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活動レポート

「シニア for シニア」という社会処方ー人間医学の知見から

2026.04.21

目次

日本では長く、「高齢者はペットを飼うべきではない」という考え方が広く共有されてきました。高齢になると体力が低下し、万が一の際にペットの世話ができなくなる可能性があることなどが、その理由として挙げられています。

しかし一方で、日本は世界でも例を見ない超高齢社会に入っています。高齢期をいかに健康で自立した状態で過ごすかは、個人の問題にとどまらず、社会全体にとって重要な課題となっています。

こうした中で注目されているのが、人と動物がともに暮らすことが健康に与える影響です。

ペットと暮らすことが高齢期の健康にどのような影響を与えるのかについて研究を進めてきたのが、国立環境研究所 主任研究員で医学博士の谷口優先生です。谷口先生らの研究では、人と動物の共生が高齢者の健康や生活の質にさまざまな影響を与える可能性が示されています。

ここでは、その研究結果を紹介しながら、人と動物がともに生きることの社会的な価値について考えていきます。

医学研究が示す、人と動物がともに生きる健康効果

犬の飼育と身体的健康

犬と暮らすことは、高齢者の健康にさまざまな良い影響をもたらす可能性が示されています。谷口優先生の研究では、犬と暮らしている高齢者は、そうでない人と比べて死亡リスクが約23%低いことが報告されています。

伴侶動物が健康に及ぼす効果

犬と生活している高齢者は、死亡リスクが23%低い

また、フレイル(虚弱)の発症リスクが約19%低いという結果も示されています。フレイルとは、加齢に伴って心身の活力が低下している状態を指し、高齢期の健康づくりにおいて重要な課題とされています。(2

 

伴侶動物が健康に及ぼす効果

犬と生活している高齢者は、フレイル発生リスクが19%低い

  

さらに、犬と暮らす高齢者では、将来的に要介護または死亡するリスクが約46%低いという研究結果も報告されています。(3

自立喪失(要介護or 死亡)発生リスク     

認知症との関連についても研究が進んでおり、犬を飼育している高齢者では認知症の発症リスクが40%低いという結果が報告されています。(4

伴侶動物が健康に及ぼす効果

犬と生活している高齢者は、要介護認知症発生リスクが40%低い

なぜ犬との暮らしが健康に影響するのでしょうか。研究では、犬との暮らしに、いくつかの明確な差異が見られました。まず、歩く量が増えることです。犬の散歩によって、自然に日常の運動量が増えます。さらに、社会との交流も増えることが確認されています。散歩の途中での立ち話、犬友との情報交換、近所の人とのあいさつ。こうした小さな交流が積み重なることで、社会的孤立を防ぎ、認知症などのリスクを下げる要因になると考えられています。

猫の飼育と心理的健康

猫との暮らしについては、主に心理面への影響が報告されています。

国外の研究では、パートナーや猫との暮らしの有無別に気分の状態を比較しました。その結果、もっとも気分の落ち込みが大きかったのは、パートナーも猫もいない人でした。

一方で、もっとも気分の状態が良かったのは、パートナーはおらず猫と暮らしている人という結果が示されています。この研究から、猫の存在は心理的な安定に寄与し、とくに一人暮らしの人において心の健康を支える効果が大きい可能性が示唆されています。

犬のように散歩などの身体活動を伴う動物とは異なり、猫は主に心理的な支えとしての役割を果たすと考えられています。孤独感の軽減や気持ちの安定など、猫との暮らしが高齢期のメンタルヘルスを支える可能性が指摘されています。(5

猫と暮らすことによる効果

ペットと暮らすことの社会的価値

これらの研究結果が示しているのは、動物と暮らすことが単なる「癒やし」にとどまらないということです。

動物との暮らしは、身体活動の機会を生み、生活のリズムを整え、人との交流を生み出します。また、動物の世話をすることは、日々の生活に役割や責任をもたらし、心理的な安定にもつながります。

こうした要素が組み合わさることで、動物との共生は高齢者の健康や生活の質を支える可能性を持っています。つまり、人と動物の関係は個人の幸福だけでなく、社会全体の健康にも寄与する価値を持つものと言えるでしょう。

しかし現実には、「高齢者はペットを飼うべきではない」という社会通念が根強く存在しています。その結果、本来得られる可能性のある健康効果や社会的価値が、十分に活かされていないとも言えます。これから必要なのは、高齢者が安心して動物と暮らすことができる社会の仕組みづくりです。

「シニア for シニア」という社会設計

「シニア for シニア」は、高齢者がシニア犬猫を迎える仕組みです。万が一の際の引き取り体制などを整え、高齢者でも安心して動物と暮らせる環境をつくる取り組みです。これは単なる譲渡の仕組みではなく、人の健康と動物福祉の双方に配慮した社会的なデザインとも言えるでしょう。

高齢者の健康と生活の質を支えると同時に、保護動物に新たな家庭をもたらす。

「シニア for シニア」は、人と動物がともに生きる社会を実現するための新しい社会の仕組みとして、その可能性を広げていく取り組みです。

次回は、この「シニア for シニア」という仕組みが動物福祉の観点からどのような意義を持つのかについて、動物行動学の視点から見ていきます。


出典

(1 Yu Taniguchi,et al. Dog,Cat,Bird,Fish,and Other Pet Ownership and Mortality:Evidence from the HILDA Cohort. PLos One 2024

(2 Yu Taniguchi,et al. Association of Dog and Cat Ownership with Incident Frailty among Community-Dwelling Elderly Japanese. Scientific Reports 2019

(3 Taniguchi, et al. PLOS ONE 2022

(4 Yu Taniguchi,et al. Protective effects of dog ownership against of disabling dementia in older community-dwelling Japanese : A longitudinal study. Prev Med Rep 2023

(5 Turner DC. et al. Spouses and cats and their effects on human mood. A Multidisciplinary Journal of The Interactions of People & Animals 2003

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