2026年8月26日(水)、公益社団法人アニマル・ドネーション認定保護団体向けの学びの場「アニドネカレッジ」第8回が開催されました。
今回のテーマは「SNS・情報発信の力〜共感を広げ、支援の輪を加速させよう〜」。アニドネ認定団体をはじめとする動物福祉活動の現場では、「日々の保護活動やお世話で忙しく、SNS発信まで手が回らない」「支援を集めたいけれど、どこまで発信していいのか悩む」といった課題を抱える団体が少なくありません。
そこで今回は、SNSやクラウドファンディング(クラファン)を通じて多くのファンや支援者を巻き込み、素晴らしい実績を重ねている2つの認定団体をゲストにお迎えしました。ゼロから試行錯誤を重ねてきた両団体の実践事例から、明日から使える発信のヒントと熱い想いを伺いました。
はじめに|スピーカーのご紹介

フォロワー0人からのスタート。大切なのは「人」の想いを伝えること
福井県で保護猫活動を行う「しあわせにゃん家」の渡辺奈々美さんは、現在でこそInstagramのフォロワー数が4.5万人を超えていますが、9年前のアカウント立ち上げ当初は当然「フォロワー0人」からのスタートだったとか。
当時は地元・福井でも「譲渡会」や「保護猫カフェ」という言葉の認知度が低く、「一般人は入れない場所なの?」「汚い猫がたくさんいるの?」といった誤解を受けることも多かったと言います。渡辺さんは、土地の購入や施設の建設段階から「なぜ命を救いたいのか」「殺処分の現状はどうなっているのか」というご自身の熱い想いとともにSNS発信を続けたそうです。
「SNS発信は単なる宣伝や片手間ではなく、それ自体が立派な保護活動の1つです」と渡辺さん。継続的な発信を見た地域住民から「自分もTNR(捕獲・不妊手術・元の場所に戻す活動)をやってみた」「外の猫を自分で保護した」という声が届くようになり、意識の変化を肌で感じるようになったそうです。
また、フォロワーが増え、支援が集まる本質について次のように明かしてくれました。
「ファンになってくださる方は、猫の可愛さだけではなく“人”を見ています。代表やスタッフがどんな想いで、どんな風に日々お世話しているのか。笑顔や温かい言葉を通じて『この団体なら信頼できる』と感じていただくことが、そのまま動物たちへの支援につながるのです」

完璧を求めすぎず、できることからやってみる
忙しい保護活動の中でSNSを毎日更新し続けるため、しあわせにゃん家では運用の工夫を行っています。現場のスタッフが日常の様子や動画を「専用LINE」に共有し、代表の渡辺さんが数日分を一気に「予約投稿」する仕組みを構築。完璧を求めすぎず、「ストーリーズだけならできるかも」といった小さな挑戦から始めることを推奨しています。

また、多くの発信者が直面するアンチコメントや人間関係のストレスについても、実体験に基づく貴重なアドバイスが共有されました。
「理不尽な保護依頼や無責任な言葉にイライラしたときは、絶対にその場ですぐ投稿しません。感情的な文章は読者に伝わってしまうからです。1〜2週間ほど時間を置き、気持ちを落ち着かせてから『こういう現状があります。皆さんならどう考えますか?』と自分ごと化してもらう『問題提起』として発信するようにしています」
ほかにも、他団体への批判は行わないこと。悲しい現実だけでなく「可愛い」「面白い」動画も交えたバランスの良い投稿を意識すること。これらの心掛けの丁寧な積み重ねが、炎上を防ぎ、温かいファン層を育てる所以となっています。
渡辺さん「9年間、試行錯誤しながら私たちらしいSNS発信を模索してきました。もちろん大変なことも多くありましたが、今ではSNSなしではクラウドファンディングの成功も、日々の猫ちゃんたちの生活もなしえなかったと思っています」
知られていなければ寄付は集まらない
続いて登壇いただいた「シャイン・オン・キッズ」の村田夏子さんは、病院で子どもたちの心に寄り添う「ホスピタル・ファシリティドッグ®」などの情報発信と、11年間で15回に及ぶクラウドファンディングの歩みについて語りました。
同団体の活動は、多くの非営利団体と同様に寄付によって支えられています。一方で、寄付に依存するモデルは、不測の事態、特に災害や社会情勢の変化などの影響を受けやすいという課題があります。実際、シャイン・オン・キッズも2011年の東日本大震災や2020年のコロナ禍では寄付が大きく落ち込み、資金的な危機に直面しました。
そうした局面を乗り越える試行錯誤の中で辿り着いたのが、SNSやクラファンにおける「成果報告とお願いの比率を9対1にする」という鉄則でした。

