公益社団法人アニマル・ドネーション認定団体に向けた学びの場であるアニドネカレッジ。
第9回アニドネカレッジのテーマは、「動物に関する法律について学ぼう」。
法律は社会を変えるための大きな指針の一つです。
動物福祉をより良いものにしていくためには、現場での保護活動や啓発活動はもちろんのこと、動物を取り巻く「法律」について学び、動物が暮らしやすい社会になるよう働きかけていくことも大切です。
今回のゲストには、アニドネ認定団体でもあるどうぶつ弁護団の細川敦史弁護士をお迎えしました。
どうぶつ弁護団として動物虐待事件などに関わってきた細川弁護士から、日本の動物虐待をめぐる法制度やアニマルカフェなどの展示動物に関する法律についてお話しいただくとともに、アニドネのリーガルリサーチチームが調査してきた海外の動物関連法制についても学びました。
さらに、今後の動物愛護管理法の改正に向けて、アニドネが目指していることや、私たちにできるアクションについても共有しました。

はじめに|世界の動物関連法から、日本の現在地を知る
今回の勉強会では、まず海外の動物関連法制について学びました。
アニドネのリーガルリサーチチームでは、約2年間にわたり、各国の動物に関する法律や制度について調査を続けています。リーガルリサーチチームには、獣医師や海外にゆかりのあるメンバー、海外の法律資格を持つメンバーなど、さまざまな専門性を持つメンバーが参加しています。

リーガルリサーチチームの調査では、各国の動物福祉の法整備について評価を行っているAnimal Protection Index 2020で、動物福祉のランクが日本より上位と位置づけされた国を対象に調査を進めてきました。
実は、日本はAnimal Protection Index 2020の調査において、A〜Gランクの7段階評価で5番目に低いEランクに位置づけされるという不名誉な結果になっています。
ただし、法律の整備状況だけで、その国の動物福祉全体を評価できるわけではありません。今回の勉強会では、法律の内容には、その国の文化や経済、宗教、歴史、自然環境、住環境など、さまざまな背景が影響するとの説明がありました。
それぞれの国がどのような背景の中で法律をつくり、どのように動物を守ろうとしているのかを知ることで、日本の制度を改めて考えるきっかけになります。
「虐待された後に罰する」から「虐待を防ぐ」へ
海外の動物虐待に関する法律を見ていく中で特徴的なのが、「虐待をした人を罰する」だけではなく、法整備によって「虐待そのものを防ぐ」という考え方。
たとえばデンマークでは、犬を常に繋いでいることは禁止という法令があります。
一時的につなぐ場合も、鎖の長さは最低5メートルとされ、雨や風、暑さ、寒さから犬を十分に守ることができるリビングルームにアクセスできるようにするなどの条件が設けられています。
オランダでは、重度の動物虐待を行った人に対して生涯にわたる動物飼育禁止が科される仕組みがあり、ネグレクトも虐待に含まれています。

こうした制度からは、虐待が起きた後の処罰だけではなく、動物が苦痛を受けることを未然に防ぐための仕組みを法律に組み込むという考え方も見えてきます。
展示動物やアニマルカフェをめぐる世界の動き
続いて、動物を「見せる」「触れ合う」といった展示や娯楽目的の利用についても、海外の事例が紹介されました。
英国ではサーカスでの野生動物の使用が禁止されています。
フランスでも、移動サーカスにおける動物展示について規制が進んでいます。
アメリカではライオンやトラなどとの触れ合いを禁止する動きがあります。

このように、動物を人間の娯楽のために利用するのではなく、動物の生態や、動物が感じる苦痛やストレスに配慮する方向へと法律も進化しています。
韓国では野生動物法の改正により、許可を受けた動物園・水族館などを除き、動物を見せ物とするアニマルカフェを規制する制度が進んでいることも紹介されました。
世界では、動物を「人間を楽しませる存在」としてではなく、私たちと同じように「感受性がある」存在であると捉えていることが分かります。
日本の動物虐待をめぐる法律と、現場での課題
では、日本のアニマルカフェはどうでしょうか。
ゲストにお招きした細川弁護士からは「動物虐待とアニマルカフェから見る日本における動物の社会的地位」というテーマでお話しいただきました、

