アニマル・ドネーションでは、動物のためにがんばる行政施設への取材を行っています。行政の施設というのは、いわゆる「保健所」や「動物愛護センター」と呼ばれている施設です。都道府県や市町村の予算によって運営管理されています。

今回は、和歌山市動物愛護管理センターを取材し、獣医師の渡邊さんと山﨑さんにお話を伺いました。(取材:2026年8月)

住宅地の中、駅から徒歩数分。アクセスのいいセンター

和歌山市動物愛護管理センターは、住宅地のまっただ中、東松江駅から徒歩約3〜4分という、非常にアクセスの良い場所にあります。センターは令和元年(2019年)10月、犬猫の殺処分ゼロを目指す新拠点として、旧西保健センターの跡地に開設されました。

市街地の生活圏にそのまま残ることになったため、譲渡会に足を運びやすく、ボランティアも通いやすい。立地そのものが、譲渡を後押ししています。

小さいながら温かな印象です

小さなセンターに息づく、あたたかい工夫

決して大きな施設ではありませんが、入ってすぐのスペースには保護猫たちのお部屋があり、限られたスペースを工夫して活用している様子が伝わってきます。

センターに入ってすぐ猫が遊んでいるのが目に入ります

壁には、これまでにセンターから巣立っていった犬や猫の里親さんたちから届いたメッセージボードが貼られていました。新しい家族のもとで幸せそうに暮らす犬猫たちの写真やコメントを目にして、思わず温かい気持ちになりました。住宅地の中にある小さなセンターですが、こうした一つひとつの工夫から、日々の取り組みの積み重ねが感じられます。

新しい家族からのメッセージ

月2回の譲渡会、譲渡の前には必ず講習会を

センターでは月2回程度、「飼い方講習会&譲渡会」を開催しています。取材当日もちょうど譲渡会の日で、一般の方が多く来場していました。

譲渡までの流れは、①飼い方講習会の受講 ②飼育環境調査 ③お見合い ④譲渡、という順番が決まっています。

訪問した日は譲渡会の開催日でした
‐ 譲渡を希望する方は、必ず講習を受ける決まりなんですね。

「はい。動物を飼うために必要な知識や関連法規について、講習を受けていただいてから、飼育環境調査、お見合いという順番を経て譲渡となります。すぐに動物とお見合いできるわけではなく、まずは『この子をずっと、最後まで適切に飼えるか』を考えていただく時間にしてほしいという狙いがあります。適切なお世話とはどういうものかを、飼う前に学んでいただくための講習でもあります。」

動物の飼い方講習会
‐ 講習だけを受けに来る方もいらっしゃるとか。

「そうなんです。動物を迎える予定はないけれど、正しい知識を学びたいという理由だけで講習に来られる方も、たまにいらっしゃいます。私たちとしては、それも大歓迎です。講習を受けた方が、ご自身の周りの方に飼い方の知識を広めてくださったら、それだけで意味があることだと思っています。」

猫の保護スペース。

事務所を自由に歩き回る保護犬たち

センターを訪れて印象的だったのが、事務所スペースに保護犬が自由に出入りしていたことです。普段は7〜8頭ほどの犬が、事務所内でリード無しで過ごしているそうです。

シロ。事務所を自由に歩き回っています
‐ 事務所で犬を自由にしているのは、どういった理由からなのでしょうか。

「一つは、譲り受けを検討されている方に、この犬が成犬になったらどれくらいの大きさになるのか、実際に見て感じてもらうためです。もう一つは、元野犬の人馴れ訓練を兼ねています。人がそばにいることを、犬にとって『普通のこと』にしていく狙いです。事務所の中で自由にさせている施設は、全国的にも珍しいのではないかと思います。」

渡邊さんご自身も、センターから引き受けた中型犬2頭を自宅で飼育しています。西浜で保護された、6歳になる「シロ」と、生後8ヶ月の「だいふく」(あだ名は「あざらし」!)です。取材当日、この2頭は渡邊さんについて事務所内を歩き回っていました。

だいふく。事務所でくつろいでいます

雑賀崎で保護された、生まれたばかりの野犬の子犬

取材当日、生後間もない子犬が、ちょうどセンターに引き受けられる場面に立ち会うことができました。母犬とはぐれ、道をさまよっていたところを保護されたそうです。

保護された時点ではノミ・ダニだらけだったという子犬は、センターのスタッフの手で洗われ、すっかりきれいな状態になっていました。ただ、ノミやダニは洗うだけでは落ちません。この後、駆虫薬を使った駆除と、お腹に寄生虫がいないか確認、狂犬病などのワクチン接種を行い、自力で食事ができるようになり健康状態が落ち着いてから、譲渡の対象になるとのことです。

センターに引き受けられた野犬の子犬。洗ってもらってスッキリ。

和歌山には、いまも野犬が生息する地域がいくつか残っています。狂犬病予防の観点から、野犬は捕獲されたうえで人馴れ訓練を受け、人に馴れることができた犬から順に、譲渡の対象になっていきます。

‐ 野犬の人馴れ訓練は、どなたでも担当できるものなのでしょうか。

「いいえ、簡単なことではありません。十分な経験と技術を持ったトレーナーでなければ難しく、一般的なご家庭向けのドッグトレーナーの方にお願いできる仕事ではないんです。事務所で犬を自由にしているのも、そうした人馴れ訓練の一環でもあります。」

実際に保護犬たちが収容されている場所を見せていただくと、その難しさを肌で感じました。以前に人と暮らしていた経験のある犬たちは元気に吠えていた一方で、元野犬の子犬は吠えることもなく、人を怖がって震えていたのです。人馴れ訓練の大切さと、その難しさの両方を、目の当たりにした瞬間でした。

すっかり人馴れして、ずっとの家族を待っている野犬の子
人馴れ訓練中の野犬の子。人間は怖い人ばかりではないよ、頑張れ〜!

訓練を重ねても、人に馴れることが難しい犬もいます。野犬をめぐる問題は一筋縄ではいかない複雑さを抱えており、和歌山市では殺処分ゼロを達成できない年もあります。

「譲り受け」という選択肢を、もっと知ってほしい

最後に、渡邊さんから読者の皆さんへのメッセージをいただきました。

「犬や猫を家族に迎えるというと、ペットショップで買うことをイメージされる方が多いと思います。動物愛護センターから譲り受けるという選択肢があることを、まだ知らない方がたくさんいらっしゃいます。ペットショップだけでなく、センターからの譲渡という選択肢もあるのだということを、もっと多くの方に知っていただけたらと思います。」

お話を伺った渡邊さんとシロ。印象的なつぶらな瞳です

今回は、住宅地のまっただ中、駅から歩いてすぐという珍しい立地の和歌山市動物愛護管理センターを訪問しました。行政の施設としては比較的小規模な施設ですが、ドッグランも備えており、限られた中で職員の皆さんが一生懸命に取り組んでいる様子が随所に感じられました。

改めまして、この度は貴重なお時間をいただきありがとうございました!

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▼和歌山市動物愛護管理センター

・所在地:〒640-8422 和歌山市松江東3丁目2番63号

・最寄り駅:南海電気鉄道加太線 東松江駅(徒歩約3〜4分)

・電話:073-488-2032

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