2026/4/22(水曜)、公益社団法人アニマル・ドネーション認定保護団体向けの学びの場「アニドネカレッジ」、第4回を開催しました。

第4回目のテーマは「ボランティア・マネジメント」。

ボランティアの募集や定着、活性化に悩む保護団体は多く特に関心の高いテーマでした。
組織に関する事前アンケートには38団体41件と多くの回答が集まりました。

ボランティア・マネジメントには決まった答えがありません。

そんな「方程式のない領域」に向き合うため、講師にお迎えしたのが、IIHOE[人と組織と地球のための国際研究所]代表の川北秀人さんです。30年以上にわたりNPOの組織づくりを支えてきた川北さんの講義は、保護団体の運営に新しい視点を与えてくれました。

川北さんはまず、事前アンケートを分析してくださいました。年間予算規模や活動年数で並べてみても、団体ごとの工夫や悩みに共通の傾向は見出しにくい。それほどに、ボランティアマネジメントは奥が深い領域なのだと教えてくれました。

事前アンケートの回答から作成したワードクラウド

NPOに大切な3つのこと

1999年、川北さんは一人でアメリカに渡り、40ものNPOを訪ねて回ったそうです。「NPOにとって大切なことは何か?」という問いを携えて。

返ってきた答えは、団体の規模や分野を問わず、驚くほど共通していました。

  • 明確な目標(clear goal)
  • 多様な資金源(diversified funding)
  • 活発な理事会(active board)

興味深いのは、お金の話が「一番」ではないこと。今回の講義で特に深く語られたのが、「明確な目標」、なかでも目的の共有の大切さでした。

目的とは「どこまで行きたいか」という最終的なゴール(的)のこと。最終的なゴールが多少曖昧でも、その手前にある目標(標=道しるべ)が明確でなければ、みんなバラバラになってしまいます。

目的が共有されてはじめて、「責任の共有」と「役割の分担」が可能になります。だからこそ、団体のなかで目的を伝え続けることが、めんどくさくても繰り返しやるべきこと、と川北さんは語られていました。

人材組織開発という仕事

組織の運営に必要な「方針」は以下の3つがあります。

多くの団体では、「事業計画」と「収支計画」はしっかり作られている一方で、「人の配置や育成」をどうするかという「組織編成方針」が手薄になりがちだと指摘されました。経理やSNSの担当者は置いているのに、「人」の担当者は置かれていない。これが多くの団体に共通する課題なのだそうです。

そのうえで示してくださったのが、人材組織開発の仕事の全体像。5つの段階があります。

募集は5番目。最後の段階に位置づけられています。募集に重きを置く前の、まずは今いる人たちの配置を見直して、人が育つ環境を整えないと募集はできないと教えてくれました。

新しい人を集める前に、今いる人をどう活かすか。一人ひとりがどう育っていくのか、その道筋を団体側が描いておく。それができて初めて、新しく入った人も「ここにいれば成長できる」と感じられ、活動が続いていきます。

なお、人材組織開発を担う人は、一人で抱える必要はありません。複数人で分担しても構わない。誰かが責任を持って担うことで、団体としての人の育て方が蓄積されていきます。

動物の命と接するからこその「お約束」

また、ボランティアとの間に最低限のお約束を就務規定として文書化することの大切さを語られました。ボランティアは命と接する。だからこそ、団体として最低限のお約束を交わしておく必要がある、と。

例えば「ボランティア就務規定」について。登録期間、活動の権利、義務、守秘義務、経費の負担ルール、報告系統、相談体制、事故時の対応など、こうした項目を書面として用意し、本人にも写しを持っていただく。問題が起きてからではなく、予防の段階で更新していく。

特に動物福祉の現場では、「守秘義務が重みを持つ」と川北さんは言います。団体の名称のSNS等での無断使用や、迎え主の個人情報の流出は、善意・悪意を問わず動物や関係者の信頼を損ねかねません。お約束を書面にしておくことが、団体とボランティア双方の安心につながります。

ボランティアの「外側」にも感謝を届ける

NPOには、企業のような昇給や昇進という動機付けがありません。では、ボランティアが活動を続けていく原動力は何か。誰かのために行っている活動ならば、その誰かからの「ありがとう」の一言が、何より大きな報酬になる、という考え方が講義のなかで紹介されました。

団体としての「感謝」を仕組み化することは大切です。担当スタッフから手紙を贈る、現場の写真を入れたカードを渡す、年次報告書でボランティアを紹介する、日常使いできる記念品を贈る。感謝の形は様々ですが、心に残る工夫を凝らすこと。

そして、もっとも印象的だったのが、ボランティアの「ご家族への配慮」の話でした。本来なら家族や同僚と一緒に過ごすはずの時間を、ボランティアに充てている方は多い。ボランティアが現場で満たされていても、活動を続けられない理由のひとつは、周りの人の理解が得られないこと。だからこそ、ご家族や職場の上司など、ボランティアを支える周りの方にも感謝を届けるとよい、と川北さんは語られました。

ボランティア本人だけでなく、その人を支えるご家族や職場にまで感謝を届ける。これは単なる気配りではなく、活動が続いていくための環境づくりの一つなのだと気付かされます。

2枚の組織図を描くワーク

講義の後半では、参加団体が実際に手を動かすワークも行われました。

1枚目に「現在」の組織図、2枚目に「2年後」の組織図を、それぞれ手書きで描いてみるというもの。スタッフの個人名やイニシャル、似顔絵、人の形でも構いません。連携している他団体や行政の部署も書き込みます。

そのうえで、いくつもの問いかけが投げかけられました。
「2年後、団体の目的は理想に近づいているか。」「連携を強化したい団体はどこか。」「理事会の体制は変わるか。」「人事の業務を誰に担ってもらうか。」など。組織図を見ながら、団体運営の現在地と少し先の姿を立体的に考える時間でした。

質疑応答から

最後には、参加団体からの質問に答える時間も設けられました。

たとえば、「人材組織開発の担当者として適任者が団体内にいない場合、外部に委託するのは現実的か」という質問。川北さんの答えは、人に関する仕事は外注をお勧めしないというものでした。ボランティアに信頼してもらえるかどうかが核心だから、「あの人なら腹を割って話せる」と思える方が望ましい。たとえば過去の副代表のような立場の方に担ってもらうのがいい、と。

予算的に高単価の人材を採用するのが難しい団体にとっても、示唆は明快でした。人材開発担当は一人で担う必要はなく、複数人で分散すればいい。常に現場に張り付く必要もない。組織全体を見渡しながら「人とのやりとりを継続して、安心して任せられる人」がいるかどうか。それが本質だと教えてくださいました。

おわりに

ボランティア・マネジメントは、答えが一つに定まらない難しい領域です。だからこそ今回、長年NPOの組織づくりを支えてこられた川北さんから直接お話を伺えたことは、認定団体の皆さんにとっても、アニドネにとっても、大きな学びとなりました。

アニマル・ドネーションは、これからも認定団体の皆さんと共に学び続け、それぞれの現場に還元することで、日本の動物福祉向上に役立てていきます。

講師・参考書籍のご紹介

今回紹介された書籍

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