日本では、動物を展示・ふれあいの対象とする事業について、動物愛護管理法に基づく「第一種動物取扱業(展示)」の登録をすれば営業可能となります。
環境省動物取扱業者向け基準では、動物同士の闘争を避けること、来店者に動物との適切な接触方法を指導すること、動物に適切な休息を与えることなどが求められていますが、現在の規制だけで動物の福祉を十分に守ることができるのか、という課題もあります。
野生動物を扱うカフェについては、研究者や団体による調査・問題提起を受け、環境省による調査も始まろうとしていることが紹介されました。

また、日本の動物虐待をめぐる法制度について、細川弁護士から具体的な事例を交えてお話しいただきました。
近年では、動物虐待事件で有罪判決が出たケースもありますが、酷い内容を見ると、
「犬猫に対してこれほど残忍な仕打ちをしているのに、刑罰が軽いのでは?」と感じるケースも多くあります。
2019年の法改正では、動物殺傷罪の法定刑が引き上げられました。
一方で、虐待罪は殺傷罪よりも軽い法定刑となっており、継続的に動物へ苦痛を与える虐待とのバランスについて課題があるとの説明がありました。
ただし、裁判では前科・前歴など、報道では明らかにならない情報も量刑判断に関わります。
そのため、報道された罰金額や判決だけを見て、量刑の妥当性を判断することには難しさがあります。
法律について考えるときには、目に見える結果だけではなく、裁判の仕組みや判決に至るまでの背景も含めて知ることが大切だと学びました。
法律を変えるためには、「社会の理解」が必要
勉強会では、どうぶつ弁護団が関わった具体的な事例も紹介されました。
空気銃で猫を傷つけた事件は、協力団体が動物病院で異物の除去や証拠保全を行い、それが有罪判決につながった事例です。動物虐待をなくしていくためには、法律が存在するだけでは十分ではありません。
虐待の事実を適切に記録し、必要な証拠を残し、動物病院や弁護士などの専門家、関係機関と連携する。
そうした一つひとつの取り組みが、動物を守り、法律を動かすことにもつながっていきます。
法律は、一部の人が「変えてほしい」と声を上げるだけでは、なかなか変わりません。
「なぜ変える必要があるのか」「変わることで、動物にとってどんな社会になるのか」
こうしたことをより多くの人に知ってもらい、社会全体で考えていくことが重要です。
そして、法律が変わることで、行政の対応が変わる可能性もあります。
だからこそ、動物福祉に関わる私たち自身が法律について知り、その必要性を伝え、声を届けていくことが大切なのです。
法改正に向けてアニドネが目指すこと
アニドネでは、法改正に向けて、動物愛護管理法に「感受性のある生命存在」であることを位置づける文言を入れることを目指し活動していくという目標があります。
この位置づけが実現すれば、動物虐待に対する法的判断のばらつきを小さくすることや、ペット産業、畜産業、教育、動物実験など、さまざまな分野における動物の扱いを考えるうえでの土台になる可能性があります。
さらに、日本の動物福祉に関する国際的な地位を高めることにもつながると考えられます。
法改正に向けた具体的な取り組みの一つとして、今回のカレッジでは署名活動についても紹介されました。
アニドネでは過去にも、屋外でつながれた犬に関する署名を行い、動物愛護議員連盟の事務局長である福島みずほ氏へ提出した経緯があります。
今回の署名活動については、具体的な内容や開始時期が決まり次第、今後発信していく予定です。
また、法改正を実現するためには、動物愛護に関わる一部の人々だけの主張と受け取られないことも重要です。
専門家とも連携し、メディアへのアプローチも行いながら、社会全体で動物福祉について考えていく必要性があります。

おわりに
今回のアニドネカレッジでは、海外と日本の動物関連法制を比較しながら、動物を守るために「法律」という仕組みが果たす役割について学びました。
普段、動物福祉の現場で活動していると、目の前の一頭を助けることや、保護した動物を幸せにすることに意識が向きます。
もちろん、それはとても大切なことです。
一方で、同じ問題を繰り返さないためには、その背景にある社会の仕組みそのものを変えていくことも必要です。
法律を学ぶこと。
海外の事例を知った上で日本の立ち位置を知ること。
課題を社会に伝えること。
今回のカレッジが、法律を「難しいもの」として捉えるのではなく、動物たちの未来をより良くするために、私たちが活用できる一つの手段として考えるきっかけになればと思います。
次回のアニドネカレッジは、10月21日(水)「行政との連携」をテーマに開催予定です。
また、11月25日には東京でオフラインイベント「リアルアニドネカレッジ」の開催も予定しています。
これからもアニドネカレッジを通じて、動物福祉について学び、考え、行動するきっかけをお届けしていきます。
