アニドネセミナー

京都女子大学にてアニドネが講義「日本で起きている 動物(犬猫)問題について」

 

京都女子大学にて、学生の皆さまを対象に「日本で起きている動物(犬猫)問題について」 をテーマに講義を行いました。
本講義は、公益社団法人アニマル・ドネーションが作成した資料を元とし、日本で現在起きている犬猫の課題と、動物福祉の基本的な考え方についてお話ししました。当日は、動物行政・民間保護団体・社会課題がどのように結びついているのか、事例を交えながら理解を深めていただくことを目的として進めました。

 

◆日時:2025年9月23日 火曜日
場所:京都女子大学(オンライン開催)
*奈良県西照寺の住職であり同大学にて教鞭をとる竹本了悟氏の講義内にて開催
対象者:大学生
人数:170名
テーマ:「日本で起きている動物(犬猫)問題について」
講師:西平衣里(アニマル・ドネーション 代表理事)

 

 日本で起きている犬猫問題の背景

 

 

日本で起きている犬猫の問題は、単一の原因ではなく、いくつもの課題が折り重なって生じています。
高齢化による飼育の限界、経済的困難、社会的孤立、飼育知識の不足、流通・ブリーディングの問題、
そして行政機関と民間の連携の難しさ——。こうした複合的な背景が、私たちの現場で目にする困難につながっています。

講義の中で、アニマル・ドネーションが支援してきた現場から3つの事例を取り上げ、課題の具体像をお伝えしました。
1点目は社会化されないまま牛舎で暮らしていた70匹の犬たちが、根気強いケアによってようやく人に心を開き始めたケースです。
2点目は高齢の飼い主が入院せざるを得なくなり、愛情深く育てられた犬が不安の中で保護されざるを得なかったケースです。
そして3点目は、多頭飼育崩壊により多数の猫が放置され、命の危険にさらされた後、保護・譲渡に至ったケースです。

これらの事例に共通しているのは、「誰か一人の責任」に矮小化できる問題ではないということです。
むしろ、人の弱さや孤独、支援が届きにくい社会構造がその背景にあり、
私たち自身のすぐ隣でも起こり得る課題であることを浮かび上がらせています。

学生の皆さんが“問題を知る目”だけでなく、「どうすれば地域で同じことを防げるだろう」という視点を持てるよう、
問いかけと対話を重ねながら進めました。

 

動物が豊かに生きる権利

 

 

動物福祉とは、「動物が精神的・肉体的に健康で、幸福であり、環境と調和して生きられること」と定義されています。
これは単に“虐待されないこと”にとどまりません。
動物が恐怖から解放され、自分らしい行動をとり、安心できる場所で暮らすという、
より広く深い「生活の質(QOL)」を含む概念です。

国際的に広く受け入れられている 「5つの自由」──

飢え・不安・苦痛からの自由、健康の確保、正常な行動の保障──を紹介し、
動物を扱う際の“世界のスタンダード”について考えました。
また、イギリス・フランス・ポーランドなどでは動物の感情を前提とした法整備が進み、
購入者への証明書義務化や、劣悪環境の禁止など、社会全体で動物の立場を守る仕組みが作られています。

一方日本では法制度や行政体制、そして社会全体の理解がまだ十分とは言えません。
しかしこれは、“遅れている”という否定ではなく、これからどのように優しく変われるのか を一緒に考える出発点です。

学生の皆さんには、動物と暮らすことの意味や、人と動物が共に豊かに生きる未来像について、
自分自身の経験や感情と重ねながら捉えていただけたと思います。

ともに未来を考える仲間として

今回の講義は、京都女子大学で教鞭をとっておられ、
また僧侶でもある竹本了悟さんのご提案により実現をいたしました。

竹本了悟さんはTERAエナジーの経営者でもあります。
J-WAVE に出演された際のお話「社会の弱い立場にある存在にこそ光を当てたい」という想いは、
動物福祉へ向けた私たちの活動にも深く通じるものがあります。

終わりに

今回の講義を通してお伝えしたかったのは、犬や猫の問題は“特別な場所”で起きているのではなく、
私たちの暮らしのすぐそばにある身近な現実 だということです。

動物と暮らしてきた人の中には、深い喪失を経験した方、
家族のように寄り添ってくれた子を胸に抱き続けている方もいます。
その思いがあるからこそ、動物を「守られるべき存在」として扱う社会づくりに力を貸してくれる人が、一歩ずつ増えていくのだと感じています。

学生の皆さんも、今回の時間の中で「動物にとっての幸せとは何か」「自分にできる小さな行動は何か」という問いを、
それぞれの視点で考えてくれていました。
動物福祉は、法律や制度だけでは成立しません。
人の心と、動物の命が結びついたところから始まるもの です。
今日知ってくださったことは、必ずどこかで、誰かの命を守る優しい力に変わっていきます。

これから先、皆さんが動物と関わるあらゆる場面で、今回の学びがそっと背中を押す灯りになれば嬉しく思います。
そして、犬や猫が「日本に生まれてよかった」と感じられる未来を、一緒に育てていけたらと願っています。

セミナー後に実施したアンケートでは、学生たちがどのように動物福祉を受け止めたのかが具体的に見えてきました。回答内容や学びの変化についてはこちらの記事からご覧いただけます。

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アニドネでは、動物たちの環境をよくするためにセミナーや勉強会も積極的に実施しております。
数名の少人数からでも掲載可能です。開催方法もリアルはもちろんオンラインでの対応も可能です。

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