アニマル・ドネーションでは、動物のためにがんばる行政施設への取材を行っています。
行政の施設というのは、いわゆる「保健所」や「動物愛護センター」と呼ばれている施設です。都道府県や市町村の予算によって運営管理されています。
今回は、福岡県古賀市にある「福岡県動物愛護センター」を訪ねました。

施設概要
所在地:福岡県古賀市小竹131番地2
立地:住宅街から少し離れた、丘陵地を切り拓いたような場所に建っています。周りは静かで、犬たちの吠え声もあまり気にならないような環境でした。
敷地面積:11,394.62㎡(約3,453坪)
ご注意:突然の来所には対応していないそうです。見学や相談を希望される場合は、必ず事前にお電話で連絡をしてください。(TEL:092-944-1281)
設立:昭和57年1月(財団法人福岡県動物管理センターとして)/平成25年4月 公益財団法人へ移行
業務内容:福岡県から委託された犬猫の収集・管理・譲渡、適正飼養の普及啓発、地域猫活動支援など
管轄区域:福岡市・北九州市・久留米市を除く福岡県内
職員の方が、パネルを使って迎えてくれました
野田所長と職員の方の温かいお出迎えを受け、いよいよ見学がスタート。まずは職員の方によるレクチャーからです。モニターに写真やグラフを映しながら、センターの歩みや、犬猫がここに来ることになった理由を、ひとつずつ丁寧に話してくださいました。

センターはもともと昭和57年、「動物管理センター」として設立されました。名前の通り、当時はどちらかというと「収容し、管理する」場所だったのだと思います。それが平成20年に「動物愛護センター」へと改称され、今は「人と動物が共生できる社会」を目指す拠点になっています。
パネルには、犬や猫がここに来る理由も紹介されていました。飼い主さんが亡くなってしまった、近所迷惑になった、迷子になったのに探してもらえなかった……。どれも特別な話ではなく、誰の身にも起こりうることばかりです。
犬や猫がセンターに来るまでには、その前段があります。飼い主のわからない犬猫や負傷した動物を捕獲・収容するのは、県内9か所の保健福祉環境事務所。譲渡か処分かの判断もそこで行われ、そのうえでセンターへ搬送されてきます。センターが担うのは、その先の収容と譲渡、そして普及啓発です。
一口に行政の施設といっても、どこまでを担うかは自治体によって大きく異なります。福岡県の場合は、県が入口を、公益財団法人であるセンターが出口を受け持つ。この分担があるからこそ、センターは譲渡と啓発に力を注ぐことができるのだと感じました。
施設を案内してもらって、一番心に残ったこと
レクチャーのあとは、手術室、殺処分に用いる施設・焼却炉、犬係留棟、ドッグラン、猫飼養棟などを案内していただきました。 搬入されたその日のうちに、外貌検査と年齢の推定、血液検査、便の検査、体重測定、寄生虫の駆除、混合ワクチンの接種までが行われます。犬にはシャンプーも。そして3〜4日後、少し落ち着いたところで行動判定。犬の場合は知らない人が触れるか、後ろから抱けるか、食べ物への執着はどうか。一頭ずつ確かめていきます。
その後、不妊去勢手術を経て、トレーニングや他の犬との遊びを通して少しずつ社会に慣れていく。ここに来た子たちが、ただ収容されているのではなく、次の暮らしに向けて一歩一歩準備されているのだとわかって、少しほっとしました。




そしてもうひとつ、忘れられないのが施設の一角にあった掲示板です。譲渡された犬や猫たちの「その後」の写真がびっしり貼られていて、「我が家に来てくれてありがとう」というメッセージが添えられていました。半年前まで保護されていたとは思えないくらい、みんな家族に囲まれて幸せそうな顔をしていて、思わず見入ってしまいました。

野田さんに聞いてみました
―センターとして、特に力を入れていることは?
「啓発です。犬や猫が好きな人にも、そうでない人にも知ってもらうことが大切だと思っています。動物が好きな人だけでなく、苦手な人も含めて、人と動物が共存できる社会をつくっていきたいんです。」
―ボランティアさんの人数と、どんな活動をされているんでしょうか?
「登録は74名です。事前講習会の時に犬をシャンプーしてもらったり、イベントを手伝ってもらったり。細く長く、続けてもらえたら嬉しいですね。」
―不妊去勢のタイミングについて教えてください。
「センターでは早期に手術をして、それから譲渡するのが基本です。」
どの答えも飾らない言葉で、でも背景には、動物にも人にも無理をさせない、地道な積み重ねがあるんだろうなと感じました。
もうひとつ、印象に残った話があります。迷子になった子が飼い主のもとへ戻る割合は、犬で6割ほど。ところが猫は、6%ほどしか戻らないのだそうです。
この差を埋める手立てとして、職員の方が挙げていたのが迷子札でした。マイクロチップは脱落しないので最終手段として確実ですが、リーダーで読み取って番号を検索し、飼い主へ連絡するまでに手間がかかります。その点、首輪に付いた迷子札なら、見つけた人がその場で連絡できる。「迷子札のほうがいい」という現場の実感は、今日からできることとして覚えておきたい話でした。
数字にも、静かな積み重ねが表れていました
センターの処分頭数は、多かった時代には年間3万頭を超えていましたが、令和6年度には143頭、さらに令和7年度には139頭まで減っています。譲渡された犬猫のうち8割以上は、登録された民間の譲受団体を通じて新しい家族のもとに迎えられているそうです。
連携している譲受団体は37団体。団体向けの譲受団体研修会も開かれています。なお、福岡県は譲渡に適した犬猫の致死処分ゼロを、令和5年度から3年続けて達成しています。「139頭」という数字は、収容中に亡くなったり、病気などで譲渡がかなわなかった子を含めた総数です。
訪問した日にセンターにいたのは犬3頭と猫6頭。一頭ずつに手をかけられる状態が保たれていることが、数字からも見て取れます。
譲渡の基準はかなり厳しく、簡単には「はい、どうぞ」とはならない場面も多いようですが、その背景には、「単に譲渡数を増やせばよいわけではない、模範的な飼い主を増やして収容される動物の減少につなげる」というセンターの考え方があります。
迎え主を育てて、譲渡後も見守る
センターが掲げる譲渡の基本姿勢は4つあります。適正のある動物を譲渡すること、適正な飼養者を増やすこと、感染症対策の徹底、そして不妊去勢の徹底。
特に「適正な飼養者を増やすこと」が見学していていちばん印象に残りました。
猫を迎えたい方には、「にゃんにゃんセミナー」を開き、完全室内飼育に必要なことを伝えています。上下運動ができる場所、隠れることができる場所、外を見ることができる場所。あわせて、おもちゃ遊びで捕食行動を満たし、エネルギーを発散させることも勧められていました。
犬を迎えたい方には、まず講習会を受けていただきます。しつけ教室には一般コースと子犬コースがあり、教室を終えた子たちが集まる「ワンパク同窓会」ではその後のトレーニングの状況まで確認しています。譲渡して終わりではなく、迎えたあとまで見届ける仕組みになっています。
見学の最後にもう一度、あの掲示板を思い出しました。びっしりと貼られた「その後」の写真。あの一枚一枚の手前には、行動を見つめ、手術をし、トレーニングを重ねた日々と、講習会を受けて迎えに来た人たちがいます。
寄付や支援というと、民間団体に目が向きがちですが、こうして地道にがんばっている行政の施設があることも、少し心に留めておいてもらえたら嬉しいです。
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