飼い主のいない犬猫の現状に寄り添い、家族に迎えませんか
2024.05.17
日本における飼い主のいない犬猫の現状
飼い主がいないと聞くと、どのような犬猫を想像するでしょうか。日本、世界では様々な理由で飼い主がいない犬や猫が存在しています。AWGsでは、飼い主のぬくもりを知らない犬猫が幸せになる方法や、一匹でも飼い主のいない犬猫を減らすにはどうしたらいいかを考え続けます。
この度、世界でペットケア事業を展開するマース(本社 マース インコーポレイテッド、日本の拠点 マース ジャパン リミテッド)が20カ国を横断的に調査し、その分析結果が公表されたので、その結果も踏まえて考察します。1)
日本において犬猫の数は総計1833万匹、そのうち、飼い主のいない犬猫は228万匹(12%)と推定されているそうです。最も問題になるのは、野良犬・野良猫の存在です。避妊去勢をしないままでは野良犬、野良猫はどんどん増えてしまいます。その野良犬・野良猫を見つけては保護しても対処療法でしかなく根本解決にはなりません。
犬と猫では状況が違うので、それぞれ具体的に確認します。
- 犬の場合
日本にいる犬の総数は、716万匹。
そのうち、飼い主がいない犬は、5万2500匹。
約1%の犬が飼い主がいないということになります。
内訳は、2万7600匹が保護されている犬、2万4900匹が野良犬とのことです。
※野良犬と野犬の定義については諸説あるため、この記事では野良犬と表記。猫も同様。
- 猫の場合
日本にいる猫の総数は、1117万匹。
そのうち、飼い主がいない猫は、222万匹。
約20%の猫が飼い主がいないということになります。
内訳は、4万4800匹が保護されている猫、218万匹が野良猫とのことです。
※調査では、地域猫のように、地域住民から餌をもらっている猫は野良猫ではなく、飼い主がいるとカウントされているそうです。
海外と比較して考える日本の位置付け
一方、海外と比較して見ると、調査を実施した20カ国の飼い主のいない犬猫の割合は平均35%です。
日本の12%は一見すると状況が良いようにも感じられますが、その割合が非常に低いのは、オーストラリア(3%)、英国・リトアニア・フランス(5%)、ポーランド(8%)と、やはり動物福祉が進んでいるとされている国が並んでいます。
文化・習慣の違いから、一概に割合だけで良し悪しを決められるものではないですが国の政策や方針、人々の動物福祉への理解によって、飼い主のいない犬猫の割合を下げていけるものであると感じられます。
保護されている犬猫の状況
日本の状況に再び目を向けてみます。上で具体的数値に触れた保護されている犬猫について、環境省が動物愛護管理行政事務提要を毎年公表しています。
そのうちの「犬・猫の引取り及び処分の状況(都道府県・指定都市・中核市)(令和5年度版)」には、各都道府県や都市でどのような状況の犬猫が保護されているかの実数が記載されていて、現在の保護の状況がわかります。
ここでは、「飼い主から」か「所有者不明」か、また、「成熟個体」か「幼齢個体」かに分けて数値が記載されています。悲しいことですが、飼い主から動物愛護センターへ、少なからず持ち込みがあることも見て取れます。
また、所有者不明と定義されている犬や猫も、元々は人間に飼われていた可能性があったり、捨てられてしまった犬猫が繁殖して野良犬・野良猫となってしまったりするため、人間が関係ないとは言い切れないところです。
飼い主のいない犬猫を少しでも減らすために
一朝一夕には解決しない問題ですが、飼い主の意識を正しいものにすれば、変えていける状況であると捉えています。具体的には、日本の飼い主がいない犬猫(12%)の割合を下げるためにどのような手段があるでしょうか。
犬猫を迎える時に気をつける
そもそも、犬や猫を飼う前に立ち止まって考えることが必要です。
- 手放す可能性がある場合ペットを飼わない
→一度ペットを飼ったら終生飼育する覚悟と知識を持ちましょう。犬も猫も体調を崩すこともありますし、家族にアレルギーの問題が出るかもしれません。また、思ったよりも吠えるなど、想定外のトラブルになることもあるかもしれません。トラブルに直面した時に安易に手放すのではなく、しっかりと家族として飼育するという覚悟を。
- マイクロチップの義務化を遵守する
→迷子になったり、リードが外れて逃げてしまうこともあるかもしれません。マイクロチップは令和4年6月からブリーダーやペットショップでは義務化されています。飼い主になる場合の情報登録も義務なので、しっかり遵守を。
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/pickup/chip.html
- できるだけ室内で飼う
→犬猫との絆を育む意味合いもありますし、外飼いは犬の視点から見ると虐待にもなりかねません。家族として迎える犬猫に愛情と健康を。詳しくはAWGsテーマの「犬の外飼いを取り巻く現状・法改正の提案」をご覧ください。
保護犬猫をお迎えする
犬猫を飼う場合は、保護されている犬猫から家族を迎えることを選択肢としてみませんか。マースの調査によると、犬を飼う場合の選択肢として保護施設は17%、猫を飼う場合の選択肢として保護施設は26%の人が検討をしているということです。
- 行政(動物愛護センター)からお迎えする
日本には100ヶ所以上の「動物愛護センター」や「保健所」と呼ばれる施設があり、都道府県や中核指定都市で運営されています。犬猫を飼おうと思ったら、まずは最初の選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。全国の動物愛護センターは「AWGs動物愛護センター・保健所 一覧」から探していただけます。
- 保護団体からお迎えする
日本各地にはたくさんの保護団体があります。動物愛護センターから引き取って譲渡の橋渡しをしている団体や、猫に特化した団体など、特色のある活動をしている団体も多いので、団体の譲渡会などに足を運んでみるのも一つの選択肢に。
犬猫と暮らすと幸せになれるのは本当?
