念な点ではありますが、それでも、元野犬から競技会で優秀な成績を収めるまで、いさなは本当に成長できました。いさなはもちろん、里親様や譲渡に繋げることができた預かりボランティアさん、犬のM基金さんの頑張りがあってこその結果だと感じました。

保護犬「いちご」の話

いちごは、佐呂間町の多頭飼育現場から保護してきた犬たちの中で、まだ里親さまとのご縁がなく、M基金に残る最後の1頭です。

ー「いちご」の様子をお聞かせください。

「なかなか譲渡が進まない理由として、いちごには発達面での障害、または特性があるのではないかと思われます。あの過酷な環境の中で、よく生き延びてくれたな…と、今でも思います。保護してからのいちごは、私たちボランティアが願うような形では、なかなか社会化が進みませんでした。

触らせない、サークルを壊して脱走する、常に目が血走り、パンティングをしている

そんな様子から、家庭での生活は難しいかもしれないと判断し、プロのお力をお借りすることになりました。しばらくの間、ドッグトレーナーさんのいる犬の幼稚園で預かっていただくことになりました」

ー変化などはありましたか?

「少しずつ人や犬との関係を築き、できるだけストレスを与えずに過ごした結果、いちごは少しずつ変わっていきました。家庭の中で、安心できる場所や人の存在があると、落ち着いて生活できるようになったのです。これは、本当に素晴らしい進化でした。お留守番や意思疎通もできるようになりました。ちゃんと、人の声が届いています。いちごにとってストレスになることを避けてあげれば、家庭での生活に大きな問題はありません。また、預かりボランティアをシャッフルすることで環境が変わり、関わる人も少しずつ変わっていく中で、いちごはさらに素晴らしい変化を見せ続けています。今は、人に撫でられることの心地よさ、お散歩の練習、初めての場所や人への対応などを、預かりボランティアさんそれぞれが試行錯誤しながら、いちごのペースに合わせて社会化を進めてくれています。

お散歩を楽しむいちご

人は犬との暮らしに、いろいろな夢を思い描くと思います。一緒にキャンプに行きたい。ドッグカフェに行きたい。お友達のわんこと遊ばせたい。ドッグランで思いきり走らせたい。ぴったりくっついて眠りたい。でも、そういう『理想の犬との暮らし』は、いちごには難しいことがあるかもしれません。それでも、いちごにはいちごの可愛さがあります。お散歩の気配がすると、『え? 行きます? お散歩ですか?』というように、ひょこっと姿を見せてくれたり。預かり先のおうちに様子を見に行くと、玄関まで可愛いお顔でお出迎えしてくれたり。知らない人が家に来ると落ち着かず、回遊魚のようにずっと動き回ってしまったり。こっそり猫のごはんを狙って食べていたり…(笑)そんなひとつひとつが、いちごらしくて、とても可愛らしいです。いちごのペースに寄り添い、無理をさせずに暮らしていくと、少しずつできることが増え、今まで見たことのない表情を見せてくれたり、思いがけない発見があったりします。いわゆる『普通の犬』との暮らしとは少し違うかもしれません。でも、ほんの少しずつ進化していくいちごとの暮らしは、とても興味深く、そして愛おしいものです。そんな、いちごとの暮らしを『大変』ではなく『面白い』と思ってくださる飼い主さまが、いつか現れてくれますように。いちごとの生活を、『楽しい』と思ってくださるご家族が迎えに来てくれる日を、心から願っています」

緊張してパンディングしている時
譲渡会で落ち着いている時のいちご

多頭飼育崩壊の現場からレスキューされた犬たちの中には、いちごのように社会化がなかなか進みづらい犬も少なくありません。どんな保護犬も愛情をもって接し、何とか譲渡できるよう日々手を尽くしておられる、そんな「非営利ボランティア団体『犬のM基金』」さんに今後もご支援をお願いいたします!

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