第二の犬生を生きる

To:ジェード

From:永田菊寿

早期退社の年、東北で震災が発生しました。東北にボランティアに出かけます。5月の震災地はまだ悲惨な状態です。ボラセンターに帰ってくると一台のワゴンが停まっており、その近くにワンコがいます。山梨からのボラさんの保護した犬です。ボラの一日の作業の疲れを癒してくれます。こんな犬を飼いたいと思った時です。 退職の日が来ました。実弟から「盲導犬になれなかった子をもらえるボラが有る」との話。 早速CC犬ボラの申請に行きます。その後2が月で紹介が来ました。  富士ハーネスに着き面会の部屋で待機します。しばらくすると後向かいのドアが開き、黒い犬と職員さんがいます。誘導する職員さんのリード引っ張り、走ってこようとする子がジェードでした。私に「遊んで!」と喜んでいます。やんちゃに瞬間で虜になりました。譲渡書の資料にジェードが盲導犬に慣れなかった理由が書かれています。「動物に興味が強く、だめとわかっていても我慢できない」子だったのです。ジェードのキャリヤチェンジが始まります。  ジェードを迎えるにあたり庭にフェンスを設置しました。しかしこの子には必要なかったのです。庭から道に出る事もありません。散歩では人の指示を確かめる性格です。 その後パピーウォーカーさんから手紙が届きます。ジェードを嫁に出す父母の思いの文章です。我が子のごとく育てた事が伝わってきました。ジェードはお世話になった皆様に恩返しの約束が残っていると感じました。 その数か月後、小学校の支援員から「児童の見守りを始動しますので隊長になって」との依頼。「ジェードと一緒なら良いです」と言ってみました。それが許可されます。 そしてジェードと毎週月曜朝の登校の正門で「声かけ挨拶」見守りが始まります。 雨の日も、暑い夏も続け、子供たちの心に元気を届けます。 活動が5年も過ぎたころ、活躍を知った市から「ジェードを交通安全大会で表彰します」と連絡を頂き、12月住民安全大会で「交通安全功労賞」をジェードは授与されます。 新聞2紙、TV3局から取材が入り話題となりました。 ジェードは盲導犬となる事を期待されて生まれ育ちました。盲導犬として活躍している仲間もいますが、盲導犬落第でも社会に貢献する事で育てて頂いた方たちへ恩返をしました。 6年過ぎた3月、6年間見守り続けた卒業生の卒業式に招待されます。今9歳のジェードは7年目の活動を続けます。