「ここで得た教訓は2つ。一つは『知られていなければご寄付はいただけない』ということ。もう一つは『寄付のお願いばかりの発信では心に届かない』ということです。普段の投稿で『皆様の支援によってどんな嬉しい変化が生まれたか』という成果のご報告(感謝)を9割積み重ねていて初めて、残りの1割でお願いのカードが切れるのです」
いいねの数が一桁の時期であっても挫けず、「1,000本投稿」を目指して日々の地道な成果報告を継続。その結果、100万円の目標から始まったクラファンは、2,000万円を超える大型プロジェクトが成功するまでに支援者が増え、病院が導入資金を集める際にも力強く応援して下さる方々が増えています。
徹底したマニュアル化と「誰も傷つけない」リスク管理
シャイン・オン・キッズの発信において際立っているのが、高い倫理観と表記ルールです。記者が記事を執筆する際、そのまま使用できるよう、誤解や傷つきを防ぐためのガイドラインや研修資料が厳格に整備されています。
- 表記の徹底: 「患者」ではなく「子どもたち」と表現(がん患者である前に、ひとりの子どもとして尊重)。ファシリティドッグの「引退」という表記は「引き継ぎ・交代」と表現(子どもたちのショックを和らげられるように配慮)。
- 写真・画像の配慮:「可愛いかどうか」ではなく「第三者が見て問題ないか」「犬と患者さんを守れているか」の視点で確認する
リスクの説明と同意:ハンドラーからお子さんご本人とご家族に、お顔以外の個人情報(例:病院名・個人名)は保護するが、ファシリティドッグから病院が特定されるリスクや、デジタルデータの性質まで丁寧に説明し、同意書をとる。
村田さんは、「発信においては『誰も傷つけないこと』『ありたい姿を見せること』を何より大切にしています。ファシリティドッグの福祉を懸念される声に対しても、海辺を楽しそうに散歩する姿や日頃の工夫などを丁寧に伝えることで、私たちが日々どのように動物福祉を守っているか、伝えられるように心掛けています」と語りました。
最後には「広報もポジティブレインフォースメント(動物訓練における正の強化・褒めて伸びるアプローチ)である」というメッセージで締めくくられ、参加者の深い共感を集めました。
おわりに
後半の質疑応答やアフタートークでは、参加団体からプレスリリースの活用法やメディア対応、アンチ対策についての質問が飛び交い、学びの深い時間となりました。
セッション後のアンケートでも非常に高い満足度が記録され、「9対1の鉄則は明日からすぐ実践したいと思った」「近日中にクラファンを開催予定なので取り入れたい」といった前向きな声が多数寄せられました。
一朝一夕では作れないファンや支援者との信頼関係ですが、日々の小さな発信の向こう側に「命を救う力」があることを、登壇者のお二人が証明してくれました。アニマル・ドネーションでは今後も、現場で活動する団体の皆様とともに学び合い、日本の動物福祉をより良くするための取り組みを続けてまいります。

■ 講師・関係団体のご紹介
特定非営利活動法人しあわせにゃん家
- 公式サイト:https://shianyan.com/
- Instagram:@shia_nyan
認定 特定非営利活動法人 シャイン・オン・キッズ
- 公式サイト:https://sokids.org/ja/
- Facebook:https://www.facebook.com/sokids.org/