ここまで飼い主のいない犬猫の現状や保護されている犬猫をお迎えする方法をお伝えしてきましたが、その根底にあるものは、「犬猫の住む世界を変えたい」というAWGsに込めた願いです。
今回の調査によると、日本では近い将来犬を飼おうと思っている人は14%、猫を飼おうと思っている人は13%という結果2)でした。この割合は、20カ国の平均(犬30%、猫37%)と比べて非常に低く、今のままでは飼い主のいない全ての犬猫を家庭に迎え入れることはできない数値と想定されています。
一般社団法人 ペットフード協会の調査によると、日本の犬の世帯飼育率は 9.69%、猫は8.63%ということです。その意欲も低下傾向にあり、日本では犬猫と暮らすことがマイノリティとなってしまっています。3)
さらに、現代の日本では、犬や猫を飼っていない限り、動物と触れ合う機会が少なくなってきています。動物と触れ合う機会が少ないと、犬猫を飼おうという気持ちに至らないという、悪循環に陥っているとも捉えられます。だからこそ、日本にはまだまだ潜在的に犬猫と暮らしたい人・暮らせる人がいるのではないかとも言い換えられます。ぜひ犬猫を迎え、伴侶として暮らすことでメリットを享受していただきたいです。
科学的にも証明されているメリットについては、AWGsのゴールのひとつ「秘めた能力を解放させよう」で詳しくご覧ください。簡単に挙げると以下のようなメリットがあります。
・犬と人が見つめ合うとオキシトシンという癒しのホルモンがお互いから分泌されることが証明されてる。
・犬と触れ合うことで血圧や心拍数が安定することがわかっている。
・犬と暮らす子供はアレルギーの発症が優位に低く、免疫機能が向上することで学校の欠席日数が減少する
・高齢者の場合は通院回数や薬の使用頻度が減少、寝たきりになったケースが改善した例も報告あり
その他、言語化できなくても犬や猫がそこにいることで、幸せを感じている飼い主は多いのではないでしょうか。犬猫は飼い主が見つかって幸せ、人間は本当に癒される存在が側にいてくれる幸せを共に感じる世界を作っていくことがAWGsの想いです。
まとめ
日本には228万頭というまだまだたくさんの飼い主のいない犬猫がいます。その犬猫がもし人間と暮らしたら、今よりも安全で愛の溢れる生活を手に入れられるのではないでしょうか。
一方で、人間も犬や猫と暮らすと、癒しや喜びを手に入れられるという側面もあります。犬猫を飼う時には、少し立ち止まってどこから迎えるのかを考えていただくきっかけになれば幸いです。
参考データ
犬の場合
どこで犬を入手しましたか?
1. ペットショップ:43%
2. ブリーダー:19 %
3.友人/親戚:16 %
4. 保護施設/シェルター:7 %
5. 個人:6 %
飼い主のいない犬を減らすには、どのような対策が最も効果的だと思いますか?
1. 去勢・不妊手術:32 %
2. ペットの譲渡方法の認知向上プログラムの推進:27%
3. 人々と保護施設をつなぐプログラムのサポート:25%
4. マイクロチップ装着:25%
5. 補助金付き獣医療サービスの提供:24%
近い将来犬を飼おうと思っていますか? 14%
犬を飼うことを検討している場合保護施設/シェルターから迎える予定はありますか? 17%
犬を飼えない理由は?
1. 高額すぎる:40%
2. 大きなコミットメントが必要:31%
3.近隣とのトラブルが懸念:26%
4. 仕事をしているとき、家に世話をする人がいない:23%
5. 許されていない:22%
猫の場合
どこで猫を入手しましたか?(トップ5)
1. 野良猫/見つけた:29%
2. 友人/親戚:24 %
3. ペットショップ16%
4. 保護施設/シェルター:9 %
5. ブリーダー:7 %
飼い主のいない猫を減らすには、どのような対策が最も効果的だと思いますか?
1. 去勢・不妊手術:34 %
2. 補助金付き獣医療サービスの提供 : 33%
3. 人々と保護施設をつなぐプログラムのサポート:31%
4. ペットの譲渡方法の認知向上プログラムの推進:29%
5. マイクロチップの装着:27%
近い将来猫を飼おうと思っていますか? 13%
猫を飼うことを検討している場合保護施設/シェルターから迎える予定はありますか? 26%
猫を飼えない理由は?
1.高額すぎる:31 %
2. 大きなコミットメントが必要: 26 %
3.家具を傷つける:25 %
4. 許されていない:22%
5.(同率5位)衛生的でない/アレルギーの家族がいる:20%
参考文献>
1)マースジャパン リミテッド 2024年2月 日本におけるペット(犬・猫)に関する調査データ
2)カンター社 2022年 「ペットオーナーと非ペットオーナーの一般サンプル調査」(オンラインとフィールド調査)
3)一般社団法人 ペットフード協会 2022年(令和4年)全国犬猫飼育実態調査
このテーマのゴール
ゴール 5
すべての犬猫へ人のぬくもりを
あたたかな家庭で人のぬくもりを感じられない犬猫がいます。そもそも飼い主がいない犬猫や繁殖活動を引退した犬猫などです。家族がいない犬猫や繁殖活動の引退後の犬猫が、家庭のぬくもりに満ちた余生を送れるよう認知を高める活動を行います。